弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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残業代を基本給とは別に支払う方法と残業代込みということで基本給を支払う方法

2012-03-24 | 日記
Q92 残業代を基本給とは別に支払うよりも,残業代込みということで基本給を支払った方が,基本給の金額が高く見えて,社員募集の際に体裁がいいのではないでしょうか?

 それはそうかもしれませんが,残業代は,残業代以外の賃金とは別に支払うべきものであり,残業代残業代以外の賃金との内訳が判別できないと残業代の支払があったとは認められませんので,残業代不払を理由とした残業代請求を受けないようにするためには,残業代の金額と残業代以外の賃金の内訳を明らかにする必要があります。
 残業代の金額と残業代以外の賃金の金額を明らかにしてしまえば,結局,残業代を除いた基本給の金額がはっきりしてしまいます。
 採用された社員が騙されたと感じるような採用募集広告では,結局,すぐに辞めてしまって定着しませんので,正直にありのままの労働条件を説明し,正攻法で対処しないと,根本的な解決にはなりません。

弁護士 藤田 進太郎

固定残業代の支給名目

2012-03-24 | 日記
Q91 固定残業代の支給名目はどのようなものがいいでしょうか?

 固定残業代を支給する場合は,基本給の中に一定の金額・時間分の残業代が含まれる扱いにしたり,営業手当等の名目で一定額を支給する扱いにしたりするよりも,「残業手当」等,それが残業代であることが給与明細書の記載から直ちに分かるよう記載しておくといいと思います。
 残業代であることが明白な名目で支給することにより,労働者の納得も得られやすくなり,それが残業代の支払であるか否かといった論争を回避することができます。

 他方,残業代の支払かどうか一見して分からない名目で残業代を支給した場合は,それが残業代の支払であることが労働条件通知書,賃金規定等に明記されていないと,労働者の理解を得るのが難しくなり,訴訟でも残業代の支払として認められない可能性が高くなります。
 特に,給与明細書の「時間外手当」等の欄が空欄となっていたり,0円と記載されていたりした場合は,残業代を全く支払っていないと受け取られても仕方ないのではないかと思います。
 わざわざ,紛争を招くような規定の仕方をする必要はないのではないでしょうか。

 どういうわけか,残業代だと分かる形での賃金を支給を嫌がり,残業代とは分からないような名目での手当の支払の形を取りたがる経営者が,それなりの割合で存在します。
 残業代請求を受けると,「業務手当」「特殊手当」などといった一見して残業代とは分からない手当が残業代だと説明するのですが,それらの手当が残業代だということが賃金規定や労働条件通知書に記載されているかどうか聞いてみると,どこにも記載されていないという答えが返ってくるケースは珍しくありません。
 かえって,賃金規定では,それらの賃金は基準内賃金に分類され,勤続年数や技能に対して支払われる手当との説明がなされていたり,残業代の計算式の基礎にも算入されていたりすることも多いところです。
 このような定め方をすれば,残業代の請求を受ける可能性が高くなりますし,訴訟でもこの論点では負けてしまうということを,よく理解しておくべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎