2018年11月29日、韓国最高裁が、戦時中の元徴用工5人・元女子勤労挺身隊員5人が三菱重工業に求めた損害賠償請求に、一人当たり800万~1500万円の賠償を命じた。10月30日に新日鐵住金の元徴用工の判決に続くもので、今後も同様の判決が出るのは確実だ。判決は、戦時中の動員は日本政府の不法な植民地支配や侵略戦争と結びついた日本企業の反人道的な不法行為だと認定した。原告の日本企業に対する慰謝料請求権は1965年の日韓請求権協定には含まれない、賠償を求める権利は消滅していないとした。
請求権をめぐっては、日韓両政府も、両最高裁も個人の請求権は消滅していないという点では一致している。しかし、10月30日も今回も、日本政府はあまりに過剰、いや異常な反応をしている。10月、安倍首相は「判決は国際法に照らして、あり得ない判断だ」(安倍氏の言う国際法は日韓請求権協定のこと)、個人賠償請求権は日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」、河野外相は「法の支配が貫徹されている国際社会の中では、およそ常識では考えられない判決」「暴挙だ」といった。今回、菅官房長官、河野外相は「きわめて遺憾で断じて受け入れることはできない」「国際裁判や対抗措置を含め、あらゆる選択肢を視野に毅然とした対応を講じる」と同じ声明を発した。日本政府が人道主義とは無縁の異常な反応をし、マスメディアがそれをオウム返しに、個人の請求権も1965年に消滅したかのような言説を垂れ流したことが、異常な世論状況を生んでいる。
政党では日本共産党(11月1日)が、法律家では弁護士有志(11月5日)が、詳細な見解表明で個人の請求権は消滅していないことを明らかにした。弁護士有志は、「(安倍首相は)日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決したと述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したというのであれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている」「全ての請求権が消滅したかのように『完全かつ最終的に解決』とのみ説明するのはミスリーディング(誤導的)である」と批判した。
11月14日、衆院外務委員会で日本共産党の穀田恵二議員が、1991年8月27日の参院予算委員会で柳井俊二条約局長が請求権協定第2条は「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」と答弁したことを、「これは間違いないか」と河野太郎外相に迫った。居丈高な発言を繰り返してきた河野外相は、しぶしぶ「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」と認めた。さらに穀田氏は、1992年3月9日の衆院予算委員会で柳井条約局長が「一定のものを消滅させる措置を取ったわけでございますが、そのようなものの中にいわゆる慰謝料請求権というものが入っていたとは記憶しておりません」と答弁していたことを示して個人の慰謝料請求権は請求権協定の対象に含まれていないことは明らかではないかと追及したのに対し、三上国際法局長は「柳井局長の答弁を否定するつもりはまったくない」「権利自体は消滅していない」と認めた。
問題ははっきりした。安倍・河野・菅氏らの居丈高な言説は誤りだということだ。ただ残念なことに、この穀田議員の追及と答弁は、徴用工、勤労挺身隊裁判の核心をなす部分であるのに、一流新聞もテレビも、1行も1秒も報じなかった。ここまで無視して政府のミスリーディングのお先棒を担ぐこともあるまい。堕落もここまで来たかという思いだ。
安倍・河野・菅氏らは、国際司法裁判所に訴えるといきまいている。堂々と訴えればいい。国際的に白黒をつければいい。だが、安倍首相が国際法といったのは日韓請求権協定であり、それだけでも上に見たように破たんしている。さらにサンフランシスコ講和条約にかかわる諸問題で日本政府は日本人の個人の請求権は消滅していない、シベリア抑留の日本兵の個人請求権は消滅していない、被爆者のアメリカへの請求権は放棄していないとしている。国連の人権理解は日本政府とはレベルが違う。請求権問題だけでなく、請求の基礎にある植民地支配、侵略戦争の反省の有無も重要な問題だ。
請求権をめぐっては、日韓両政府も、両最高裁も個人の請求権は消滅していないという点では一致している。しかし、10月30日も今回も、日本政府はあまりに過剰、いや異常な反応をしている。10月、安倍首相は「判決は国際法に照らして、あり得ない判断だ」(安倍氏の言う国際法は日韓請求権協定のこと)、個人賠償請求権は日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」、河野外相は「法の支配が貫徹されている国際社会の中では、およそ常識では考えられない判決」「暴挙だ」といった。今回、菅官房長官、河野外相は「きわめて遺憾で断じて受け入れることはできない」「国際裁判や対抗措置を含め、あらゆる選択肢を視野に毅然とした対応を講じる」と同じ声明を発した。日本政府が人道主義とは無縁の異常な反応をし、マスメディアがそれをオウム返しに、個人の請求権も1965年に消滅したかのような言説を垂れ流したことが、異常な世論状況を生んでいる。
政党では日本共産党(11月1日)が、法律家では弁護士有志(11月5日)が、詳細な見解表明で個人の請求権は消滅していないことを明らかにした。弁護士有志は、「(安倍首相は)日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決したと述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したというのであれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている」「全ての請求権が消滅したかのように『完全かつ最終的に解決』とのみ説明するのはミスリーディング(誤導的)である」と批判した。
11月14日、衆院外務委員会で日本共産党の穀田恵二議員が、1991年8月27日の参院予算委員会で柳井俊二条約局長が請求権協定第2条は「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」と答弁したことを、「これは間違いないか」と河野太郎外相に迫った。居丈高な発言を繰り返してきた河野外相は、しぶしぶ「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」と認めた。さらに穀田氏は、1992年3月9日の衆院予算委員会で柳井条約局長が「一定のものを消滅させる措置を取ったわけでございますが、そのようなものの中にいわゆる慰謝料請求権というものが入っていたとは記憶しておりません」と答弁していたことを示して個人の慰謝料請求権は請求権協定の対象に含まれていないことは明らかではないかと追及したのに対し、三上国際法局長は「柳井局長の答弁を否定するつもりはまったくない」「権利自体は消滅していない」と認めた。
問題ははっきりした。安倍・河野・菅氏らの居丈高な言説は誤りだということだ。ただ残念なことに、この穀田議員の追及と答弁は、徴用工、勤労挺身隊裁判の核心をなす部分であるのに、一流新聞もテレビも、1行も1秒も報じなかった。ここまで無視して政府のミスリーディングのお先棒を担ぐこともあるまい。堕落もここまで来たかという思いだ。
安倍・河野・菅氏らは、国際司法裁判所に訴えるといきまいている。堂々と訴えればいい。国際的に白黒をつければいい。だが、安倍首相が国際法といったのは日韓請求権協定であり、それだけでも上に見たように破たんしている。さらにサンフランシスコ講和条約にかかわる諸問題で日本政府は日本人の個人の請求権は消滅していない、シベリア抑留の日本兵の個人請求権は消滅していない、被爆者のアメリカへの請求権は放棄していないとしている。国連の人権理解は日本政府とはレベルが違う。請求権問題だけでなく、請求の基礎にある植民地支配、侵略戦争の反省の有無も重要な問題だ。