1.再生可能エネルギー価格の現状
コロナ禍後の経済回復のための景気刺激策として、再生可能エネルギーの導入を拡大すべきだ、という意見が、米国、欧州の一部から聞こえるようになった注1,2) 。日本でも類似の意見が出てきた注3) 。
だが再生可能エネルギーというと、経済性が気になるところだ。これに対して、推進論者は、再生可能エネルギーは、今や他の発電方式より安い、ということをよく言う注4) 。本稿ではこの真偽を確かめよう。なお以下の計算では、公開されたデータに基づいて、本質を変えない範囲で可能な限り単純化している。
再生可能エネルギー全量買取制度の下での日本の太陽光発電の入札価格は、2020年1月には10.99円/kWhから13.00円/kWhの間だった注5) 。ただし入札の対象になっているのは250kW以上という大型の事業用太陽光発電のみであり、小型の太陽光発電には、もっと高い買取価格が設定されている。10kW未満であれば、21円/kWhである注6) 。
風力発電は、太陽光発電より全般に高価で、陸上で16円/kWhプラス税、浮体式洋上風力では36円/kWhプラス税、となっている。
ようするに、安くなったのは、入札分の大型だけであり、小型の分は、もっと高く。
10KWH未満であれば21円/KWH
風力の場合陸上で、16円+税
浮体式洋上風力では、36円+税
2.同じ「キロワット・アワー(kWh)あたりの価格」でも意味が違う
さて、以上の価格を石炭火力発電と比較してみよう。石炭火力発電のコストは、燃料費が5.5円/kWhであり、建設費・運転維持費等を足すと、合計で9.3円/kWhと政府は試算している注8) 。
一見すると、大型の太陽光発電と石炭火力発電の価格は互角になったように見える。実際、そのような意見もよく見かける注9) 。だがこれは初歩的な間違いである。
同じ「kWh」、つまり発電電力量でも、両者の意味は全く違うのだ。太陽光発電は、電力を消費したい人が居ようが居まいが、太陽が照った時だけに発電する。これに対して、石炭火力発電は、電力を消費したい人がいるときに、必要なだけの発電をする。
一見、同じ価格であっても、火力発電は「買いたい価格」であるのに対して、太陽光発電は「押し売り価格」であって、意味が違う。
電気は、消費に合わせて発電するからこそ価値があるのだ。
家庭の照明について考えよう。電気の価値は、スイッチを入れた時にきちんと照明がつくことにある。なぜ石炭火力発電ではこれが可能か。スイッチを入れると、それで電線に電流が流れ、するとそれに応じて発電所で石炭ボイラーへの投入が増えて、追加分が発電されるようになっている。じつに巧妙な仕掛けである。
これに対して、太陽光発電だけだと、たまたま日光が出た時だけ電気が送られるので、スイッチを入れても、太陽が照っていないと照明はつかない。これでは不便極まりない。そんな電気にお金を払いたくはない。
勿論、これでは使い物にならないから、太陽が照っていないときのために備えて、石炭火力などの他の発電所を作っておく必要がある。これが現実に起きていることだ。
ここで、重要なポイント、同じKWHでも意味違うという点
例えば、太陽光は、必要あってもなくても発電するので、「押し売り価格」
しかし、火力発電、必要時にだけ発電する「買いたい価格」
電気は、消費にあわせて発電るから価値ある。
3.再生可能エネルギーの本当の価値は?
さてこのとき、太陽光発電には、いったいどれだけの価値があるのか? 以下、簡単のため、石炭火力発電と太陽光発電だけがある状況を考えよう。
太陽光発電は、石炭火力発電を代替することは出来ない。太陽光発電が何KWあっても、それと同じKWだけ石炭火力発電があって、いつでも運転できるように維持しておかねばならないからだ。つまり太陽光発電を造ろうが造るまいが、石炭火力発電の建設費と運転維持費はかかる。
太陽光発電の価値は、太陽が照っている時だけに限り、石炭火力発電の燃料を節約できる、というだけのことだ。この節約分を「回避可能費用」という。これは石炭火力発電だと前述した燃料費である5.5円/kWhの価値にしかならない注10) 。
従って、全量買取制度の下で11~13円/kWhの価格で太陽光発電が導入されるというとき、このうち5.5円/kWh は石炭火力発電の燃料を節約することで取り返せる。だが残りの5.5~7.5円/kWhは、電力の消費者が負担することになる。
つまり大型の太陽光発電を1kWh増やすたびに、国民は5.5~7.5円を追加で負担せねばならない。これが大型の太陽光発電ならばまだこの位で済む。小型の太陽光発電なら21円マイナス5.5円で15.5円である。陸上風力発電なら16円マイナス5.5円で10.5円(プラス税)である。浮体式風力発電なら36円マイナス5.5円で30.5円(プラス税)である。
なお実際には、これに加えて、太陽光発電の導入量が増えるにつれて、発電量を抑制し(=捨て)たり、送電線を増強したり、変動する太陽光発電に合わせて火力発電の出力を急激に変動させたりすることで、更にコストは嵩む(以上は専門的になるので詳細は省く注11) )。
ここで、重要なポイントいえば、
太陽光は、火力の代替えにならない。
つまり、太陽光が、何KWあっても、それと同じだけ石炭力があって、いつでも、運転きるように維持しておかねばならない。
ようするに、太陽光が、あろうとなかろうと石炭火力の建設費と維持費はかかる。
つまり、全量買い取りで、11から13円価格で、太陽光が導入されるき、5.5円の火力だけ節約の場合
式であらわせば
13-5.5=7.5で、
この7.5円が消費者負担。
これが、小型や風力場合になるともっとたかくなり、
さらには、いろいろ送電網の強化、電力の抑制(捨て)たりしなければならない。
4.再生可能エネルギー導入拡大は経済回復を妨害する
再生可能エネルギー賦課金は2019年度には2.95円/kWhに達し、再生可能エネルギーの買取費用は3.6兆円、賦課金は2.4兆円となっている。事業者や家庭は毎年2.4兆円もの費用を既に負担している注12) 。今後、再生可能エネルギーの導入が更に拡大するならば、この賦課金はますます膨らむことになる。
いまコロナ禍で企業の財務状況は悪化し、生活は苦しくなっている。回復にはしばらく時間がかかるだろう。このようなときに、ますます電気料金の負担を増やすのは間違いだ。いま為すべきことは、全量買取制度を見直し、今後の再エネ導入量を大幅に縮小することだ。
政治家や行政官にとって、再生可能エネルギーには、危険な誘惑がある注13) 。イメージが良いので、投資拡大に支持を集めやすいかもしれない。またすぐに巨額に上るので、景気対策として目立つ成果になり易いかもしれない。大きなお金が動けば、それで仕事が出来る事業者も多いからだ。だが本稿で述べたように、再生可能エネルギーに投資することは、国全体として見るならば、きわめて無駄の大きい投資である。上述したように、発電原価が総じて高いうえに、その便益はせいぜい化石燃料の節約ぐらいしかない。経済合理性は全く無い。
政府も企業も、財務状況はコロナ禍で悪化している。だがそれでも必要な投資はある。コロナ後の経済においては、リモートオフィス・リモート教育・リモート診療などのデジタル技術が活躍する。これは将来の温暖化対策技術のイノベーションへの布石にもなる注14) 。これを支えるインターネット等のインフラ整備には、莫大な投資が必要だ。また近年、水害等への対策が不十分であったことが露呈しつつあり、防災インフラへの投資も必要だ。電気技術者も、建設業者も、自治体も、こういった、喫緊かつ費用対効果の高い仕事で十分に忙しくなるはずだ。再生可能エネルギー投資を拡大する必要は無い。
結果
重要ポイント、
コロナウイルスで、企業の財政状況が悪化の状態で、再エネ導入ることは間違い。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます