弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

労働者側の事情に基づく解雇を検討する際の解雇権濫用法理のポイントを教えてください。

2016-03-10 | 日記

労働者側の事情に基づく解雇を検討する際の解雇権濫用法理のポイントを教えてください。


 労働者側の事情に基づく解雇をする場合には,解雇予告制度,個別法令による制限,当事者自治による規制(労働協約,就業規則等)のハードルに加えて,労契法16条が,①解雇 の客観的合理性,②解雇の社会的相当性を要求しています。これが解雇権濫用法理と呼ばれているものです。①では客観的類型的な見地からみた解雇事由の有無を判断し,②では①を前提に,当該解雇の個別事情を踏まえて判断します。

 まず,①解雇の客観的合理性は次の3つのステップを踏んで検討していきます。ここで注意すべきは,あくまでも普通解雇 は労働契約の債務不履行状態が将来にわたって継続することが予想される場合(将来的予測の原則)の最終手段(最終的手段の原則)であることを念頭に置くべきということです。

 解雇事由の特定

 解雇事由は以下の5つに分類できますが,裁判上は就業規則上の解雇事由該当性の有無を検討していることが多いです。

(1) 病気・負傷に基づく労働能力喪失を理由とする解雇

(2) 能力不足を理由とする解雇

(3) 職務懈怠を理由とする解雇

(4) 非違行為・服務規律違反を理由とする解雇

(5) 経歴詐称を理由とする解雇

 将来的予測の原則に基づく検討

 例えば,当該病気などが労働義務の履行を期待することができないほどの重大なものであるか,職務懈怠につき当該労働者に改善・是正の余地がないといえるのか,を検討していきます。

 最終的手段の原則に基づく検討

 を踏まえて,客観的にみて,使用者にそれでもなお雇用の義務を負わせることができるか,これができる場合には期待可能な解雇回避措置として考えられる方法及び使用者がこれを尽くしたかどうかを検討していきます。

 裁判において,解雇回避措置義務については解雇事由の重大性の程度と相関的に判断されているようです。

 次に,②解雇の社会的相当性についてですが,これは①が認められる場合であっても,

(1) 本人の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等)

(2) 他労働者の処分との均衡

(3) 使用者側の対応・落ち度

(4) 解雇事由の性格(非違行為としての重大性の程度)

などに照らして,解雇が過酷に失すると認められる場合に,解雇の社会的相当性を欠き,解雇権の濫用となり無効となるというものです。

 この点,①が認められる場合であっても,実際上は不当な動機・目的で行われていた場合には,②解雇の社会的相当性を欠くとして,解雇権濫用とされます。

 以上の通り,裁判で解雇の有効性が争われ,解雇権濫用の問題になった場合には,このようなステップで解雇の有効性を検討していきます。有効に解雇をするためには,検討すべきポイントが多くあることを理解していただけると思います。


――――――――――――

弁護士法人四谷麹町法律事務所

会社経営者のための労働問題相談サイト


解雇は個別の法令によっても制限されるとのことですが,具体的にはどのような制限があるのですか?

2016-03-10 | 日記

解雇は個別の法令によっても制限されるとのことですが,具体的にはどのような制限があるのですか?


 以下のようなものがあります。

解雇 の時期的制限

(1) 業務上の傷病による休業期間及びその後の30日間は解雇できません。

 ただし,打切補償を支払った場合,天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(除外認定が必要)は,この限りではありません。

 打切補償とは,業務上の傷病による療養開始後3年が経過しても治らない場合において,平均賃金の1200日分を支払うことを言います。

 もっとも,労災保険法により療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者は打切補償の対象外ですので,この労働者に打切補償を支払っても解雇できないので注意が必要です。

(2) 女性が産前(原則6週間)産後(原則8週間)に休業する期間及びその後30日間は解雇できません。

 ただし,天災事変などで事業の継続が不可能な場合は①(1)と同様です。

② 差別的な解雇の禁止

(1) 国籍,信条,社会的身分を理由とするもの

(2) 労働組合の組合員であること,労働組合に加入または結成しようとしたこと,労働組合の正当な行為をしたことを理由とするもの

(3) 性別を理由とするもの

③ 法律上の権利行使を理由とする解雇の禁止

(1) 労基署などに法違反などを申告したことを理由とするもの

(2) 公益通報者保護法に基づいて公益通報をしたことを理由とするもの

(3) 育児・介護休業の申し出・取得を理由とするもの

 など


――――――――――――

弁護士法人四谷麹町法律事務所

会社経営者のための労働問題相談サイト  


解雇予告制度の適用が除外される労働者を教えてください。

2016-03-10 | 日記

解雇予告制度の適用が除外される労働者を教えてください。適用除外である試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されている場合を除く)に対しては,自由に解雇することができるのですか?


 まず,以下の臨時雇用労働者に対しては,労基法上の解雇予告義務は生じません。もっとも,これらの労働者に対する解雇予告は民法の規定に基づいて行われることになります(2週間の予告期間)。

試用期間 中の者(14日を超えて引き続き使用されている場合を除く)

② 日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用されている場合を除く)

③ 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定期間を超えて引き続き使用されて言う場合を除く)

④ 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(所定期間を超えて引き続き使用されている場合を除く)

 次に,ご質問の回答ですが,試用期間中の者をはじめ,臨時雇用労働者だからといって自由に解雇 することはできません。この点,多くの使用者が,試用期間中14日以内であれば自由に解雇できると誤解しているケースが見受けられます。

 なぜ自由に解雇できないのかと言いますと,この適用除外の規定は,あくまでも解雇予告(解雇手当)を不要にするだけで,臨時雇用労働者に対しても解雇権濫用法理(客観的に合理的な理由を有し社会通念上相当であること)及び個別法令による解雇制限,当事者自治による規制(労働協約,就業規則等)が適用される以上,解雇をするためにはこれらのハードルをクリアする必要があるからです。

 したがって,試用期間中14日以内の者を客観的に合理的な理由があるかを十分に検討もせずに(実際に合理的な理由もなく),解雇してしまった場合には,解雇が無効になり紛争が生じるもととなるので注意が必要です。


――――――――――――

弁護士法人四谷麹町法律事務所

会社経営者のための労働問題相談サイト  


解雇予告制度とその例外について教えてください。

2016-03-10 | 日記

解雇予告制度とその例外について教えてください。


 まず,最初に確認をしますが,たしかに民法上は,期間の定めのない雇用契約は2週間の予告期間を置けばいつでも解約できるとされていますが,使用者がする解雇 については労基法による規制が適用されます。それが解雇予告制度です。

 ただし,労基法の適用が除外される者(例えば,日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用されている場合を除く))に対しては,解雇の予告は民法上の規定によって行われます。

 解雇予告制度は,少なくとも30日前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払う必要があるというものです。この予告の日数は,1日分の平均賃金を支払った日数だけ短縮できます。

 次に,以下のような例外的な場合には,予告なく即時解雇ができます(予告手当の支払が不要)。

① 天災その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

② 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合

 「労働者の責めに帰すべき事由」とは,労働者の非違行為が,解雇予告制度の保護を否定されてもやむを得ないと認められるほど重大・悪質な場合に限られています。労働者の帰責事由に基づく解雇が全てこれに該当するわけではありません。

 これら①②の場合には,労働基準監督署長の認定(除外認定)を受ける必要があります。

 除外認定は厳しく運用されているので,認定を受けるのは簡単ではありませんが,使用者は労基署が除外認定できるだけの客観的かつ具体的な資料を収集し提出する必要があります。

 通達では,②労働者の責めに帰すべき事由について,以下の事由を挙げています。

 事業場内における盗取,横領,傷害等刑法犯に該当する行為(原則としてきわめて軽微なものを除く)

 他の事業へ転職した場合

 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し,出勤の督促に応じない場合

 出勤不良又は出欠常ならず,数回にわたって注意をうけても改めない場合など

 以上が解雇予告制度についての説明ですが,最後に注意すべき点があります。それは,解雇予告手続さえしっかりと踏んでいれば解雇が有効になるわけではないということです。

 解雇を有効なものとするためには,解雇権濫用法理や個別法令による解雇制限,当事者自治による規制(労働協約,就業規則等)をクリアする必要があります。


――――――――――――

弁護士法人四谷麹町法律事務所

会社経営者のための労働問題相談サイト


一般的に,労働契約が終了する原因にはどのようなものがありますか?

2016-03-10 | 日記

一般的に,労働契約が終了する原因にはどのようなものがありますか?


 労働契約が終了する原因には以下のものがあります。

解雇

(1) 普通解雇

 ア 労働者側の事情に基づく解雇

 イ 整理解雇

(2) 試用期間 解雇

(3) 懲戒解雇

② 辞職

③ 合意退職

④ 雇止め

⑤ 定年

⑥ 休職期間の満了

⑦ 死亡


――――――――――――

弁護士法人四谷麹町法律事務所

会社経営者のための労働問題相談サイト