よのなか研究所

多価値共存世界を考える

ビールをもっと大切に、

2011-10-18 23:09:39 | 比較文化

                 Photo(カウンターに並ぶアルコール飲料)

 

ビールという飲み物をもっと丁寧に扱ってもらいたいと感じるところがありました。

スポーツの秋真っ盛りでおおいに結構なことですが、気にかかったのは、プロ野球のリーグ優勝の祝賀会でビールをかけ合っているシーンです。テレビのニュースや新聞の写真でいやが応にも目につきます。アメリカの大リーグの地域優勝の祝賀会ではシャンパンをかけあっていましたが、もともとあちらから来た習慣ですかね。両方のシーンを見て、室内で大勢で飲み物を掛けあうとは趣味が悪いと感じるところがありました。

 

優勝を祝うのにアルコール飲料を空中に撒くという行為はヨーロッパのモータースポーツにその起源があるようです。F1やルマン24時間耐久などで、表彰台に上った勝者が、勝利の盾(shield)や花輪(garland)を受け、最後にシャンパンの大瓶を手にして一口飲むと、それを大きくゆすって吹き出る泡を周囲の人たちに掛けて神の祝福を分け与えるというわけです。屋外で行われるこんなシーンを記憶の方も多いのではないでしょうか。ここに登場するシャンパンは主要なスポンサーが提供しており、自社商品のメディア露出を意図しているというわけです。

しかし、その場で振りかけるシャンパンは一本か、せいぜい数本です。無数の瓶を空けてそれらを振り掛けるというのでは品位に欠けます。この後に、個々人のパーティで騒ぐのは勝手ですが、モータースポーツの祝賀会はこれでおしまいです。あとは個人のパーティです。

ここに登場するシャンパンは高級品です。バッカスからの贈り物なのです。ビールが一本数百円なら、高級シャンパンは一本一万円から数万円しますからポンポンと栓を抜いて手当たり次第に掛けまくる訳にはいきません。

 

他のスポーツ競技の表彰式でアルコール飲料がどのように使われているのかは良く知りませんが、日本のプロ野球に関して言えば、優勝祝賀会でのビール掛けは恒例イベントとなっているようです。ビール・メーカーとしては大量消費してくれる良いお得意さん、ということになるのでしょう。アメリカのプロ野球界の祝賀会では安価なシャンペンを使っているようですね。映像を見てブランドまでは分かりませんでしたが、広い会場の床に水溜まりができるほど掛けまくるのに、高級品を使うこともないでしょう。

野球が団体競技であり、祝賀会となると選手とスタッフと関係者で百人を超える人が参集することになると思われますから、シャンパン数本程度では済ませることはできないのでしょう。

ともかく、日米ともプロ野球は祝賀会の品の悪さが競技としての地位を低からしめていると感じるのは私だけでしょうか。選手たちが勝利の美酒に酔いたいのであれば、その飲み物にも敬意をはらわなければなりません。アルコールであれば何でもよい、ということで容量単価の低いものを、ということはおそらく球団の事務方が考えたことでしょうが、ビールは立派な飲料です。長い歴史があり、歴史の中にも寓話がたくさんあります。最高の飲み物でありながら、その単価が安いということであのような無駄が許されるのでしょうか。元酒好きの筆者としては、もったいないということのみならず、酒の神への冒涜ではないか、と感じられるのです。「とりあえずビール」というセリフも好きではありません。

 

プロの選手たちは「勝利の美酒」に相応しい飲み物を選び、それを味わう時間を大切にしていただきたい、と思うのです。マスコミ受けするようなイベントではなく、選手が本当に美酒に酔い、心地良く自分たちの祝賀の場へ、あるいは家路へと付くことができると思うのですが、それはスポーツ界への幻想なのかもしれませんね。

(歴山)

 



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