性差別が問題となる紛争を解決するための制度としては,どのようなものがありますか。
性差別により労使の権利義務に関する紛争が生じた場合,労働審判 を申し立てられたり,訴訟を提起されたりするリスクがあることは,通常の労使紛争と同様です。
それに加え,性差別が問題となる紛争に関しては,事業主は苦情の自主的解決が求められていますし,都道府県労働局長による紛争解決の援助(助言,指導,勧告),機会均等調停会議による調停といった制度もあります。
性差別が問題となる紛争を解決するための制度としては,どのようなものがありますか。
性差別により労使の権利義務に関する紛争が生じた場合,労働審判 を申し立てられたり,訴訟を提起されたりするリスクがあることは,通常の労使紛争と同様です。
それに加え,性差別が問題となる紛争に関しては,事業主は苦情の自主的解決が求められていますし,都道府県労働局長による紛争解決の援助(助言,指導,勧告),機会均等調停会議による調停といった制度もあります。
女性であることを理由として賃金について男性と差別的取扱いをした場合,どのような法的リスクがありますか。
女性であることを理由として賃金について男性と差別的取扱いをした場合,労基法4条に違反しますので,使用者は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
また,民事訴訟を提起された場合,得られたであろう賃金との差額相当額の損害賠償請求を受ける可能性があります。差額の賃金請求が認められるかどうかについては,見解に争いがあり,定説はありません。
男性にのみ住宅手当や家族手当を支給し,女性には支給しないという扱いにすることはできますか。
男性にのみ住宅手当や家族手当を支給し,女性には支給しないという扱いにすることは,労働者が女性であることを理由として賃金について男性と差別的取扱いをすることを禁止している労基法4条に違反しますので,このような扱いにすることはできません。
過去に仕事の能率が悪い女性がいたことから,新たに採用する女性の賃金を一律に男性の賃金よりも低く設定しようと考えているのですが,このような取扱いをすることはできますか。
労基法4条は,労働者が女性であることを理由として,賃金について,男性と差別的取扱いをすることを罰則付きで禁止しています。
具体的に能力差があることが確認できているわけではないのに,新たに採用する女性の賃金を一律に男性の賃金よりも低く設定することは,労働者が女性であることを理由として賃金について男性と差別的取扱いをするものとして労基法4条に違反しますので,このような扱いをすることはできません。
労働審判 手続においては,当事者双方及び裁判所の都合のみならず,忙しい労働審判員2名のスケジュール調整が必要なこともあり,第1回期日の変更は原則として認められないことに十分な注意が必要です。準備不足のまま第1回期日が間近に迫っているような場合や,依頼した代理人弁護士の都合がつかない場合であっても,第1回期日の変更は原則として認めてもらえません。
第1回期日の変更が例外的に認められるのは,労働審判員の選任が完了していない時期に,第1回期日の変更について申立人側の同意を得た上で日程調整したような場合です。労働審判員の選任は,一般に,裁判所が申立書を相手方(主に使用者側)に発送してから1週間から10日程度で行われていると言われていますから,第1回期日の変更が必要な場合は,申立書が会社に届いてから1週間程度のうちに日程調整の連絡を裁判所に入れる必要があることになります。
労働審判 の勝負のポイントを一言で言うと,「第1回期日までが勝負。」となります。
答弁書の提出期限までに,どれだけ有効な証拠を集められるか,充実した答弁書を作成することができるかで,9割方勝負は決まります。第1回期日で心証の確認作業がなされ,即日結論が出るのが通常です。
労働審判手続内で当初の遅れを取り戻すのは困難で,これを本気でひっくり返そうと思ったら,訴訟でひっくり返すくらいの覚悟が必要となります。準備時間が短いので,一日も早く弁護士に相談するようにして下さい。
労働審判を申し立てられた場合における使用者側の対応として,何が一番大事だと思いますか。
労働審判 手続においては,申立書及び答弁書の記載内容から一応の心証が形成され,第1回期日でその確認作業が行われて最終的な心証が形成された後は,その心証に基づいて調停が試みられ,調停が成立しない場合は労働審判が出されることになります。
原則として第1回期日終了時までに最終的な心証が形成されてしまい,その後の修正は困難であることから,私は,
① 充実した答弁書の作成
が最も重要であり,次に,
② 第1回期日で十分な説明ができること
が重要であると考えています。
労働審判 手続では,約70%の事件で調停が成立し,解決しています。
その他,労働審判(全体の約18%)に対し異議が申し立てられないケースが約40%ありますし(18%×40%=7.2%),労働審判手続が取り下げられるケース(約7%)には手続外で和解が成立したため取り下げがなされたものも含まれると考えられますので,全体の解決率は約80%程度となるものと思われます。
過去の統計では,労働審判 手続の開催期日の回数は以下のとおりです。
0回 4.5%
1回 26.2%
2回 39.0%
3回 28.0%
4回 2.3%
労働審判は原則3回以内の期日で結論が出ることとされていますが,期日が3回以上開催された事案は全体の約30%に過ぎず,それほど多くはありません。
期日が開催されないか1回だけ開催されたものだけで約30%にも上り,2回開催された事案を併せると全体の約70%ですから,労働審判手続の期日の開催回数は,通常は1回か2回と考えていいと思います。
労働審判手続の全体像を把握するのに便利な資料を教えて下さい。
労働審判 手続の全体像を把握するのに便利な資料としては,裁判所ウェブサイトの労働審判手続に関するページ がお勧めです。
私は,依頼者に労働審判の全体像を説明する際,このページに掲載されている「~労働審判手続の流れ~」 をプリントアウトして使用することが多くあります。
東京大学社会研究所の意識調査によると,労働者側は,「とても満足している」と「少し満足している」を合わせて約60%が満足していると回答しているのに対し,使用者側は,「全く満足していない」と「余り満足していない」を合わせて半分以上が満足していないと回答しています。
労働審判 は,労働者の方が,使用者よりも,満足度が高い傾向があるようです。
労働審判利用の理由としては,どのようなものが多いのでしょうか。
東京大学社会科学研究所の意識調査によると,労働者が労働審判 を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 経済的利益
③ 社会的名誉や自尊心
④ 強制力のある解決
⑤ 自分の権利
等が多くなっています。
これに対し,使用者側が労働審判を利用した理由としては,
① 公正な解決
② 申し立てられたので仕方なかった
③ 事実関係をはっきりさせる
等が多くなっています。