あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

NHK-BS「旅のチカラ/失われた故郷の記憶を求めて~サヘル・ローズ」を観て

2013年06月06日 00時06分37秒 | Weblog
 突然、肩にムカデが這っていたので仰天した。
 夕食が終わって一息ついたところだったので、本当にびっくりである。
 うちは鉄筋造の団地の二階なので、まずムカデが入ってくることは無い。ぼくが知る限り数十年の間にこれが二回目だ。しかも肩を這ってるなんて。
 別に虫が苦手なわけではないが、さすがに刺すやつはごめんこうむる。あわてて(でも静かに)払い落としたら向こうもあわてて逃げていった。畳の上をすばやく走っていったのだが、ダイニングキッチンの床になったところで、戸惑うように首を左右に振り動きが遅くなった。たぶんなにかムカデの生態によるものなのだろうが、それを見たら、まるでテンパってしまった人間を見るようで、変な親近感を感じてしまった。
 結局、手近にあったスリッパにムカデを乗せることができたので、ベランダから外へはたき落とした。まあもしうまく生き延びられたのなら、それでもいいと思う。
(下の階のベランダに落ちてたらすみません;)

 そんな夜に。

 NHK-BSの「旅のチカラ」を見た。
 旅をしたのは女優でテレビタレントでラジオDJのサヘル・ローズ。祖国であるイランへはじめて母親抜きの帰郷をするという企画だった。
 ここでは特に書かないので、サヘルのことや詳しい番組の内容に興味のある人は検索して調べてほしい。ぼくはファンと言えるほど彼女の仕事を見ているわけではないが、彼女の自伝は発売されたときに読んだ。

 日本とイランは遠く離れているし、文化も違う。番組に登場した人々も深いところでは我々とは考え方などがすごく違うのかもしれない。しかし、幼いころ空襲で家族全部を失い、戦災孤児となり、やがて日本にやってきてからも多くの苦難を体験した彼女に、イランの人たちが接する態度、かける言葉は、日本人の感覚と何も違わない。
 サヘル自身がどう思っているかは知らないが、彼女の体験は海老名香葉子(初代林家三平婦人・戦災孤児)や田村裕(麒麟・「ホームレス中学生」)の体験と重なっている。それはつまり彼女の体験は少なからぬ日本人にとっても身近な体験だということだ。

 イランという国に対して反米・イスラム原理主義のエキセントリックな国だという感覚を持つ人は多いだろう。イラン人と言うと麻薬密売人とか国際自動車窃盗団とかと結びつけ差別的な感情を持つ人もいるだろう。
 しかし一人一人のイラン人は人間として日本人と全く変わらないということを、このドキュメンタリー番組は教えてくれる。
 むしろ日本人が忘れてしまったこと、忘れようとしていることを、鮮明にリアルに見せつけてくれたと言えるかもしれない。

 そしてそのことをほんの少しだけ広げて考えることができれば、中国であれ朝鮮であれ、東南アジアでもアフリカでも中南米でも、たぶん人間なんてみんな同じなんだということに簡単に気づくだろう。

 そこに自分勝手な壁を築く人は、悲しい弱虫でしかない。