あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

アフガニスタンでボランティアが殺害された

2008年08月29日 17時22分44秒 | Weblog

 ペシャワール会の伊藤和也さんというボランティアの方がアフガニスタンで農業支援活動をしている最中、タリバーンを名乗る武装集団に誘拐され殺害された。
 心よりの敬意を表するとともにご冥福をお祈りする。

 

 しかし何故こんなことになってしまったのか。
 そしてその一方、この事件を右翼が政治利用しようとしていることも、非常に腹立たしい。

 

 高村正彦外相はアフガニスタンの外相との電話会談で、今回の事件について「あらゆるテロを断固非難し、テロとの戦いへの決意を新たにしている」、「引き続きできる限りの努力をしなければならない」として、海上自衛隊によるインド洋での給油活動継続に強い意欲を示したとされる。
 しかし実はこうした日本政府の好戦的な発言が、紛争地帯で働く日本人ボランティアの命を危険にさらす結果になっているのである。日本人は米国の手先ではないと現地の人々が思うからこそ、彼らは安全でいられるのだ。
 もちろん、ペシャワール会自身もそうした立場で関わってきたので、だから政権がタリバーンであれ、親米カルザイ政権であれ、変わることなく現場に貼りいてきたのだし、現地の人、現地の文化・風俗を最も尊重する活動が行われてきたのだ。
 そうしたペシャワール会の尊敬すべき運動、そして不幸にも起こった今回の貴い犠牲に対して、それを米国の侵略戦争を肯定したり日本の軍事介入の口実にするような発言には強い怒りを感じざるを得ない。
 さらにネットウヨはこの事件に関わるサイトにおいて、自衛隊の直接的軍事行動への参加を求める書き込みさえしている。これでは亡くなった方が浮かばれないと思う。

 

 ところで、今回の事件の犯人の中にはこの地域の出身者もいるらしい。つまりペシャワール会の活動をよく知った上で、あえて伊藤氏をターゲットに選んだのだ。これは深刻な事態と言わざるを得ない。
 果たして、アフガニスタンの人々は日本人が現場へ出向いて支援することを本当に望んでいるのだろうか。もちろん極端な言い方であることはわかっている。当然、多くの人々は日本人ボランティアを友好的に迎えているし、今回の事件でも1000人もの人々が捜索に加わったと伝えられている。しかし、それでも考えてしまう。
 日本はすでに完全に合衆国の子分と化している。そもそも現在の格差社会の始まりも米国の政策によるものだったことを多くの人が知っている。「平和憲法」を掲げて少なくとも海外派兵はしない、非核三原則は堅持するという独自の平和外交をとっていられた時代とはもはや違う。
 ぼくが恐れるのは、こうした時代、こうした状況下で、ついに善意の支援活動というものさえ、そのまま受け入れられてもらえない時代になったのかもしれないということだ。

 

 かつて、第三世界人民と連帯して闘いたいと心底願っていたとき、あれは韓国だったか、ニカラグアだったか、パレスチナだったか、闘っている人々からのメッセージは「本当に連帯したいと思うのなら、まず日本の侵略政策を止めてくれ」というものだった。
 今、本当にアフガニスタンの人々のためになることは何なのか。
 日本を米国の言いなりから脱出させ、まずそのことから世界における米国の横暴を押しとどめる一歩とすること、それは直接的な支援から考えればはるかな遠回りのように見えるかもしれないが、しかし、それは日本人にこそ出来ることであり、やるべきことだなのだと思う。