大阪府堺市の市長選挙で現職が当選し、大阪都構想を掲げた橋下氏の維新の会が敗れた。一般論から言えば、特に不思議な話ではない。そもそも首長選挙は現職が圧倒的に有利なのだ。
それでもこのことが大きな意味を持っているのは、橋下氏と維新の会の魔法が解けたからである。
大阪から遠く離れた関東の人間にとっては、橋下氏のカリスマ性がよくわからないし、なぜ維新の会がそんなに支持されるのか理由が見えない。それなのに選挙をやると連戦連勝で何かの魔法がかけられているかのようだった。全く端から見ているだけの感想だが、橋下氏と維新の会の伸張は、まさに有権者が魔法の効果に期待するというか、乗っかるというか、目に見えない何かの力によるものだったように思える。
その(失礼ながら)唯一の原動力である魔法が解けてしまった時、橋下氏も維新の会も特になんでもない〈普通〉に戻るのだろう。ぼくはそれは健全なことだと思う。
さて、ただそれ以上に今回の選挙が象徴しているのは、ナショナリストの矛盾の噴出だったのではないだろうか。
今回の市長選の争点と言われていたのは大阪都構想である。言ってみれば、〈汎大阪主義〉対〈堺地域主義〉の対決だったように見える。
橋下氏はナショナリストである。ナショナリズムは国家の支配下に人・モノ・思想を全て糾合しようという思想だ。しかしその橋下氏が選択したのは地方自治体の首長になることであった。そしてそこから道州制を主張し中央と対立する構造を作ってきた。ここが第一の矛盾である。たしかに歴史的に見ても世界的に見ても、国家主義者が地方分権=分離主義を唱えることがよくあるが、そこには根本的矛盾がはらまれているのだ。
その橋下氏は、大阪というローカルにおいては今度は統合主義者となる。堺市を大大阪の下に吸収しようとした。しかしそれは堺市民の地域主義=小ナショナリズムに破れる結果となった。
ひとつ思うことは、ナショナリストの地方分権の主張は危ういと言うことだ。それは権力を分離、分散することを目指すものではなく、むしろ自分という個人に全ての権力を集中したいという欲望の表れに見えるからだ。
彼は王様になりたいのである。そして小さな王様になったら、今度はより大きな王様になろうとする。止める者が出てこない限り彼の野望は果てしなくどこまでも広がり続け、やがては世界を、もしかしたら宇宙まで支配したいと思うようになるかもしれない。
ナショナリストは、しかし彼の主張を一般化して正当化する。つまり彼の主張は決して彼一人が王様になるためではなく、その共同体全体の共通した利益にかなうものなのだと。
それはただのまやかしだが、それを信じる者たちが現れ、それはどんどん拡大する。恐ろしいのは彼らの間で相乗効果がおこり、連鎖反応のように全体がより先鋭化していくことである。やがてある場合には王様の意図を乗り越えて支持者の方が先に行ってしまったりする。
〈右翼自認宣言〉をし、まさに日本のナショナリズムを煽り続けている安倍首相だが、彼が作り出そうとしてきた〈世論〉は、彼の思惑を越えて、ついに日韓交流イベントに出席した首相夫人が批判、非難される事態まで招いてしまった。
同じようなことで思い起こされるのは、かねてより世論を右傾化させる原動力の一つとなってきた、最右派マスコミであるフジ・サンケイグループの主要メディアであるフジテレビが、韓流ドラマを放映しているとしてネトウヨから攻撃された事態だ。
煽る側は実際には自分の利益のために世論を煽るのだが、煽られた世論はその言葉を真に受けてさらに極端なところに行ってしまう。そうなるともはや煽った側もコントロールが出来ない。そのことは中国共産党がときどきに行う反日キャンペーンの顛末を見てもよくわかる。
ただそこで、煽った側が危険性を感じて沈静化へ動こうとすればまだよい。逆に煽り返されて、さらに先鋭化していったら、それこそ最悪の相乗効果が発生する。
いま安倍氏の様子がなんとなく危うい。はじめは戦術的に言っていた右翼的発言が、だんだん本気に変化しているような感じを受けてしまう。たしかに日本の景気は彼の裏付けのない口先だけの言葉で急激な回復を見せた。原発事故をコントロールしていると宣言すれば世界も納得した。こうなってくると安倍氏の中に全能感が生まれてきてもおかしくはない。
橋下氏はやっと冷水を浴び、カリスマ性を低めていきそうだが、安倍氏にも早く冷水をかけないと、日本が最悪のメルトダウンを起こしてしまうかもしれない。
それでもこのことが大きな意味を持っているのは、橋下氏と維新の会の魔法が解けたからである。
大阪から遠く離れた関東の人間にとっては、橋下氏のカリスマ性がよくわからないし、なぜ維新の会がそんなに支持されるのか理由が見えない。それなのに選挙をやると連戦連勝で何かの魔法がかけられているかのようだった。全く端から見ているだけの感想だが、橋下氏と維新の会の伸張は、まさに有権者が魔法の効果に期待するというか、乗っかるというか、目に見えない何かの力によるものだったように思える。
その(失礼ながら)唯一の原動力である魔法が解けてしまった時、橋下氏も維新の会も特になんでもない〈普通〉に戻るのだろう。ぼくはそれは健全なことだと思う。
さて、ただそれ以上に今回の選挙が象徴しているのは、ナショナリストの矛盾の噴出だったのではないだろうか。
今回の市長選の争点と言われていたのは大阪都構想である。言ってみれば、〈汎大阪主義〉対〈堺地域主義〉の対決だったように見える。
橋下氏はナショナリストである。ナショナリズムは国家の支配下に人・モノ・思想を全て糾合しようという思想だ。しかしその橋下氏が選択したのは地方自治体の首長になることであった。そしてそこから道州制を主張し中央と対立する構造を作ってきた。ここが第一の矛盾である。たしかに歴史的に見ても世界的に見ても、国家主義者が地方分権=分離主義を唱えることがよくあるが、そこには根本的矛盾がはらまれているのだ。
その橋下氏は、大阪というローカルにおいては今度は統合主義者となる。堺市を大大阪の下に吸収しようとした。しかしそれは堺市民の地域主義=小ナショナリズムに破れる結果となった。
ひとつ思うことは、ナショナリストの地方分権の主張は危ういと言うことだ。それは権力を分離、分散することを目指すものではなく、むしろ自分という個人に全ての権力を集中したいという欲望の表れに見えるからだ。
彼は王様になりたいのである。そして小さな王様になったら、今度はより大きな王様になろうとする。止める者が出てこない限り彼の野望は果てしなくどこまでも広がり続け、やがては世界を、もしかしたら宇宙まで支配したいと思うようになるかもしれない。
ナショナリストは、しかし彼の主張を一般化して正当化する。つまり彼の主張は決して彼一人が王様になるためではなく、その共同体全体の共通した利益にかなうものなのだと。
それはただのまやかしだが、それを信じる者たちが現れ、それはどんどん拡大する。恐ろしいのは彼らの間で相乗効果がおこり、連鎖反応のように全体がより先鋭化していくことである。やがてある場合には王様の意図を乗り越えて支持者の方が先に行ってしまったりする。
〈右翼自認宣言〉をし、まさに日本のナショナリズムを煽り続けている安倍首相だが、彼が作り出そうとしてきた〈世論〉は、彼の思惑を越えて、ついに日韓交流イベントに出席した首相夫人が批判、非難される事態まで招いてしまった。
同じようなことで思い起こされるのは、かねてより世論を右傾化させる原動力の一つとなってきた、最右派マスコミであるフジ・サンケイグループの主要メディアであるフジテレビが、韓流ドラマを放映しているとしてネトウヨから攻撃された事態だ。
煽る側は実際には自分の利益のために世論を煽るのだが、煽られた世論はその言葉を真に受けてさらに極端なところに行ってしまう。そうなるともはや煽った側もコントロールが出来ない。そのことは中国共産党がときどきに行う反日キャンペーンの顛末を見てもよくわかる。
ただそこで、煽った側が危険性を感じて沈静化へ動こうとすればまだよい。逆に煽り返されて、さらに先鋭化していったら、それこそ最悪の相乗効果が発生する。
いま安倍氏の様子がなんとなく危うい。はじめは戦術的に言っていた右翼的発言が、だんだん本気に変化しているような感じを受けてしまう。たしかに日本の景気は彼の裏付けのない口先だけの言葉で急激な回復を見せた。原発事故をコントロールしていると宣言すれば世界も納得した。こうなってくると安倍氏の中に全能感が生まれてきてもおかしくはない。
橋下氏はやっと冷水を浴び、カリスマ性を低めていきそうだが、安倍氏にも早く冷水をかけないと、日本が最悪のメルトダウンを起こしてしまうかもしれない。