ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

噂の伝播 都市伝説の形成 夢じゃないんだ!

2008-08-17 | 映画
「壁男」

カメラマン仁科(堺雅人)、すなわち三次元のものを二次元に定着する人。そして、テレビ・レポーターの響子(小野真弓)、すなわちテレビ画面という平面の内側に写る人。隠喩にもならないこの恋人たちが主人公だ。
仁科の以前の個展での主題「In-Out」、そして「壁」にとらわれてのちに開こうと決意する個展の主題「Medium」。(ミディアムの複数形が「メディア」だという響子のコメントまで含め、)言葉の意味論的には実にベタではないか! 「中間」と考えようが、霊媒と置き換えようが……。


深夜の情報バラエティ番組の中の「街の噂特捜隊」というコーナーを担当する響子の許に「壁男の噂」という葉書が届く。(ここに、伏線があり、その葉書の到着を響子と同衾している仁科が夢で見ているという、軽い脅かし場面が挿入される。)話題性が持続する噂がないことに困っていた響子は、この「壁男」の噂が当りを取るという直感を得る。

放映後の反響は案の定すさまじく、次々に情報が寄せられてくる。それにしたがって、「壁男」という存在には次第に輪郭が与えられていく……。

終盤に、「壁男」の噂の仕掛け人が響子の男性アシスタント中村と、仁科の女性アシスタント遠藤のふたりであると(観客には)知らされる。恋人同士である中村と遠藤が作ったニセの噂を葉書にしたため、響子に渡したのだ。それが、噂が広がるに従ってまったく予期せぬほどの大きな存在感を備えてしまったのだった。

壁をモチーフにした写真で個展を開くと言い始めた仁科が、次第に狂気の如きものに捕らわれて、「壁男」の実在を明かすために、壁に文字と鈴を張り付け、その反応で会話しようと考え始め……。

仁科の死が語られて、その後二度ほどのドンデンがあるが……。伏線は活きていると思うけれどもどうもなぁ……。

初っ端から、壁男の主観カメラなんかもありつつ、雰囲気はあるんだが。どうにもひとに勧められるほどの作品には、なり得ていないと感じた。