ニッキ-通信 ~盲導犬ニッキ-のお母さんより~

盲導犬ニッキ-と私の日常。要援護者・障害者の防災について紹介します。

盲導犬の優雅な生活  その3 おとうさんの遺稿より

2012年09月18日 | 日記
盲導犬の優雅な生活 その3 おとうさんのエッセイより

おかあさんが 一人暮らしになってから 作るようになったのが
野菜のピクルス。
キャベツ、グリーン アスパラガス、大根、セロリ、キューリ、レンコン、すいかの白い
部、カラーピーマン分を今まで 作った。
 何しろ 一人暮らしで 各種の野菜を買おうとするとどうしても 多くて 野菜たちは出番を待っているのに
おかあさんは彼らをないがしろにして 腐らせることになった。
 その頃 入りやひがし幼児園に送ろうと想って買ってきた絵本に
冷蔵庫で出番を待っているかわいそうな野菜さんのお話があった。
その絵本を読んで おかあさんは猛反省。だって かわいそうななす君ははしなびてオデコに赤い傷を付けて 冷蔵庫の野菜ケースの中で人街顔なのだ。
あの白くてふっくらとした雪国美人のダイコンさんは すっかり 痩せて 年を取ってしまった
そこで おかあさんが考えた野菜の貯蔵法。「そうだわ 。ピクルスよ。」

 それから 野菜を多めに買ってもピクルスを作るので 野菜を捨てることは無くなったスーパーにはギャバン製のピクリングスパイスなるものを売っていることも知った。。
 今日 ダンスの先生にキャペツのそれをプレゼントした。
仕事場に缶詰上体では 女先生もお料理は出来ないので。
食べて頂いたら 今度は 別のものを持ってゆきましょう。
喜んでくれたらいいけれど。

さて ここから おとうさんの遺稿の最終回。

 お父さんとお母さんは目が見えないでしょう。だからよく踏まれます。でも私は
決して怒りません。それを見てお父さんとお母さんは「教えられるね。」と話していま
した。えへん!
 最近は やたらに起こる人が増えたって おとうさんたちが話していました。私は まだ 一度も起こったことがありません。
 晩ご飯が終わるとグルーミングタイムです。盲導犬は人間社会に参加するわけです
から、毎日のブラッシングとシャンプー液で身体を拭くお手入れが欠かせません。
シャンプー液できれいに拭いてもらって お湯で落とし 最後に しっかりと
乾拭きです。全部で8工程くらいかしら。
毎日 1時間も付き合うのは大変だけど 「ニッキー」はいつもきれいだね」といってくれるので協力しています。
 洋服を着るのも毛が散らないようにするためです。だから私達は洋服をマナーコー
トと呼んでいます。
 グルーミングはベランダでして貰いますが、最初の頃は「カム」と呼ばれても行か
なかったり、寝そべったりして随分手を焼かせました。でも今はあっちを向いたりこ
っちを向いたりして、グルーミングに協力するようになりました。
 この後は歯磨きと耳の掃除です。歯磨きは 手にはめた手袋 に「チキン味」の歯磨きを付けて磨いて貰います。
もちろん歯磨きですから手が口の中に入ります。でも
絶対に噛みません。それどころかチキン味のパスタがとても美味しいので ぺろぺろ 舐め
ながら磨いて貰っています。
 耳掃除は耳の穴に水を入れます。そうするとぶるぶる身震いして、耳の中の汚れが
水と一緒に出て綺麗になります。
水分と耳の汚れはティッシュペーパーできれいに拭い取ってくれます。
 この後少し遊んで寝ます。時間は大体9時頃かしら。
仕事はどうなっているか?ですって。もちろんやりますよ。でも今は暑くてお休みの
状態です。道路が熱くて歩けません。
 お母さんは犬用の靴を何種類か買ってきて私に履かせようとしています。何しろ私
の兄弟のナサが靴を履いて歩いているという話を聞いたものですから、兄弟の私がで
きないということはないとファイトを燃やしています。でも足の裏の感触がなくなっ
て気持ちが悪いです。さてどうなることかしら。
 皆さんは盲導犬が道を知っていて使用者を連れて行くと考えていませんか?それっ
て大きな誤解です。盲導犬ができることは、左側通行、左角を見つけること、段差や
階段の前で止る事、障害物を避けることなのです。この基本的なことを活用して、
ライト、レフト、ストレートと使用者は指示を出して、盲導犬を目的地に誘導します。
例えばT字路でストレートと突き当たると、盲導犬は左側通行なので右に行きます。
左角に来たら、使用者はそこを曲がるか真っ直ぐ行くか判断して、レフト ストレー
トと支持を出します。でも私だって道を覚えます。何回か行ったお店や場所は覚えて
いて、そっちの方を向いて今日は行かないのと尋ねたりします。
でも 動物クリニックだけは絶対に教えません。だって 獣医さんが私に何をするか 信用できないんですもの。
爪なんて切られて血が出たこともあるし。
おかあさんは クリニックの前で  ウロウロしていますが私は知らん顔で 近所をクンクンしています。。
 道に迷うこともあります。そこを切り抜けるのが盲導犬歩行の醍醐味で、私となら
何とかなるとお父さんとお母さんは話していました。
 そうそう、皆さんへのお願いですが、仕事中には私に話しかけたり撫でたりしない
でください。私って人好きでしょう、だから直ぐに愛嬌を振りまいてしまって、仕事
が留守になってしまい危ないのよね。  
 それでは、ハーネスをつけた私の凛々しい姿を何時か何処かで。
お目にかかったら おとうさんやおかあさんに声を掛けてね。 終わり

 ここまでです。

 おとうさんがこれを書いたのは 丁度2年前になる。
今でもニッキーの生活の中で 基本となるところは 全く代わっていない。
代わったことと言うと ニッキの方がーがお母さんを遊ばせ上手になったかな。
ニッキーはものすごくおとうさんが好きだった。恋人のように。

 おとうさんが遂にお棺に入ってしまった時 連れてこられたニッキーは一目散に棺の傍に小走りで行った。最後のお別れだったね。

 今 ニッキーは6歳9ヶ月。
とても 素敵なパートナーです。