蛇口屋

リフォーム業界のあれこれ

人の死なないマンション、と言う小話

2010-05-06 21:01:26 | Weblog
今日はGW前から、蛇口屋を苦しめていたトイレと、正式に決着をつけるべく、勝負を挑んで来ました。

もっとも、その前には、お客さんとのこの工事の追加工事分としての金額との戦いがあった訳で、お客さんの葛藤もそれはもうすさまじい物でした。まあ、工事金額、あっさりと軽々3倍以上の料金なら、それは、悩み
もしますよね。
っていうか、やらないと行けない工事です。

なんかこういう例を見ていると、本当、建築って設計段階から、将来の改修工事の金額が決まってしまうなあ、ってつくづく思い知らされます。この家でしたら、設計段階で、お風呂やキッチンの集まるユーティリティーの方にトイレを設ける事ができたなら、たぶんこんな苦労と経費はかからなかっただろうと言うことです。
階高基礎の玄関ポーチの中排水管が通って行っているので、まさに将来的に改修が不可能ところに排水管が通って居ることがネックになってしまっています。
新設の排水管にする逃げ場が、この住宅にはありません。
たぶん、昔の施工屋さんなら、将来、この家を治す必要なんてみじんも感じなかったに違いありません。

曰く言う、都市伝説の一つ、「人の死なないマンション」の話を思い出します。

別に怪談とか怖い話ではありませんよ。

今から30年程前に、きれいな鉄筋鉄骨のマンションが造られたそうです。最新の技術に最新の設備で、いわゆる高級マンションとまでは行きませんが、共有部の方にお金をかけないで、占有部にお金をかけて、すむ人が満足できるマンションを作り上げたそうです。
それから長い月日がたって、最近、そのマンションのご高齢のご夫婦の旦那さんの方がお亡くなりになりました。
もちろん怪談ではありませんので、老衰だったという話を伺っています。

病院で医師に看取られての死ではありませんので、扱いは変死、当然、ご主人のご遺体を
病院に運ぼうとしたとき、ある事実がわかりました。
このマンション、ご遺体を運ぶためのストレッチャーが入らないのです。エレベーターもちろん、直通階段も、外階段も生きている人間が通る分には差し支えないんですが、遺体の搬送ができないと言う話でした。
まあ、そのときは死後硬直するご主人の遺体を、2名の看護士の方が抱えて、おろしたそうですがね。
つまり、「死なないマンション」っていうのは、「人が死ぬことをお前提に考えられていないマンション」ということで、年数の経過と共に訪れる日常に全く対応できないマンションと言うことになります。
生きて生活している人間が居る限り、こういう事って必ずあることで、避けては通れない事なのに、言われてみれば忘れがちな事かもしれません。

今蛇口屋の工事している住宅と一緒ですね。
壊れる、なんて全く予想していない、造るだけの設備です。

まあ、話を聞いたときは、まだ若かった蛇口屋は「人間って以外にでかいんだな」なんて感心してましたけどね。

ひとまず、そんな壊れる筈も無いトイレを修理するための工事が始まって、お客さんの事を考えると、気の毒だと思いつつも、少しはホッとしている蛇口屋でした。