今年は、運転理論関係をより具体的に発信したいと言う風に思っているが、既に1/4年が経過、あまり何も進んでいない。
そこで、昨日は檀上さんとのオフ会でちょっとカツを入れられたので、少しずつ出来る範囲からやっていきたいと思う。
まず、電車が動き出してからの話。
電車の加速というのは、モーターからの力を動輪経由でレールに対する引張力という力で列車を引っ張ったらどうなるかというだけの話。
だから、仮に引張力が3000kgあって、列車重量が100tだったら、加速力は3000÷100で30kg/tとなる。単位を見てもらえば単純な割り算だって事も思い付くと思う。トンあたりどのくらいの力をかけれるかという事だ。
で、そのトンあたりの力ってのが鉄道では「加速力」という風に呼んでいる。
通常良く使う加速度とは単位が違って、加速力はkg/tで単に力の大きさを示してるだけだが、加速度はkm/h/sと、秒当たりどの程度速度を上げれるかという風になってくる。
で、加速力と加速度は互いに計算で求まり「加速度=加速力÷30.9」「加速力=加速度×30.9」となる。実は物理的な計算で行くと、30.9という部分は28.84なんだが、伝達時の損失がある分を考慮するとだいたい30~31になる。この数値は各鉄道会社によって違い、交友社の「電車運転理論」では30.84という計算値になっている。ここでは30.9という値にしているが、当然この数値が小さければ同じ加速力なのに出して来た加速度の値が違うと言う事になる。
要は、そんな厳密に加速度なんて出ないよって事。計算時でもバラツキがあるのに、その数値通りに列車がその加速度で動くかどうかなんて保証できない。公称2.0km/h/sの形式が実際に2.0km/h/s無いからと言うのはかまわないが、どういう部分を見て違ったのかを説明できなければ説得力は無い。
中には加速度ってのは、起動から60km/hでも80km/hでもずっと継続すると思ってる人もいる。このような運動は物理では等加速度運動と言う訳だが、動き始めたら空気の抵抗もかかるし、モーターの出力も落ちて行く。等加速度運動なんてちょっと考えたら無理とわかるのに、現役の運転士でもそのあたりの理解に欠ける方もいるようだ。
ただ、起動加速度と通常呼ぶ部分、列車が動き出してから一定の速度までは、限流値という電流を制御する数値によって、電流を一定に保つ工夫がなされており、電流一定だと引張力一定なので、起動時から「ある速度」までは等加速度運動を行っている。
この「ある速度」とは、抵抗制御車では抵抗が全て抜けきり、全ての電圧がモーターにかかった状態の速度までだ。この状態を「全界磁」と呼ぶ。
通常「定格速度」というのは、この「全界磁」になる速度と言う事ができるが、単に基準の問題で全界磁ではなく弱め界磁の状態での速度を定格点に置く場合もあるが、それは特殊な場合なので、基本は全界磁・定格電流での速度を定格速度と覚えとけば良い。
で、等加速度運動が出来るのは、全界磁までの速度だから、言い変えれば「定格速度までは等加速度運動が出来る」とも言える。もちろん弱め界磁に定格を置く101系や103系などでは正確な記述にならないのだが、基本はこういう事だ。
103系の定格速度は85%弱め界磁上で36.5km/hとされてるが、全界磁では33km/h程度である。だから、103系が等加速度運動をするのは0km/h→33km/hまでで、同様に101系の定格速度は70%弱め界磁上で52km/hくらいだけど全界磁だと46.5km/hである。だから101系が等加速度運動をするのは0km/h→46.5km/hまでとなる。
この間は、所定の起動加速度を保った加速ができ、この速度を超えると、徐々に加速度は落ちていく。
そんなことだから、103系の起動加速度が2.0km/h/sだからと言って、0km/h→60km/hが30秒で運転できると考えるのは間違いで、33km/hより上では2.0km/h/sという加速度は得られないわけだから、当然0→60km/hの平均加速度は2.0km/h/s以下となる。よって30秒より長い時間がかかるわけだ。
こういう部分が見えてきたら、今までの趣味誌などでの性能解説で一部「おやっ」と思うところがあったりするわけだ。
それを気づかずに流用してしまうと、誤情報の拡散になってしまう。
東北地震でツイッターのリツィートの信憑性などについて問題点が発覚したが、その際に拡散してしまうと収拾が付かないという事を皆が感じたと思う。
結局、趣味誌の性能なども、きちんと理論上に立って検証していなかったがために、誤情報として拡散された記事がどれだけあるか。
ツイッターでもリツィートした側も問題があるが、正しい情報かどうか見極める目も必要だと言う意見もあったが、趣味誌の記事もまさにそう。それぞれの読者が信憑性に対して見極める目を養う事が誤情報を拡散ささない方法だと感じている。
だから、こういう運転理論についての話をくどくどと。。。。
参考までに103系の力行ノッチ曲線を上げておく。103系が使っているMT55とう主電動機の定格電流は330Aなので全界磁の速度や定格速度は330Aの状態で何km/hかを見る事になる。
103系力行ノッチ曲線
ということで、本題の電車が1秒後に移動する距離。
距離は速度×時間なわけだから、距離は速度÷時間だ。だから時速36kmだと秒速10mだから1秒後には10m先に進んでいる。
単にそれだけの事だが、起動時は0km/hから速度が上がっていく。引張力によって加速させられるわけだ。だから、今時速36kmだったものが1秒後には37kmになっているかもしれない。
そうなると1秒後から2秒後までに移動する距離は10mではない。
10.28mと先ほどより28cm進むことになる。
電車が起動時から加速していって、それに応じてどの程度距離を走ったかというのは、細かく考えていけば四則演算で事足りる。だから、エクセルなどが一般的にみんな使うようなご時世だから、こういう細かい繰り返し計算も、実は比較的簡単にできたりする。
では、ちょっと実例を。
103系冷房車4M2Tが空車状態で運転した場合。。。。103系冷房車はクハ103が30.6t・モハ103が39.7t・モハ102が40.2tで計算してみる。編成だと221tだ。
空車状態だから乗客の重量を加味しなくて良いので列車としての重量は221tで計算する。
次に、103系は応荷重装置がついているが、空車時の限流値は冷房車の場合300Aだ。一時間定格電流以下で起動するような設定値になっている。
この情報がわかれば、上の力行ノッチ曲線から、引張力がいくらかを見てみる。
抵抗制御車の場合、起動加速時の平均電流は限流値に20A程度多く流れた値になるから、上の力行ノッチ曲線から320Aでの引張力を求めてみる。
右斜め上方向に伸びる線が引張力の線だ。これと320Aの交点を見れば9100kg程度だろうか?
この値はMM'ユニットでの値なので、4M2Tの場合2ユニットあるから、編成ではこの数字の倍である18200kgが引張力ということになる。
加速力の計算は、一番最初に言ったように引張力÷列車重量だから18200÷221=82.353kg/tが103系冷房車4M2Tが空車状態で起動する際の加速力である。
これを見慣れた加速度に直すには、30.9で割れば良いのだから82.353÷30.9=2.67km/h/sという加速度になる。
1秒後には時速0kmだったものが時速2.67kmになっているという意味だ。
さて、ここで本題の1秒後に移動する距離だが、ほんらいはイロイロと抵抗などの計算もするんだが、ここではシンプルにこれだけの情報から計算してみる。
等加速度運動時の距離の計算は、速度を1/2にして時間を掛ければ良い。つまり、1秒後に時速2.67kmになってるなら1秒間で進んだ距離は時速1.33kmで1秒間走る距離と同じという事だ。
ってことは、1秒目に走る距離は37センチって事になる。
じゃぁ、次の2秒目は・・・・
1秒で時速2.67kmになったが、等加速度運動中だから2秒目も同じ数字だけ増え時速5.34kmになっている。
ここまで進んだ距離は2.67km/hで2秒走ったのと同じだから1m48cm(1480mm)になる。1秒目で37cm(370mm)だったから1秒から2秒の間で新たに1m11cm(1110mm)進んだ事になる。
で、103系の等加速度運動は全界磁の段階で終わるわけだから、もう一度ノッチ曲線を見てもらって300Aと全界磁の曲線が交わるところ、35km/hですね。この35km/hになるところまで等加速度運動だと言う事で計算を続けていけば良い。
ただ、1秒ごとに計算してるので、ちょうど35km/hにはまずならないが、多少の誤差は出るが35km/hを超えたところから次の処理に入っていくことになる。
とりあえず、今日はここまでだけど、103系冷房車4M2Tが空車時に走行抵抗を加味せずに加速しはじめたとすると、1秒後には時速2.67kmで0.37mの位置まで動き、2秒後には時速5.34kmで1.48mの位置まで動いていると言う事がわかっていただければ良い。。。運転曲線とは、これを積み重ねていくだけのはなし。
そこで、昨日は檀上さんとのオフ会でちょっとカツを入れられたので、少しずつ出来る範囲からやっていきたいと思う。
まず、電車が動き出してからの話。
電車の加速というのは、モーターからの力を動輪経由でレールに対する引張力という力で列車を引っ張ったらどうなるかというだけの話。
だから、仮に引張力が3000kgあって、列車重量が100tだったら、加速力は3000÷100で30kg/tとなる。単位を見てもらえば単純な割り算だって事も思い付くと思う。トンあたりどのくらいの力をかけれるかという事だ。
で、そのトンあたりの力ってのが鉄道では「加速力」という風に呼んでいる。
通常良く使う加速度とは単位が違って、加速力はkg/tで単に力の大きさを示してるだけだが、加速度はkm/h/sと、秒当たりどの程度速度を上げれるかという風になってくる。
で、加速力と加速度は互いに計算で求まり「加速度=加速力÷30.9」「加速力=加速度×30.9」となる。実は物理的な計算で行くと、30.9という部分は28.84なんだが、伝達時の損失がある分を考慮するとだいたい30~31になる。この数値は各鉄道会社によって違い、交友社の「電車運転理論」では30.84という計算値になっている。ここでは30.9という値にしているが、当然この数値が小さければ同じ加速力なのに出して来た加速度の値が違うと言う事になる。
要は、そんな厳密に加速度なんて出ないよって事。計算時でもバラツキがあるのに、その数値通りに列車がその加速度で動くかどうかなんて保証できない。公称2.0km/h/sの形式が実際に2.0km/h/s無いからと言うのはかまわないが、どういう部分を見て違ったのかを説明できなければ説得力は無い。
中には加速度ってのは、起動から60km/hでも80km/hでもずっと継続すると思ってる人もいる。このような運動は物理では等加速度運動と言う訳だが、動き始めたら空気の抵抗もかかるし、モーターの出力も落ちて行く。等加速度運動なんてちょっと考えたら無理とわかるのに、現役の運転士でもそのあたりの理解に欠ける方もいるようだ。
ただ、起動加速度と通常呼ぶ部分、列車が動き出してから一定の速度までは、限流値という電流を制御する数値によって、電流を一定に保つ工夫がなされており、電流一定だと引張力一定なので、起動時から「ある速度」までは等加速度運動を行っている。
この「ある速度」とは、抵抗制御車では抵抗が全て抜けきり、全ての電圧がモーターにかかった状態の速度までだ。この状態を「全界磁」と呼ぶ。
通常「定格速度」というのは、この「全界磁」になる速度と言う事ができるが、単に基準の問題で全界磁ではなく弱め界磁の状態での速度を定格点に置く場合もあるが、それは特殊な場合なので、基本は全界磁・定格電流での速度を定格速度と覚えとけば良い。
で、等加速度運動が出来るのは、全界磁までの速度だから、言い変えれば「定格速度までは等加速度運動が出来る」とも言える。もちろん弱め界磁に定格を置く101系や103系などでは正確な記述にならないのだが、基本はこういう事だ。
103系の定格速度は85%弱め界磁上で36.5km/hとされてるが、全界磁では33km/h程度である。だから、103系が等加速度運動をするのは0km/h→33km/hまでで、同様に101系の定格速度は70%弱め界磁上で52km/hくらいだけど全界磁だと46.5km/hである。だから101系が等加速度運動をするのは0km/h→46.5km/hまでとなる。
この間は、所定の起動加速度を保った加速ができ、この速度を超えると、徐々に加速度は落ちていく。
そんなことだから、103系の起動加速度が2.0km/h/sだからと言って、0km/h→60km/hが30秒で運転できると考えるのは間違いで、33km/hより上では2.0km/h/sという加速度は得られないわけだから、当然0→60km/hの平均加速度は2.0km/h/s以下となる。よって30秒より長い時間がかかるわけだ。
こういう部分が見えてきたら、今までの趣味誌などでの性能解説で一部「おやっ」と思うところがあったりするわけだ。
それを気づかずに流用してしまうと、誤情報の拡散になってしまう。
東北地震でツイッターのリツィートの信憑性などについて問題点が発覚したが、その際に拡散してしまうと収拾が付かないという事を皆が感じたと思う。
結局、趣味誌の性能なども、きちんと理論上に立って検証していなかったがために、誤情報として拡散された記事がどれだけあるか。
ツイッターでもリツィートした側も問題があるが、正しい情報かどうか見極める目も必要だと言う意見もあったが、趣味誌の記事もまさにそう。それぞれの読者が信憑性に対して見極める目を養う事が誤情報を拡散ささない方法だと感じている。
だから、こういう運転理論についての話をくどくどと。。。。
参考までに103系の力行ノッチ曲線を上げておく。103系が使っているMT55とう主電動機の定格電流は330Aなので全界磁の速度や定格速度は330Aの状態で何km/hかを見る事になる。
103系力行ノッチ曲線
ということで、本題の電車が1秒後に移動する距離。
距離は速度×時間なわけだから、距離は速度÷時間だ。だから時速36kmだと秒速10mだから1秒後には10m先に進んでいる。
単にそれだけの事だが、起動時は0km/hから速度が上がっていく。引張力によって加速させられるわけだ。だから、今時速36kmだったものが1秒後には37kmになっているかもしれない。
そうなると1秒後から2秒後までに移動する距離は10mではない。
10.28mと先ほどより28cm進むことになる。
電車が起動時から加速していって、それに応じてどの程度距離を走ったかというのは、細かく考えていけば四則演算で事足りる。だから、エクセルなどが一般的にみんな使うようなご時世だから、こういう細かい繰り返し計算も、実は比較的簡単にできたりする。
では、ちょっと実例を。
103系冷房車4M2Tが空車状態で運転した場合。。。。103系冷房車はクハ103が30.6t・モハ103が39.7t・モハ102が40.2tで計算してみる。編成だと221tだ。
空車状態だから乗客の重量を加味しなくて良いので列車としての重量は221tで計算する。
次に、103系は応荷重装置がついているが、空車時の限流値は冷房車の場合300Aだ。一時間定格電流以下で起動するような設定値になっている。
この情報がわかれば、上の力行ノッチ曲線から、引張力がいくらかを見てみる。
抵抗制御車の場合、起動加速時の平均電流は限流値に20A程度多く流れた値になるから、上の力行ノッチ曲線から320Aでの引張力を求めてみる。
右斜め上方向に伸びる線が引張力の線だ。これと320Aの交点を見れば9100kg程度だろうか?
この値はMM'ユニットでの値なので、4M2Tの場合2ユニットあるから、編成ではこの数字の倍である18200kgが引張力ということになる。
加速力の計算は、一番最初に言ったように引張力÷列車重量だから18200÷221=82.353kg/tが103系冷房車4M2Tが空車状態で起動する際の加速力である。
これを見慣れた加速度に直すには、30.9で割れば良いのだから82.353÷30.9=2.67km/h/sという加速度になる。
1秒後には時速0kmだったものが時速2.67kmになっているという意味だ。
さて、ここで本題の1秒後に移動する距離だが、ほんらいはイロイロと抵抗などの計算もするんだが、ここではシンプルにこれだけの情報から計算してみる。
等加速度運動時の距離の計算は、速度を1/2にして時間を掛ければ良い。つまり、1秒後に時速2.67kmになってるなら1秒間で進んだ距離は時速1.33kmで1秒間走る距離と同じという事だ。
ってことは、1秒目に走る距離は37センチって事になる。
じゃぁ、次の2秒目は・・・・
1秒で時速2.67kmになったが、等加速度運動中だから2秒目も同じ数字だけ増え時速5.34kmになっている。
ここまで進んだ距離は2.67km/hで2秒走ったのと同じだから1m48cm(1480mm)になる。1秒目で37cm(370mm)だったから1秒から2秒の間で新たに1m11cm(1110mm)進んだ事になる。
で、103系の等加速度運動は全界磁の段階で終わるわけだから、もう一度ノッチ曲線を見てもらって300Aと全界磁の曲線が交わるところ、35km/hですね。この35km/hになるところまで等加速度運動だと言う事で計算を続けていけば良い。
ただ、1秒ごとに計算してるので、ちょうど35km/hにはまずならないが、多少の誤差は出るが35km/hを超えたところから次の処理に入っていくことになる。
とりあえず、今日はここまでだけど、103系冷房車4M2Tが空車時に走行抵抗を加味せずに加速しはじめたとすると、1秒後には時速2.67kmで0.37mの位置まで動き、2秒後には時速5.34kmで1.48mの位置まで動いていると言う事がわかっていただければ良い。。。運転曲線とは、これを積み重ねていくだけのはなし。
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