夢のLeidi Laidi

着物と宝塚、ほぼ半々

ルーツ の、ひとつ

2014-12-14 08:45:36 | キモノ・マインド
私が最初に着物に引っかかったのは、十代後半に読んだ、これだったと思う。



孤独な夜のココア 田辺聖子 著


この短編集の最後に収められている「中京区・押小路上ル」です。

本当に「あれ?」と引っかかっただけの事なんですが、
それまで抱いていた「着物を着る」ことについてのイメージが、
「あれ?」となって、他の短編のストーリーは皆忘れたのに、
これだけ覚えていたという…。

京都生まれ京都育ちの女主人公は、ぽっちゃり体型で、
親にうるさく言われて着物を着ると「はちきれんばかりになる」。
一方、スレンダー美女の幼友達が着ると
「まるで着物の方から彼女に吸いついたようになる。
衿もともきっちりと詰まり、肩はすらりとして、裾はややすぼまり…」
と、ファッション雑誌から抜け出たようで羨ましくてならない。

主人公の叔母さんという人が着物道楽なのですが、
「着物の着付けは下手くそで、衿もとなんかいつもグサグサにゆるんでいる。
やわらかい着物が好きで、胸のまるみがすっくり出るような、だらしない着付け、
胴まわりなんかビール樽のようである」と。

そして、この叔母さんに、嫁入り支度に「一枚だけはええのん作っとおき」と、
友禅の工房に引っ張られていきます。

この工房の初老の主人が、主人公を見て
「ええ体格、してはる。これは着物が着映えして喜びますやろう」
とニッコリするのです。
「細い女の人はあきまへんなぁ。薄い肩でぴしっと着られたら、
せっかくの着物が映えまへん。
奥さんはうまいこと、着やはります。ほんで、着物も着映えします」
と、グサグサ着付けの叔母さんを褒めるのですね。

この後、主人公が工房で色とりどりの反物に息をのみ、
体に当ててうっとりする場面も楽しいですが、
私には「着物が喜ぶ」という、たっぷりとした、悠々とした着方の描写が
印象的でした。
昭和53年の刊行です。

あの頃、特に着物に興味があったわけではなかったし、
成人式の振袖を欲しいとも思わなかった(そもそも行かなかった)。

でも、着物といえばテレビや雑誌なんかで、モデルさんが着ている
シワひとつ無い、ぴしっとした形が正しいものなんだろうと
ぼんやり思っていたので、このくだりは「そういう見方があったか!」と、
結局今に至る長い年月、心に残ることになりました。
タナベさんもびっくりしはるかな。


「好きや思わはったら、着物のほうがついてきます」
と主人はにこにこして力づけるようにいう。


とーいーうーことーでー…
やっぱり、ライオン更紗…。
あ、まだボーナス未定…。



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