先週の昼の部に引続いて、昨日、夜の部公演に行ってきた。
私の歌舞伎好きは、初回平成中村座を観たことに始まっている。それ以来東京での公演はほぼ全て通ってきた。中でも3年前のロングラン公演は強い思い入れがある。浅草三社祭当日の公演で、お神輿が登場したあの時、あの場にいられたことは、私の人生出来事ビッグ3入りすると確信している。
そんなこんなで、思い入れが強すぎて、特に先週はすんなり芝居に入り込めないくらいだった。小屋内をうろうろするだけで、心はうきうき、うるうる。
今回の演目の中でまずひとつあげるとすると、"高坏"かな。太郎冠者、次郎冠者が登場するコミカルな狂言劇としては、"棒しばり"とならんで好きな演目だ。
大名に仕える家来太郎冠者が、お酒の席で盃をのせる台'高坏'の調達を命ぜられたものの'高坏'がどんなものかよく分からず、居合わせた'高足(下駄)'売りにだまされてしまうという話。最後に、酔っ払った太郎冠者が下駄を履いてタップダンスを踊るのだ。
中村屋贔屓の私だが、他で一番好きな歌舞伎役者は片岡亀蔵さん、若手で一番愛おしい役者さんは中村鶴松くん、だ。その二人で、お芝居が始まったにだから、こんなに嬉しいことはない。
亀蔵さんは坂東彌十郎さんの息子ではないけれど、彌十郎さんの後継者のような存在になっていくのだろうなあ~と。亀蔵さんらしく中村座を見守りながら支えてくださっている存在感があたたかく漂っていた。一方、舞台上で凛々しい若さの中、軽快感、安定感両方を持って演じている鶴松くんは本当に素敵だった。歌舞伎のうちの生まれではない彼はただひたすら歌舞伎が好きで、一心に稽古に取り組んできた。その成果を観ることができ、誇らしく心から嬉しかった。
勘九郎さんの動きや表情は、一段と勘三郎さんが入っているように思えた。どうしても、ファンタジーを観ているような気になってしまう。それは彼の望むところではないのかもしれないが・・・。勘九郎さんは彼の中にいる勘三郎さんと力を合わせて、勘三郎さんを目指しながら、その上での勘九郎さんをきっと築いてくれることと楽しみにしている。勘九郎さんが勘三郎さんのビデオを繰り返し繰り返し見入っている姿が目に浮かんだ。
平成中村座、小屋内いろんなところで、勘三郎さんの目線を確かに感じた。6日にお亡くなりになった小山三さんも。
少し日をおいてまた観にいく予定、進化した舞台が楽しみだ。