まず,最初に確認をしますが,たしかに民法上は,期間の定めのない雇用契約は2週間の予告期間を置けばいつでも解約できるとされていますが,使用者がする解雇 については労基法による規制が適用されます。それが解雇予告制度です。
ただし,労基法の適用が除外される者(例えば,日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用されている場合を除く))に対しては,解雇の予告は民法上の規定によって行われます。
解雇予告制度は,少なくとも30日前に解雇の予告をするか,30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払う必要があるというものです。この予告の日数は,1日分の平均賃金を支払った日数だけ短縮できます。
次に,以下のような例外的な場合には,予告なく即時解雇ができます(予告手当の支払が不要)。
① 天災その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
② 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合
「労働者の責めに帰すべき事由」とは,労働者の非違行為が,解雇予告制度の保護を否定されてもやむを得ないと認められるほど重大・悪質な場合に限られています。労働者の帰責事由に基づく解雇が全てこれに該当するわけではありません。
これら①②の場合には,労働基準監督署長の認定(除外認定)を受ける必要があります。
除外認定は厳しく運用されているので,認定を受けるのは簡単ではありませんが,使用者は労基署が除外認定できるだけの客観的かつ具体的な資料を収集し提出する必要があります。
通達では,②労働者の責めに帰すべき事由について,以下の事由を挙げています。
事業場内における盗取,横領,傷害等刑法犯に該当する行為(原則としてきわめて軽微なものを除く)
他の事業へ転職した場合
原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し,出勤の督促に応じない場合
出勤不良又は出欠常ならず,数回にわたって注意をうけても改めない場合など
以上が解雇予告制度についての説明ですが,最後に注意すべき点があります。それは,解雇予告手続さえしっかりと踏んでいれば解雇が有効になるわけではないということです。
解雇を有効なものとするためには,解雇権濫用法理や個別法令による解雇制限,当事者自治による規制(労働協約,就業規則等)をクリアする必要があります。
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