何をよんだか記録するようになったら少しはペースが以前に戻るだろうかという目論見もありました。
8月に読んだものを整理すると、
早速効果があったのか、そこそこ読んでいたようです。
7作品読んでいました。
上下巻のものが2作ありますから、9冊読んだことになりますね。
ちょっと未読本が減りました。
やはりどんなことでも客観的な視点を持つことって大切ですね(^-^ )
8月に読んだものの中で一番圧巻だったのはこれでしょうか。
タイトルは「チャイルド44」。
一応ジャンルはミステリーですね。
内容は子供ばかり何十人も殺した犯人を追跡するというものです。
珍しいのはその舞台。
作者はイギリス人ですが、スターリン体制下のソヴィエト連邦の話なんです。
旧ソ連にはアンドレイ・チカチーロという実在の女子供を殺した犯罪者がいます。
15年ほど前にこの殺人者について書かれた「子供たちは森に消えた」というドキュメンタリーを読みましたが、「チャイルド44」は明らかにこの事件をベースにしているようです。
私が何に衝撃を受けたかというと、それはとにかく全体に表現されているスターリン体制下のソ連全体の空気の重さにです。
主人公は国家保安省(後のKGB)の捜査官なのですが、共産主義体制を維持するためにそれに対する不穏分子を排除することがその主な仕事になっています。
その方法がとにかく恐ろしい。
たとえばとある獣医がアメリカ大使館の人間の飼い犬の治療をしたとします(全くもって単なる仕事で)。
それを見た誰かが「彼はアメリカ人と接触した」と噂をします。
それが国家保安省の耳に入り聞き込みに来ます。
その時点で噂をした人は「彼は怪しくない」と言うか「彼は西側のスパイかもしれない」と言うかの決断を迫られます。
前者を選ぶと「こいつはスパイをかばった」ということになり、後者だと不穏分子を国家に通報した功労者になります。
つまり噂が国家保安省の耳に入った時点で獣医は不穏分子決定で噂をした人は密告者になるしか生き延びる選択はなくなります。
いったん逮捕されたら何が何でも「自白」させられ、その後はあっさり処刑されます。
ちなみに件の獣医は雰囲気を察して逃亡しますが捕まりますし、その途中で小屋を使った家の家族は幼い姉妹とその両親なのですが、追跡してきた国家保安省の人間に両親は捜査官の独断で家の庭先であっさり銃殺され、幼い姉妹も主人公に救われますが銃殺される一歩手前でした。
物語の犯人は44人の子供を殺していますが、「理想的な共産社会には資本主義世界の歪みの現れである犯罪者はいない。犯罪を犯すものは正常ではない、つまり共産社会のメンバーではない」という考え方で、浮浪者や精神遅滞の障害者など「共産主義社会の落伍者」で「適当な」犯人が見つけられ、一応それぞれで解決されてしまっているため、連続殺人自体が見逃されてしまっています。
現実にチカチーロの事件でもこれに近い状態だったようです。
自由と身勝手をはき違え、義務を果たさず権利ばかり主張する人間の問題がクローズアップされる世の中ですが、そういう人間でも普通に存在が許される状況というのはある意味世界の長い歴史の中でようやく達成された、極めて珍しい状況なのかもしれません。
一度しかない人生。
この時代の日本に生きているというのは、実はとても幸せなことかもしれないと思わされました。