山上俊夫・日本と世界あちこち

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「イスラム国」の人質殺害を糾弾するとともに、安倍首相の危険な「積極的?平和主義」を糺す

2015年02月03日 15時08分03秒 | Weblog
 1日(2015・2・1)早朝、後藤健二さん殺害映像を「イスラム国」はインターネットに流した。「イスラム国」はいかなる意味でもイスラムを名乗る資格のない犯罪集団だ。本当の意味で人道的な活動をしていた後藤さんの命を無残にもうばう行ないのどこがイスラムの教えにかなうのか。一片の道義もない。
 ひるがえって、わが安倍内閣の対応はどうだったか。菅官房長官も検証するといっているからきっちりやらなければならない。人権を標榜する「民主主義国家」だから。
 問題の出発点を1月20日に置くのは最大の間違いだ。出発点は、8月の湯川遥奈さん拘束からだ。少し短く見ても、10月末後藤健二さんが行方不明、拘束されてからだ。一連の流れの中で、日本政府の対応を検証しなければならない。


・11月から「イスラム国」関係者から後藤さんの妻に脅迫メールが届くようになった。拉致された段階で通信手段がうばわれ、妻のメールアドレスも把握された。
 ※ メールが届いたということは、「イスラム国」関係者のアドレスも日本側で把握できた。妻は外務省に連絡し、政府はすべてを掌握していた。政府高官(官房長官の非公式発言)は「イスラム国との連絡手段もなく、日本が主導的にできることは最初から限られていた」という平気で言う。
・12月2日に、妻に20億円ほどの身代金要求があった。
・湯川さん、後藤さんの拘束を受け、それぞれ直後に官邸に情報連絡室、外務省に対策室、ヨルダン・アンマンに現地対策本部を設置した。
 ※ ところがこれを公表したのは、1月27日。非公表とした理由は「発生したことを明らかにすれば被害者の身に危険が及ぶため」(官邸幹部・『朝日』2月2日付)という。
 ※ 非公表の理由はまず、総選挙対策。安倍自民の票を減らさないため。つぎは明らかにすれば、中東外遊中止の世論が起きると予測されたためだ。
 ※ もし、公表した程度で被害者の身に危険が及ぶと政府が考えたのなら、わざわざ中東外遊にでかけ、さらに挑発的発言をすればいっそう、確実に被害者の身に危険を及ぼすと考えるのが普通ではないか。
・外務省関係者から中東外遊を見直すよう進言があったが、官邸はこれをしりぞけた。
・外遊初日の17日、エジプト・カイロで演説。「IS「イスラム国」の脅威を食い止めるため」「イスラム国と戦う周辺国に2億ドルの支援を贈る」と宣言した。この演説には2億ドルは人道支援だという説明はなかった。
 ※ 人道支援として2億ドルといわず、あえてイスラム国と戦う国に2億ドル支援というのは、挑発以外の何物でもない。この言い方も外務省の原案に首相の意向でこのようにつくりかえられた。イスラム国とたたかう国に2億ドルというのは米英有志連合の一員として名乗りを上げたという風に中東の人々は受け取っただろう。これまでの日本の平和主義の国というイメージを決定的に傷つけた。
・21日夕、帰国した首相は、「宣伝戦」「情報戦」を展開するといって、日本の支援は難民・国内避難民への人道支援で非軍事だと、外務省ホームページに英語、アラビア語で発信し始めた。あきらかにカイロでの演説は誤っていたと認めたようなものだ。誤っていたという程度で済む問題ではない。重大な結果をまねいた。
・後藤さんの妻へ接触してきた「イスラム国」関係者のメールアドレスがわかっているにもかかわらず、政府はチャンネルがないと直接交渉することをいっさいしなかった。ヨルダン政府、宗教指導者、部族長に仲介者になってもらって情報収集と接触をこころみた。だが何の成果も挙げられなかった。
 ※ 直接接触、あるいは交渉する手段がありながら、なぜ、あえて、やろうとしなかったのか。完全に外交放棄だ。身代金交渉はしない方針だからというかもしれない。しかし自らは何の接触もしようとしないというのは、容認できない。あまりに米英有志連合と一体化した考えだからか。「イスラム国」が理性的に人道にもとづく話し合いができる連中だとは思えない。しかし、直接には何もしないまま、殺害にまで至ったのは納得できない。政府高官(官房長官)は「ひたすら待ちだ。あとはヨルダン政府にお任せする、それに尽きる」というのだ。たびたび関係閣僚会議を開いて、「緊張感を持って情報収集、分析をつよめる」「緊張感を持って対応していく」とのことばの強さだけが浮いて聞こえた。
・後藤さん殺害後の安倍首相の声明は、「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わさせるために、国際社会と連携してまいります」と強い調子
のものだった。これも安倍首相自身が原案をこのように作り替えたのだ。犯人たちを軍事力で抑えるぞというニュアンスをもっているが、のちの国会答弁では法の裁きをうけさせると説明したが、正常な国家が存在するもとで警察活動、法の裁きによることはありえず、現実は米英有志連合軍の空爆による殺害でしかない。空爆によって「イスラム国」の勢力は弱体化しているようだが、空爆によって無辜の人々も巻き添えになって殺されていることを明記しなければならない。
 安倍首相の「積極的平和主義」なるものが具体化されたのが一連の事態だ。とても容認できるものではない。






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