パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

OECD対中環境政策レビュー

2006-11-11 23:55:47 | 環境ネタ
 一昨日の話ですが、OECDのWorking Party on Environmental Performance(環境保全成果ワーキングパーティー)*が初の対中環境政策レビューのための会合を8-9日行った(北京)とかで、その成果がまとめられています→ENVIRONMENTAL PERFORMANCE REVIEW OF CHINA CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS (FINAL)OECDの環境トピックのHPによれば、正式リリースは来年春とか。ちなみに報道ぶり→OECD 初の環境レビューで中国に苦言(Yahoo,産経)ちなみになぜか「苦言」となってますが、redommendation(勧告)です。ってどっちが日本語の語感的に強いんでしょう
 *記憶が正しければand組織改変してなければEPOC(環境政策委員会)の下部組織。
それにしてもOECDがメンバー国以外に出かけていってレビューしてるなんて知らなかったというか、さすが巨大国際官僚機構、よっぽど存在意義探しに躍起なのか、OECDの違う部署がかわるがわる同じ国をレビューするのよりもよっぽど生産的なことですね。

 んで、勧告は51もあるそうなんですが、OECD事務次長のスピーチで4つほどハイライトしていて、
環境政策実施上のギャップを埋めるため、
 ○地方政府指導者に環境保全成果により責任を持たせること
 ○SEPA(国家環境保護総局)を庁(Agency)から省(Ministry)に昇格させること
 ○環境目的達成のため市場メカニズムの活用を拡大すること
 ○環境向け資金を増額・多様化すること
ってことだそうで。ちょっと驚いたのは2つ目で、イヤどう驚いたかというと、中国でも外圧を対内圧力に使うことがあるのかなぁ~ということ。

 ちょっと話が飛んでいることは自覚してるので軽く解説すると、そもそもこういう勧告は事前に被レビュー国と交渉を済ませるもので、今回のテキストも中国政府とすり合わせをして合意されたものだということはテキストの表紙にバッチリハッキリ書いているわけです。
 These Conclusions and Recommendations have been approved by all the Delegations of the OECD Working Party on Environmental Performance, including the Chinese Delegation, at its meeting (Beijing, 8-9 November 2006).
(この結論及び勧告は、OECD環境保全成果ワーキングパーティの全ての代表団(中国代表団を含む。)により承認された(北京、2006年11月8-9日)。)
だから、中国としてどーしてもイヤなものは書かれていないハズで、書いてあってもまぁ神棚に飾れるぐらいのありがたーい曖昧さに抑制されていることが普通です。ところが「SEPAを省に昇格させろ」、とまでハッキリ具体的な事柄が含まれているとなると、1)実施する方向 又は 2)そもそもこんな勧告なんか相手にしない の何れかの可能性しか考えられないわけです。後者の可能性も大有りなんですが、仮にSEPAなりに実施する意向があればパクっと食いついて錦の御旗の一つに加えるって行動をとることも十分あるハズなんですね。官僚組織は一般に何かしらキッカケがないと変わりにくい(キッカケがあっても変わりにくい)ものでそのキッカケに持って来いとこのOECDの勧告を利用したってことはなかろうか(・ ・?) まぁ実施する方向であっても既に決定済みの方針の権威付けってこともあるんでしょうが(注)。 いや、中国で、と言ったのはこの手の外圧利用に走るお下品な方々が分野を問わず目につくわけですが それはヤッパリ禁じ手だろうというか、百歩譲って邪道だろうというか、そういう点ではアメリカを見習ってほしいという気さえする(外圧なんてほとんど効きませんから)。

 ちなみに。スピーチをしたOECD事務次長はMr. Kiyo Akasakaとあって、ググると外務省出身で元国連大使の赤阪清隆氏らしい。田邊大使の下京都会議で頑張られた方(05年3月の温暖化講演録)。ご活躍今後も期待します。

注:追記 11/12
 今回は既に決定済みの方針だったようで(コメント欄参照)、未決定事項の対内圧力の一つとしての外圧利用という妄想した内容とは違うみたいです。権威付けに中国側(もっというとSEPA)が利用したのか、逆に成果を出したいOECD側の足許を見て「書くならご勝手に」だったのか分かりませんが、やっぱり一筋縄でいく相手じゃないってことでしょうか