遊爺雑記帳

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「東方経済フォーラム」と同時開催の「ボストーク2018」 何のための首脳会談や「2プラス2」なのか

2018-09-20 01:20:18 | つぶやき
 日露首脳会談について、昨日は、新潟県立大学・袴田茂樹教授による「北方領土」に注目した解説をとりあげさせていただきました。
 ここでは、もう一方のロシア関連情報の雄、北海道大学・木村汎名誉教授の、ロシアの最近の北方領土、その周辺地域で軍事力の増強に注目した日露関係への"喝"についてとりあげさせていただきました。
 
露の軍事的威圧を黙認するな 北海道大学名誉教授・木村汎 (9/18 産経 【正論】)

≪中国との演習で兵力を誇示≫
 
ロシアは9月中旬、極東とシベリア地域で軍事演習を敢行した。「ボストーク(東方)2018」と銘打った同演習は、1981年のワルシャワ条約機構「ザーパド(西方)」以来最大規模のものになった。兵士約30万人、軍用機1000機以上が参加した。中国人民解放軍の兵士約3200人、軍用機30機が初参加したことが注目に値する。

 同演習が達成しようとした
目的の第1は、ロシア軍事力の誇示だった。ロシアの国力は、米国、中国、欧州連合(EU)主要国、日本に比べて著しく劣る。人口、国内総生産(GDP)、科学技術、ソフトパワーなどの指標で、そうである。唯一、米国に匹敵するのは、核兵器を含む軍事力。だとすれば、ロシアが己の兵力を顕示するのも当然至極といえよう。実際、ロシアはメーデー、対独戦勝記念日など、あらゆる機会をとらえて軍事パレードを敢行する。
 旧ソ連時代、セルゲイ・ゴルシコフ海軍総司令官は、公然と
「ガンボート(砲艦)外交」の必要を唱えた。ソビエト4大艦隊は世界の津々浦々を遊弋(ゆうよく)し、心理的に沿岸諸国の肝を寒からしめる機能である。つまり、ソ連の軍事力は物理的な強制手段としての役割のほかに、政治的、外交的な威圧の任務も果たす必要を担っている。言い換えるならば、戦いは現実に戦火を交えることなしに勝利を収めるのが上出来と見なした

≪キッシンジャー提案は的外れ≫
 今日、世界の数多くの諸国が核保有国となり、通常兵器ですら軽々しく使用しえない状況を招来している。そのために、かつて
ウィンストン・チャーチルが喝破した次の言葉が、ロシアばかりでなく、どの国にも当てはまるようになった。「ソビエト・ロシアが欲しているのは、戦争ではない。実は戦争の果実(fruits)なのである」

 「ボストーク2018」の
第2の狙いは、中露間の連帯を全世界、とりわけ米国向けに誇示してみせることにあった。ロシアと中国の関係は、確かに微妙かつアンビバレント(愛憎両感情の併存)である。両国は地理的近接性と経済的補完性をもつために互いに他を必要とする。と同時に敵対し合う萌芽(ほうが)も内蔵している。

 
今や中国が昇りゆく新興大国だとすれば、ロシアは沈みゆく旧大国と見なされる。両国は関係を逆転し、かつて弟分だった中国は兄貴分の地位を占めようとしている。とはいえ、少なくとも当分の間は唯一の超大国たるアメリカに対抗する必要に迫られている。
 そのために、両国は好むと好まざるとにかかわらず、共同スクラムを組もうともくろむ。国連安保理事会決議で中露両国が共同歩調をとりがちなのは、このような事情や戦略にもとづく。

 右に述べた現状に鑑みるならば、
キッシンジャー氏が最近勧める提案は「的外れ」と評さねばならない。同氏は、1970年代初めに最大の仮想敵国であるソ連に対抗するために米中が提携し合う戦略を発案し、ニクソン政権下に大成功を収めた。その成功の甘い香りに幻惑されて、今度は米国がロシアと協同して中国に対抗すべきだとトランプ大統領に勧めているようだ。

 しかし、氏は中露が少なくとも今の時点で互いに決定的に対立し合う状態となっていない事実を見誤っている。氏がトランプ大統領に強く勧めるべきは、むしろ同大統領が対欧州関係を修復すべき作業のほうであろう。

≪何のための「2プラス2」か≫
 ロシアは「ボストーク2018」を9月11~17日に実施した。
プーチン政権は全く同時期の9月11~13日にウラジオストクで「東方経済フォーラム」を主宰し、習近平中国国家主席、安倍晋三首相を招いた
 これでは、
日本は中露両国の軍事協力を黙認させられることを意味しないか。確かに同演習はその実施場所から北方領土を含むクリール諸島(千島列島)を外した。とはいえ「ボストーク2018」が米国ばかりでなく、米国と安保条約で結ばれている日本に対し、威圧機能を兼ねている事実は否定しえないだろう。

 それでなくても、
最近のロシアは北方領土、その周辺地域で軍事力の増強に努めている。択捉、国後での軍事基地建設、新型地対艦ミサイル(「バスチオン」や「バル」)の配備など、枚挙にいとまがないほどだ。しかしこれらに関して、安倍首相は日露首脳会談の席上でプーチン大統領に向かい、単に「注視している」と伝えるだけにとどめた
 日本としては、ロシアとの会合、とりわけ
「2プラス2」(外務・防衛閣僚協議)などの席上で、ロシアの軍事増強や演習について、必ず正式の議題として取り上げ、討議すべきであろう。

 もしロシア側によってそれが馬耳東風の扱いを受け続けるならば、そもそも一体
何のための首脳会談や「2プラス2」なのか。もう一度その意義を問い直す必要が生じよう。 (きむら ひろし)

 ロシアは 9月中旬、「ボストーク(東方)2018」と銘打った極東とシベリア地域で、1981年のワルシャワ条約機構「ザーパド(西方)」以来最大規模の軍事演習を敢行しました。
 目的の第1は、ロシア軍事力の誇示。
 「ガンボート(砲艦)外交」と旧ソ連時代、セルゲイ・ゴルシコフ海軍総司令官が公言した、軍事力による政治的、外交的な威圧。

 第2の狙いは、中露間の連帯を全世界、とりわけ米国向けに誇示してみせることだと。
 今や中国が昇りゆく新興大国だとすれば、ロシアは沈みゆく旧大国。両国は関係を逆転し、かつて弟分だった中国は兄貴分の地位を占めようとしている。ただし、両国は当分の間は唯一の超大国たるアメリカに対抗する必要に迫られている。
 両国は好むと好まざるとにかかわらず、共同スクラムを組もうともくろみ、共同歩調をとりがちになるのだと。

 日本が留意し取り組むべき道は。
 先ず、「ボストーク2018」(9月11~17日)と同時期に開催された、ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」(9月11~13日)に、習近平中国国家主席、安倍晋三首相が招かれたこと。
 これは、日本は中露両国の軍事協力を黙認させられることを意味しないか。米国ばかりでなく、米国と安保条約で結ばれている日本に対し、威圧機能を兼ねている事実は否定しえないと。
 最近のロシアは北方領土、その周辺地域で軍事力の増強に努めていることは諸兄がご承知の通りです。
 しかしこれらに関して、安倍首相は日露首脳会談の席上でプーチン大統領に向かい、単に「注視している」と伝えるだけにとどめたと、"喝"。

 日本としては、ロシアとの会合、とりわけ「2プラス2」(外務・防衛閣僚協議)などの席上で、ロシアの軍事増強や演習について、必ず正式の議題として取り上げ、討議すべきであろう。
 そもそも一体何のための首脳会談や「2プラス2」なのかと。
 もしロシア側によってそれが馬耳東風の扱いを受け続けるならば、もう一度その意義を問い直す必要が生じようと!

 プーチン大統領が、安倍首相の地元・萩を訪れた時、高まる領土問題の進展への期待に冷や水をあびせられました。
 大統領選前の国内向けパフォーマンスかとの憶測もありましたが、大統領選で勝利した後の今回の接触。
 「東方経済フォーラム」の壇上で、前提条件無しでの年内の平和条約締結提案で、ちゃぶ台返しをくらったことは、衆知のことです。
 つまり、袴田教授が指摘される通り、プーチン大統領は領土問題解決の意思はないと言ったに等しい。

 ロシアに関して造詣が深い木村名誉教授、袴田教授のご両所が、安倍・プーチンの日露関係について、考え直す必要性に面していると警告しておられるのですね。

 資源輸出頼りのロシア経済。そのなかで主力のガス田の枯渇が見え始め、極東シベリアや北極圏での新規開発を迫られている台所事情。
 日本から(勿論、中国や米国等のメジャーも)の経済支援やガス田開発投資が欲しいロシア。
 プーチンの揺さぶり外交に乗せられることなく、袴田教授の「緊張感を与える相手は、時に不快に思っても一目置く。露人は敬意を抱かない相手とは絶対に本気で交渉はしない。」とのご指摘を、安倍首相には聞き入れていただきたい。



 # 冒頭の画像は、東方経済フォーラムの全体会合での、安倍首相、習近平国家主席、プーチン大統領



  この花の名前は、ヒメカンゾウ


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中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)





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