2022年9月22日、日銀は金融政策決定会合で大規模な金融緩和の継続を決めた。黒田総裁は「当面、金利を引き上げることはない」と語り、「当面というのは数か月の話ではなく、2、3年の話」と断言した。これでは円売りドル買いが止まらない。安心して円売りをとすすめるようなものだ。片方で政府が「断固たる措置」だと為替介入に踏み切ったのと裏腹だ。24年ぶりの為替介入をせざるを得ないほどの為替の急変動が続いているのに黒田日銀の判断には納得できない。ここ半年の円安の急速な動きは、日本経済に大きな影響を与えている。黒田氏は「経済を支えて物価安定(2%の意味)の目標を実現することが必要」というが、この円安が経済を押し下げる役を果たしていることは明らかだ。トヨタなど一部輸出大企業には莫大な利益をもたらしているが、輸入原料、家畜飼料、食料品など大幅値上がりで中小零細や家庭生活には大打撃だ。食料品の値上げには金額にあまり変化がないが3分の2に小さくなった菓子パン、ちくわ、ごぼてんなどびっくりするばかりだ。8月の物価は総合で前年同月比+2・9%、食料+4・7%だ。何が物価安定だ。
日本は2016年1月に政策金利をそれまでの0%から-0・10%に引き下げてからずっとこれを踏襲している。先月まで-0・25%だったスイスもこの9月0・75%引き上げて0・5%にした。7月まで-0・1%だったデンマークも8月0%に9月0・65%にした。これで主だった国々でマイナス金利に固執している国は日本だけになった。これでは21日、政策金利を3~3・25%としたアメリカとの金利差はあまりに大きく、投機筋の円売りドル買い衝動を抑えることは困難だ。すでに政府の為替介入で145円水準を140円台前半に押さえた効果も薄れ今日は143円に戻った。政府の為替介入で管理は不可能で、日銀が2、3年は変えないといっているのだから、金儲けの資本主義では円売りが正しいということになるではないか。
食料自給率38%の日本では輸入食料が値上がりすることは国民生活に重大な影響を及ぼす。黒田氏はロシア起源の物価上昇は自分が狙ったものではなく、「いわゆる好循環、賃金が上がり、物価も安定的に上がっていくという形にはなっていない」といって金融緩和をあと2、3年続けるという。景気は回復せず、賃金も上がらず、だが物価だけはどんどん上がりそうというのは最悪のシナリオではないか。
自分の描いたシナリオがめぐってこないから同じことを続けるだけというのは、事態に対応する能力がないということを告白したようなものではないか。