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弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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労働者代理人から解雇の撤回は認められないし,賃金請求権も認められないと言われたら

2014-06-29 | 日記

問題社員を解雇したところ,労働者側から不当解雇との主張がなされたので,解雇を撤回して就労を命じたところ,労働者代理人から,東京高裁平成21年11月16日決定(判タ1323号267頁)を引用の上,解雇の撤回は認められないと主張され,しかも,民法536条2項により賃金請求権も失われないから賃金を払え,とも言われています。この場合の法律関係をどのように考えればよろしいでしょうか?

 問題社員 解雇 したところ,労働者側から不当解雇との主張がなされたので,解雇を撤回して就労を命じた場合に,労働者代理人から,東京高裁平成21年11月16日決定(判タ1323号267頁)を引用の上,解雇の撤回は認められないと主張され,しかも,民法536条2項により賃金請求権も失われないから賃金を払え,といった請求がなされることがあります。
 使用者が職場復帰して仕事して下さいと言っているのに,解雇の撤回は認められないと主張して就労を拒絶した挙げ句,民法536条2項により賃金請求権も失われないなどと主張してくるのですから,開いた口がふさがらない話ですが,この場合の法律関係はどう考えればいいのでしょうか。
 まず,「解雇の撤回は認められない。」という主張は,労働者の職場復帰を要求すべき立場にある労働者代理人の主張すべきことではないと思いますが,純粋に理屈だけで考えれば,間違いとは言えません。
 解雇は使用者による一方的な意思表示ですから,解雇の意思表示が労働者に到達した時点で効力が発生しています。
 効力が既に発生している以上,一方的な「撤回」を行うことはできず,その法的効力を遡及的に失わせるためには労働者の同意が必要となるというのが,論理的帰結です。
 では,民法536条2項により賃金請求権が失われないという主張はどうでしょうか?
 解雇が無効と判断された場合に民法536条2項により賃金請求権が失われないのは,労働者の就労義務が使用者の就労拒絶によって履行不能となっているからです。
 使用者が,解雇は撤回して就労を命じた場合は,使用者による就労拒絶がなく,いわば労働者の都合で欠勤したのと同じ状況にありますから,民法536条2項の適用場面ではありません。
 したがって,使用者が就労を命じているにもかかわらず,労働者がこれを拒絶して就労しない場合には,特段の事情がない限り民法536条2項は適用されず,対応する期間に対する賃金請求権は発生しないことになります。


社員が行方不明の場合に解雇することはできるか

2014-06-29 | 日記

社員が行方不明の場合に解雇することはできますか。

 長期間の無断欠勤は,普通解雇事由及び懲戒解雇事由に該当するのが通常ですので,行方不明のため長期の欠勤が続いている場合には,解雇 を通知することができれば,解雇は有効と判断される可能性が高いところです。
 しかし,いくら捜しても社員が行方不明の場合は,どこ宛に解雇通知書を発送すればいいのかといった解雇を通知する方法が問題となります。
 解雇の意思表示は,解雇通知が相手方に到達して初めてその効力を生じるため(民法97条1項),有効無効以前の問題として,解雇通知が行方不明の社員に到達しなければ解雇の効力を生じる余地はありません。
 社員が自宅で生活しており,単に出社を拒否しているに過ぎないような事案であれば,社員の自宅に解雇通知が届けば社員の支配権内に置かれたことになりますから,実際に社員が解雇通知を読んでいなくても,解雇の意思表示が到達したことになります。
 しかし,会社が把握している自宅が引き払われているなど本当の意味での行方不明でどこに住んでいるのか皆目見当がつかない場合は解雇通知を発送すべき宛先が分かりません。
 会社が把握している社員の自宅が引き払われてはいなくても,長期間にわたり社員が自宅に戻っている形跡が全くないような場合は,社員の自宅に解雇通知が到達したとしても社員の支配権内に置かれたと評価することはできませんので,解雇の意思表示が社員に到達したことにはならず,解雇の意思表示は効力を生じません。
 電子メールによる解雇通知は,行方不明の社員からの返信があれば,通常は解雇の意思表示が当該社員に到達し,解雇の効力が生じていると考えることができるでしょう。
 ただし,電子メールに返信があるような事案の場合,そもそも行方不明と言えるのか問題となる余地がありますので,解雇権を濫用したものとして無効(労契法16条)とされないよう,解雇に先立ち,行方不明の社員と連絡を取る努力を尽くす必要があります。
 他方,行方不明の社員からメール返信がない場合は,解雇の意思表示が到達したと考えることにはリスクが伴いますが,連絡を取る努力を尽くした上で,リスク覚悟で退職処理してしまうということも考えられます。
 行方不明の社員の家族や身元保証人に対し,行方不明の社員を解雇する旨の解雇通知を送付しても,解雇の意思表示が到達したとは評価することができず,解雇の効力は生じないのが原則です。
 兵庫県社土木事務所事件最高裁第一小法廷平成11年7月15日判決では,行方不明の職員と同居していた家族に対し人事発令通知書を交付するとともにその内容を兵庫県公報に掲載するという方法でなされた懲戒免職処分の効力の発生を認めていますが,特殊な事案であり,射程を広く考えることはできません。
 通常,家族に解雇通知書を交付し社内報に掲載したといった程度で,解雇の意思表示が到達したと考えるのは困難です。
 完全に行方不明の社員に対し,解雇を通知する場合は,簡易裁判所において公示による意思表示(民法98条)の手続を取る必要があります。
 公示による意思表示の要件を満たせば,解雇の意思表示が行方不明の社員に到達したものとみなしてもらうことができます。


裁判所で解雇が無効と判断された場合,不就労日などは出勤日数・全労働日に含まれるか

2014-06-29 | 日記

裁判所で解雇が無効と判断された場合の解雇日から復職日までの不就労日などは,労基法39条の出勤日数・全労働日に含まれますか?

 裁判所で解雇 が無効と判断された場合の解雇日から復職日までの不就労日などが労基法39条の出勤日数・全労働日に含まれるかについては,行政通達(平成25年7月10日付け基発0710第3号)が存在します。
 同通達は,八千代交通(年休権)事件最高裁第一小法廷平成25年6月6日判決(労判1075号21頁)を踏まえて出されたものということもあり,今後の裁判実務においても概ね同通達の解釈に沿った判断がなされるものと思われます。
 同通達の概要は以下のとおりです。
1 年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい,各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。
 したがって,所定の休日に労働させた場合には,その日は,全労働日に含まれないものである。
2 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は,3に該当する場合を除き,出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとする。
 例えば,裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や,労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように,労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる。
3 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても,次に掲げる日のように,当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは,全労働日に含まれないものとする。
(一) 不可抗力による休業日
(二) 使用者側に起因する経営,管理上の障害による休業日
(三) 正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日


解雇が無効と判断された場合,就労を拒んでいた所定労働日を出勤日数に参入する必要はあるか

2014-06-29 | 日記

解雇が無効と判断された場合,労基法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たり,解雇により労働契約が終了していることを理由として就労を拒んでいた所定労働日を出勤日数に算入する必要がありますか?

 解雇 が無効と判断された場合,労基法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たり,解雇により労働契約が終了していることを理由として就労を拒んでいた所定労働日を出勤日数に算入する必要があるかどうかについては,最高裁判例が存在します。
 八千代交通(年休権)事件最高裁第一小法廷平成25年6月6日判決(労判1075号21頁)は,以下のように判示し,そのような日は,労基法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきとしています。
 「法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は,法の制定時の状況等を踏まえ,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと,前年度の総暦日の中で,就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは,不可抗力や使用者側に起因する経営,管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として,上記出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。」
 「無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり,このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから,法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。」


能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは,どのように判断すればいいか

2014-06-29 | 日記

能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは,どのように判断すればよろしいでしょうか?

 能力不足を理由とした解雇 が認められるかどうかは,基本的には労働契約で求められている能力が欠如しているかどうかによります。
 単に思ったほど能力がなく,見込み違いであったというだけでは,解雇は認められません。
 長期雇用を予定した新卒採用者については,社内教育等により社員の能力を向上させていくことが予定されているのですから,能力不足を理由とした解雇は,例外的な場合でない限り,認められません。
 一般的には,勤続年数が長い社員,賃金が低い社員は,能力不足を理由とした解雇が認められにくい傾向にあります。
 採用募集広告に「経験不問」と記載して採用した場合は,一定の経験がなければ有していないような能力を採用当初から有していることを要求することはできません。
 特定の能力を有することが労働契約の条件とされて高給で採用された社員,地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には,解雇が認められやすい傾向にあります。
 ただし,解雇が比較的緩やかに認められる前提として,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので,労働契約書等の書面に明示しておくべきです。
 労働契約書等に明示されていないと,当該契約で求められている能力の内容,地位を特定して採用された事実の主張立証が困難となることがあります。
 能力不足を理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには,能力不足を示す「具体的事実」を立証できるようにしておく必要があります。
 抽象的に「能力不足」と言ってみても,あまり意味はありません。
 何月何日に能力不足を示すどのような具体的事実があったのか,記録に残しておく必要があります。
 「彼(女)の能力が低いことは,周りの社員も,取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
 会社関係者の陳述書や法廷での証言は,証拠価値があまり高くないため,紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと,解雇の有効性を基礎付ける事実を主張立証するのには困難を伴うことが多いというのが実情です。


勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている問題社員を解雇する際の注意点

2014-06-29 | 日記

「仕事を休みます。」とだけ連絡してきて,勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている問題社員を解雇する際の注意点を教えて下さい。

 勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている社員を解雇 する場合は,正当な理由なく欠勤を続けていることを解雇理由とするのが通常です。
 したがって,この解雇の有効性を判断するにあたっては「欠勤」の有無,日数,欠勤の理由等が問題となります。
 ここで最初に問題となるのが,「仕事を休みます。」との連絡が,年次有給休暇の取得申請なのか,欠勤の届出なのかという点です。
 何年も勤務を続けている社員の場合,年次有給休暇(労基法39条)が何日もたまっていることがあります。
 何日も欠勤したことを理由として解雇したところ,年次有給休暇取得の申請をしたのだから欠勤しておらず解雇事由が存在しないとか,欠勤した日はあるにしても年休を取得した日数を差し引けばわずかな欠勤日数なのだからこの程度の欠勤日数で解雇するのは解雇権の濫用(労契法16条)で無効であるといった主張がなされるリスクが残ることになります。
 もちろん,所定の用紙を用いて年次有給休暇取得を申請するルールになっているにもかかわらず,単に「休みます。」と連絡しただけでは年次有給休暇取得を請求したとはいえないと解釈すべきという主張にももっともな理由があるところです。
 しかし,会社の中には,風邪などで欠勤した場合に,年次有給休暇を使ったことにして欠勤扱いせず,欠勤控除しないのが慣行となっている会社も数多くあるところです。
 そのような会社で,年次有給休暇が10日も20日も残っている社員が休むと連絡してきた場合,その連絡には年次有給休暇取得請求の趣旨が含まれていると考えることもできそうです。
 また,社員本人が年休を取得していると考えていたのであれば,それが欠勤と評価されることが後から判明したとしても,会社が当該社員の意思確認をそれなりにしていない限り,何ら理由のない欠勤とは悪質性の程度が大きく異なると言わざるを得ません。
 事前に書面で申請しない限り年次有給休暇の取得は一切認めないというルールを作成し,現実にそのルールを例外なく適用していて,全ての社員がルールをよく理解している会社であれば話は別かもしれませんが,貴社においてそのような運用は現実的でないというのであれば,別の対処方法を考えた方が賢明と思われます。
 私が顧問先企業にお勧めしているアドバイスの中には,「欠勤を理由に何らかの処分をしたいのであれば,まずは年次有給休暇を使い切らせて下さい。」というものがあります。
 年次有給休暇が残っていれば,年休取得なのか,欠勤なのかの問題が残りますが,年次有給休暇を使い切らせてしまえば,年休を取得したという主張を完全に封じることができます。
 また,会社とトラブルになっている社員の中には,退職すること自体はやぶさかではないが,年次有給休暇を使い切らずに退職してしまうのだけが心残りだ,もったいない,と考えている者も多くいます。
 心残りとなっていることを解消してやれば,紛争解決に大きく近づいていくことになりますので,年次有給休暇を使い切らせるというのは,実際上も紛争解決に役に立つことになります。
 くれぐれも,「こんな問題社員に年休取得までさせたら,踏んだり蹴ったりで,会社ばかりが一方的に損をすることになるし,迷惑がかかっている他の社員が納得しないから,年休取得を認めるわけにはいかない。」などと考えて,年休取得を妨げるようなことはないようにして下さい。
 そのような不合理な対処をしたら,労働審判などにおける解決金の相場が無駄に上がってしまう可能性が高くなります。
 具体的なやり方としては,所定の申請用紙を本人宛書留郵便などで郵送し,年次有給休暇の取得なのか,欠勤なのか,明確に記載して返送するよう伝えれば足りますので,難しい手続ではありません。
 年次有給休暇が何日も残っている社員であれば,まず間違いなく,年次有給休暇を取得する旨記載して返送してきます。


問題社員の解雇で苦労しないようにするためのポイント

2014-06-29 | 日記

問題社員の解雇で苦労しないようにするためのポイントを教えて下さい。

 私の印象では,問題社員 解雇 で苦労することになった原因のかなりの部分は,会社経営者が多忙であることなどから,採用活動にかける手間や費用を惜しんだり,人手不足の解消を優先させたりして,問題社員であるかもしれないと感じていながら,採用してしまったことにあります。
 確かに,問題を起こすような応募者だとは全く思わなかったのに,採用してみたら問題ばかり起こして困っているという事案もないわけではありません。
 事業を始めたばかりで経験が足りず,人を見る目がないといった特別の事情があるのであれば,問題社員とは夢にも思わなかったという話にも一定のリアリティがあります。
 しかし,弁護士に相談しなければならないほどの事案は,採用時にあまりいい印象を持たなかった応募者を採用してみたところ,やはり問題社員だったという事案が,かなりの割合を占めています。
 応募者からだまされて採用してしまったというより,問題があることには気づいていたものの,採用の手間や費用を惜しんだり,人手不足の解消を優先させたりして自分を偽り,問題がある人物を採用することを自分で正当化して採用してしまったという表現の方が適切な事案が多いのです。
 あまり深く考えていないと,「実際に使ってみなければ良い社員かどうか分からない。」といった一般論に説得力があるように聞こえるかもしれませんが,実際には「良くない社員だということは採用の時点から分かっていた。」ということが多いのです。
 経験豊富な会社経営者の目をごまかすことは,容易ではありません。
 会社経営者が,会社にとって魅力的な人物だと判断できれば採用する,魅力的だと思わなければ不採用にするといった,当たり前の方針を貫いていただければ,採用で失敗するリスクは相当下がるはずです。
 採用に値する積極的な理由がない場合には,不採用とすることをお勧めします。
 採用することに積極的な理由が必要なのであって,不採用とすることに積極的な理由が必要なわけではないのです。
 「類は友を呼ぶ。」ということわざのとおり,部下に採用を任せた場合,その部下は,仕事に関し,自分と似た価値観,ものの考え方を持った人物を採用する傾向にあります。
 会社経営者を中心とした結束が生命線の中小企業の場合は,会社経営者自らが採用活動に深く係わるべきと考えますが,仮に,部下の誰かに採用を任せることになった場合は,会社経営者の会社経営に協力的で人間性も優れている人物に採用を担当させるべきと考えます。