パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

IWCに代わって包括的な漁業管理機関はいかが?

2007-06-08 22:32:56 | 環境ネタ
 農水省のHPで第59回国際捕鯨委員会(IWC)年次会合について(6/5)がアップされてて、結果概要で
 (1)会合全般
 今次総会においては、現時点ではIWC正常化の可能性が見込まれないことが明らかとなったため、今後、我が国のIWCに対する対応を根本的に見直す可能性が出てきたことを明言。その際、国内関係者から強い要請のある①IWCからの脱退、②IWCに代わる新たな国際機関の設立、③沿岸小型捕鯨の自主的な再開等を例示。
とあるのを見てなんですが(外務省お得意の概要と評価がアップされないのはなぜだ)、前々から捕鯨ネタの紛糾で違和感を感じているのは、結局IWCで鯨の持続的利用の話をしてもピンと来てくれないのはIWCが鯨しか扱わないからじゃないか(だから鯨エクストリームな人の意見でも通ってしまう)と思ってるからで、もっというと国際漁業の条約や国際機関がこんな具合にfragmentedで鯨は鯨、マグロはマグロってな具合の発想からは海洋生態系全体の持続利用っていう発想からはちょっと遠いんじゃないかと思ってるからなんですけど。だからIWCから脱退して新国際機関設立ってときにまた鯨スペシフィックだと鯨エクストリームな人の奇妙さが露わになることはなくって結局また繰り返しじゃないのという気がする。だからIWCに代わって包括的な漁業管理機関はいかがですかと思うのですけど。

 まぁ、本音を言うと捕鯨行政に使ってるリソースを地場漁業振興に使ってほしいという気がしますけどねぇ。獲ってスグに食べる魚が一番美味しいのに決まってるじゃーん。ウソだと思うならびんび家に行くがいいというか(ローカルでごめんなさい、最近人が集まり過ぎてピカピカになっちゃったって本当?)、上京したとき驚いたのがまともな魚がないこと。北海道や塩釜で食べたのも美味しかったので地域比較はさておき、イタダキさんから買った魚を食べてたのは考えてみれば物凄く幸せなことで、東京だと、築地まで行けば別だけど、そこから時間を置いてると魚の味はもう死んじゃうに等しいというか。でもコレを言い出すと、東京湾の魚なんか食べる気がしないという話になって、東京湾の水が汚いせいになって、結局環境ネタに跳ね返るんですけどね。

 国際ネタに戻って包括的な管理漁業ができればいいんでしょうけど、現実的になってそんなものがすぐできるかというと、政治的に厳しいだろうしサイエンスも追いつかないだろうし、少なくともすんなりとそういうものが軌道に乗る可能性はほぼゼロなわけです。にも関わらずなぜそんなことを考えるのかというと、鯨が可愛いから捕鯨はけしかららん的なHappy Feet並みにナイーブなアングロ・サクソン的意見は論外だし、逆に鯨食は日本古来の伝統文化なんだから捕鯨は認められるべきだという荒っぽい意見(高知や和歌山なら分かるけど。少なくとも南極海に出かけて捕鯨するのは伝統文化じゃない)も日本の主張ではなく、なのに持続可能な漁業という、国際捕鯨取締条約から見ても(注:IWCのHPによれば適切な鯨資源の保護とそれによる鯨産業の秩序ある発展が目的)、国連海洋法条約から見ても(例えば119条、公海の漁獲は基本的に自由だが最良の科学的証拠に基づいて最大持続生産量を実現するよう漁獲高を決定すべし)、至極真っ当な主張がなぜに通らないのかなーという疑問があるのであって、何となくですが、捕鯨がunethicalだという意味不明な発想があるのに加えて(Whaling Diplomacyって本が詳しく議論してるらしい、読んでないけど)、外から見ると言ってることとやってることが違うんじゃないんですか的な不信感があるような気がするんですね、日本の漁業&魚の消費に対して、勝手な想像ですけど。日本人が魚を食べまくって世界中の魚が大変だよー的なステレオタイプ(典型的な例→これ)があって、実際いっぱい輸入してるじゃんか、取り締まりも甘いじゃんか的な懸念があるんじゃないかと。確かにいっぱい食べてますけど(世界の3割ぐらいとFAOが推計してると聞いたことがあるけど???)、日本食が流行ってみんながスシを食べだして中国人も豊かになって漁獲量が増えていく責任をかぶせられてはたまらんわけで、だからってイジメられてたまらん的な発想じゃなくって、歴史的に見て最大の貢献国の一つのイギリスが温暖化政策に熱心になったみたいな勢いで日本が漁業資源管理・海洋生態系保護に熱心になりませんかねーという期待を抱いちゃうわけですけど。せめて違法漁獲輸入禁止措置ぐらい作って(WTO通報手続は面倒くさいこと間違いないが)、各国の適法証明を輸入に際して求めるぐらいのことはやってもいいんじゃないか、本気で持続可能な漁業をやるんですという意気込みを見せるなら(同時に途上国狙い撃ちと思われないような漁業支援も必要になるでしょうけど)。

 なんかIWCの話から妄想が膨らんですみませんけど。違法漁獲輸入禁止制限のついでですが、森林ネタで違法伐採木材輸入制限に最も熱心だったのは誰あろう故松岡農水大臣でした。確か国のグリーン購入法で違法伐採木材は使いませんみたいなことになったんじゃなかったか(記憶が激しく曖昧)。保護主義的な色彩があることは否めませんが、消費国としての日本の責任を考えるという視点は非常に重要だったと思います。いろいろあるのでしょうが、ご冥福をお祈りします。

ソーラー・クッカー

2007-05-04 23:38:33 | 環境ネタ
 今週・来週とわりと大き目の環境の会議を国連でやってます(毎年この時期)。そういうときには会議参加者目当てにサイド・イヴェントだったりブース展示だったり情報が集まってて仮に会議自体が面白くなくてもいろんな情報が集まって便利というのは間違いない。もっとも特にブースの展示は大して目新しいと思うことはあんまりないのですが、これ↓は面白いと思った。(注:写真はHPから)
   
ソーラー・クッカー、太陽熱で調理しちゃいます。Solar Cookers Internationalがヒッソリと展示してたのですが、恥ずかしながら知りませんでした。いや、これを日本で使うとエコしてますな自己満足的要素の方が強くなると思うのですが、(後進)途上国にとっては完全な実用品かつ即戦力ですよね、これ。いまだに20億人以上が電気・ガスのない暮らしで薪を燃やして料理をしていて、しかもというか大抵女性の役割になっていて重労働この上ないわけですよ。室内空気汚染の元でもあるし、薪の取りすぎは森林破壊の原因にもなる。かといって送電網など援助なしに作れるハズもなくLPGを運搬するにも島嶼国や山岳国だと大変。ソーラーや小規模風力発電がそういう国に人気がある理由でもあるわけですが、ちょっと初期投資が重い。でもこれならもって行けばその場で使えて、よく問題になるメンテナンスも簡単で、お日様がある限りタダで使えるのでランニング・コストもない。
 
 というわけで援助プロジェクトにもってこいということで、いろいろ使われているよう。せめて日が照った日は薪を使わないで料理できれば随分楽になるだろうし(昼と夕方2食分)、井戸水の殺菌もできるから衛生面にも効果抜群のハズ。
 
ちなみに箱型とかパラボラ型とか、保温容器と組み合わせたりいろいろあるみたい(ここ詳しい)。往々にしてメンテできない最新設備よりも、ちょっとアナログな即戦力の方が実態に即してることがありますが(巨大灌漑施設よりも井戸の方がいいとか)、これもそうなるかもしれませんね(アレ、もうなってますか)。

PlaNYC 2030; A Greener, Greater New York

2007-04-28 23:52:52 | 環境ネタ
 事前に情報が結構漏れたりしてた上にアースディの正式アナウンスから一週間近くたってしまいましたが、チラッと読んでみました、PlaNYC 2030。ブルームバーグNY市長が任期残り約1000日の間のプライオリティとしてまとめた2030年を見越した"Greener, Greater New York"のための127もの提言を盛り込んだプラン。
   
 感想はぁ~、インプレッシブ(ダースベーダー@Episode V風)。住宅、公園、汚染地(Brownfields)、水質、水系統、交通、エネルギー、大気、温暖化ともー盛りだくさんで一言にできないのであんまり細かく触れませんが(っていうほど読んでもいないし)、写真も豊富でいかにもヤラセ!?なコラムがあったりでとーっても読みやすい。冒頭のこんなくだりも面白いというか。
 Moving to New York has always been an act of optimism. To come here you must have faith in a better future, and courage to seek it out; you must trust the city to give you a chance, and know that you'll take advantage when it does. You must believe in investing in your future with hard work and ingenuity. You must, in short, believe in accepting a challenge.
 This Plan is offered in that spirit.
(ニューヨークに来ることはいつだって前向きなことでした。ここに来るには、より良い未来を信じて、それを求める勇気が必要です。この街がチャンスをくれると信じて、それを掴むと知っていなければいけません。厳しい努力と工夫で将来のために頑張らねばなりません。要するに、自信を持って挑戦する立場に身を置かねばなりません。
 このプランはそんなスピリットで提案されます。)
 なんか格好いい気がする スッカリのせられてしまいましたが、一番人目を引いているのはやっぱり!?ロードプライシング提案ですねぇ。86th以南のマンハッタンに入る車に8ドル(だったっけ(・ ・?))取るという提案で、大規模なのはシンガポールが始めてロンドンがマネしてかなりインパクトがあってとうとうNew Yorkにも来ましたねぇ。環境派の中でも例えばこの間のイベントの時になかなかの演説をしていた下院議員Anthony Weinerは「これ以上7番線が混むことなんて想像できるか」みたいなことを言って反対してたし(確かにちょっと考えたくない)、とあるMLでも対象地域外のハーレムが逆に渋滞になってただでさえ喘息罹患率が高いのに・いやいや渋滞が増えるとは限るまいみたいな議論が起きたりで、まぁ少なくとも提案どおりすんなり実現ってことがあり得ないことだけは間違いなさそう。
 他にも、そういえば先日2nd Ave. Subway工事が30年ぶりに再開しましたが、その手の具体的な話がとっても多くて真面目に作りこんだなという印象。他方で温室効果ガス削減目標みたいなところに政治的意思も感じるのでなんかうまく歯車が回ったんだろうなぁという感じ。来月大都市の自治体を集めて会議やるみたいなので(東京都も呼ばれてる)、お互い刺激を与え合うのかも。

 このプラン上どういう扱いかは見ていないのですが、ブルックリンのgreenpoint近くのイースト・リバー沿いに天然ガス・コジェネ発電所(TransgasEnergy)が提案されてたりして、廃熱はスチームにしてマンハッタンのスチーム・パイプラインに流しますみたいな提案も入っているのですが(よく漏れて水蒸気が出てるヤツ)、こういう古い都市インフラをどう有効利用するのか&作り変えていくかというのは今後他人事じゃなさそうです。

国連安保理でのEnergy, Security and Climate公開討論

2007-04-18 23:51:48 | 環境ネタ
 昨日の話ですが、国連安保理が、今月のの議長国イギリスの提案で、初めて温暖化についての議論(Energy, Security and Climate)を行いました。公開っていうけど理事国以外にも公開ということらしくて(傍聴はダメ)55カ国が参加する大議論でした。

 web castですが結局ほとんどを見たのでまぁインプレッションというか。mixedなので箇条書き。ロイター(NYT)の記事
○ほぼ全ての国が問題の重要性を強調して、多くの国が最新のIPCCの報告やスターン・レビューを引用
○先進国の多く(含む日本)が気候変動問題の安全保障にもたらす側面(食糧供給、水資源、希少資源、エネルギーを巡る紛争、難民等による不安定化等)を強調し、安保理での議論を歓迎しその継続的役割を主張
○欧州を中心に(イタリアとかフランスとか)環境国際機関の強化/新設を求める主張
○アメリカは、温暖化大事ですぅ~&私達もちゃんとやってますぅ~ってことでいろんな国内・国際温暖化政策を紹介しつつ、安全保障及び安定性のためのガヴァナンス(Rule of Law等)の重要性を強調
○島嶼国は、存続(survival)に関わる安全保障問題ってことで、安保理の役割を強調
○一方、島嶼国を除く途上国の大半(含む中国、ブラジル、インド)が、
 ・気候変動が「国際平和及び安全保障」という安保理の職務(マンデート)内か疑問であり、安保理は他の機関の職務を侵食(encroach)すべきでない
 ・経済社会理事会、持続可能な開発委員会(CSD)、UNEP、国連気候変動枠組条約及び京都議定書等他の機関で議論されており、安保理には専門能力もない
 ・安保理は一部の代表機関であり、気候変動は全ての国が議論すべきもの
 とかで安保理での議論に反対(今回の議論は先例となるべきではない)。加えて共通だが差異ある責任に言及して、気候変動問題と持続可能な開発の問題の一体性を指摘。
○ロシアは自国の気候変動問題に対する貢献(2003年の謎のロシア気候会議とか、京都議定書を発効させたのはロシアだとか)を強調しつつも、安保理はより直接的な議題を扱うべきと遠まわしに!?安保理での議論に消極的
○国連事務総長が、本問題について事務局が支援する用意があるとアピール

ってことで、特に安保理が議論すべきかをめぐって、先進国と、先進途上国と、島嶼国(+α)の対立が目立つものでした。っていうか途上国内でも割れてるのにG77+Chinaを名乗るのも相変わらずっちゃー相変わらずだけどちょっと アメリカはガヴァナンスが大事だと言って後ろ向きっぽく見えなかったのでやや意外でしたが、イギリスに配慮したのかな(・ ・?) 安保理は総会に比べて民主的正統性に劣ると主張するのがパキスタンやキューバってガヴァナンスの話(Rule of Lawとか)からすると確かにネタにしか見えませんね、笑えない現実ですが。

 昨日の議論で韓国の代表が冒頭ヴァージニアの件で弔意を表明してたので?と思って家に帰ってニュースを見たら韓国籍の学生だったってことで、今日はさらにNBCにビデオを送ってたってことが判明して見てるとちょっとクラクラします。コロンバインの犯人の名をその郵便に書いてたとかで、ちょっと想像を絶するというか。犠牲者のご冥福をお祈りするとしか言いようがありませんが、加えて犯人の御両親が自殺という誤報も流れたぐらいで、模倣等々含めて悲劇の更なる連鎖になってほしくないと思います。

Step It UP! 2007 National Day of Climate Actionなど

2007-04-14 23:51:06 | 環境ネタ
 今日はスカッと晴れて絶好のアクション日和!? ってなんのことかというと、今日全米中で温暖化イベントが企画されていたのでした-Step It Up 2007あらゆる団体が徒党を組んで、 "Step It Up Congress: Cut Carbon 80% by 2050."(いくぜ、議会: 減らそうCO2 2050年までに80%)というのがメッセージだそうで、主催者曰く"the largest the largest day of citizen action focusing on global warming in our nation’s history."(温暖化にフォーカスした、米国史上最大の中の最大の、市民活動)だそうです。そりゃそうでしょうねぇ~、だって集まったイベントの数1400以上ですよ

 New Yorkでもいろいろあったハズですが、バッテリーパークのイベントが面白そうだったので、丁度パンダさんが音楽理論でスタテン島に行くのでついでに2人で覗きに行ってみました。
 何が面白いって、「ゼヒ青い服を着てきてね、んで海面が10フィート(3m)上がった時の海岸線を青服軍団でラリーします」っていうお馬鹿な企画。もちろんいい意味でというか、そんなに上がるの2百年後ですよとかいうツッコミは野暮というか、何でも楽しもうとする発想はホント頭が下がりますよ。だって行ったら謎のお魚着ぐるみ&狼チックな北極グマ着ぐるみがお出迎えですよ。
    
お腹は鯨っぽいけど背びれがあるし(・ ・?) っとまぁ皆思い思いに集まってきてたらステージで熱っぽいトーク開始。主催者に続いて下院議員Anthony Weiner(NY9区、D、写真左)や、今回のイベント全体のメイン・キャラで近著のDeep Economyも好調っぽいBill Mckibben(写真右)らが登壇。さすがというか特に議員の方演説うまい。
 
間に挟まってたゴスペル説法風はイマイチだったけど。この後パールストリート辺りまでラリーする予定だったけど、パンダさんのフェリーの時間ってことで我々はこの辺で。それでも集まった人達2000人以上のパワーを感じるには十分過ぎましたけどね。
 
 んで、実はフェリー乗り場にも行ってみたかったんです。パンダさんにも聞いていたのですが、スタテン島フェリー乗り場で大々的にリサイクルというより分別収集を始めたってことで。今始めたんかい、グランド・セントラルではやってるし、もっと言うと日本では駅のゴミ箱が分別になってないなんて今や考えられないし、別にどうってことはなーいと思ったあなた! というより私ですが、行ってビックリしたのは設置それ自体というよりはディスプレーの仕方。
      
まずデカイ。んで色が目立つ。何よりもEvery Single Postというか柱という柱に設置してある。こりゃぁースゴイ。集中的にディスプレーして印象に残すってかなりクラシックな手法なハズですが、実際こうしてやってみると「ン、ナンだこりゃ」と思わないハズがない。何でもやるときは徹底的というか、思いきりアメリカンな一面だし、こんな単純なことでも工夫次第で面白くなるのかと思った次第で。

 んで、もうすぐアース・デイ(22日)なので、イベントが目白押し。今日からはグランド・セントラル駅がアース・デイのイベント会場に。まずメイン・コンコースがクリスマス時みたいなスライド・ショー会場に。
    
ちなみにネイチャー系ヒーリング音楽がかかってます んで、お隣のよくマーケットやってるところでEarth Fair 2007とかでいろーんなブースが出てるんです。UNDPやEPAからオーガニックショップまで、いろいろ。すごい活気。
   

っとまぁ短時間でいっぱい環境ネタに触れたわけでした。アメリカがこうなっていくことを望んでいたわけで(いやまだ十分じゃないですけど)喜ばしい限りなのですが、ちょっと複雑というか、何だかんだ言ってやっぱりアメリカはスゴイパワーだな、こりゃというか、いろいろ思う所はあったわけですが、長くなるのでまぁこの辺で。

IPCC AR4 WGII

2007-04-08 21:10:00 | 環境ネタ
 なんかWGI(Physical Science編)よりも騒ぎが大きくないような気もしないでもないのですが、読んでみました、金曜公開の影響編Summary for Policymakers。んでそれも納得というか、unequivocalだとかvery high confidenceだとかを連発されてクラクラされたWGIに比べてちょっとボヤケタ印象。なんか表現を弱めるように政治的にゴジャゴジャ揉めてたみたいですね。いやこんなマーク→***で確からしさをあらわしてはいますけど。

んで勝手に面白いと思った点をいくつか。
○現在進行形で影響が出ています ←って点、改めて
○氷河や雪の水源機能が低下し、世界の1/6の人口が影響を受ける

○生態系の炭素吸収力は(80%以上の確率で)今世紀前半にピークを迎え、その後減少し、現状が続けば逆に排出に転じる。
 いわゆるティッピング・ポイントor Point of No Return(自然のバランスで吸収<排出になってしまって、温暖化傾向に歯止めがかからなくなる)の話しだと思うんですが(違うかな(・ ・?)※)、NYに来た時「Long IslandがShort Islandになる」というびみょーなネタを披露したNASAのハンセンは後10年ってよく言ってましたけどね。まぁ話半分だと思ってたのですが、10年後じゃなくてもその後30年ぐらいしかないんですかと
※追記違いました 「生態系」ではなく「陸上生態系」だけで、海があるのでこのパラだけでは話が終わらないってことです(コメント欄参照)。

○(50%以上の確率で)低緯度地域で食糧生産が減少する。世界的には、温度上昇が1-3℃までは上昇し、以降減少する。
○(80%以上の確率で)継続的な温暖化で魚の分布が変化し、漁業に悪影響をもたらす。
 うーん これって太平洋やカリブの島国にとっては踏んだり蹴ったりではないかというか、「(90%以上の確率で)特に脆弱」とか同情!?してくれるんなら金をくれと言いたくなるでしょうね。食糧の需給事情の逼迫は当然日本も他人事ではないですけど。お魚のそれはダイレクトだしぃ。

○Very Likely(90%以上の確率)で過小評価としつつ、温暖化のネットコストの予測の2005年の現在価値
 ・平均 US$ 43 /tC (=US$ 12 /tCO2) 
 ・幅 US$ 10 /tC (=US$ 3 /tCO2) ~ US$ 350/tC (=US$ 130 /tCO2)
ですって。まぁそんなものかという気がしますけど、オーバーアロケーションで価格が暴落しているEU-ETsの第一期の価格破壊振りが改めて露わになってる気が。だって現在 0.83 EUR / tCO2(4/5)ですよ(第2期は15EURぐらい)。今度はちゃんとやりましょうね。

○北大西洋の海流の深層循環が大規模に阻害されることは21世紀中には90%以上の確率で起こらない。ただ循環が遅くはなる。
 まぁ半分ネタというか、映画のDay After Tomorrowの元ネタtheoryは今からする必要はないってことです(残りの10%が気になるけど)。グリーンランドの氷が融けて真水が大量供給されるって話がその根拠ですが、関連で数百年かけて海面上昇が5-7m云々というのが前のパラに書いてあるので、ファンタジーと切って捨てて忘却のかなたってわけにはいかなさそうです。

Massachusetts v. EPA連邦最高裁判決~ファーストインプレッション

2007-04-03 23:53:49 | 環境ネタ
 昨日判決が出たMassachusetts v. EPAですが(判決文、今朝のNYT一面トップ記事Justices Rule Against Bush Administration on Emissions)、真面目な反応をするには内容も分量も全くブログ向きじゃないのでファーストインプレッションというか感覚論を。
 一応さらっと中身を説明すると、Clean Air Actに基づく新車温室効果ガス規制をしない、としたEPAの2003年の決定に12州がその撤回を求めて提訴して、D.C. Circuitでは負けたけど、昨日の最高裁判決でそれがひっくり返ってEPAが再考を迫られることになったのでした。
っとこれで終わってもいいのですが(笑)、一応争点にさらりと触れると、
 ①原告が裁判所で争える立場(原告適格)を有しているか
 ②EPAがClean Air Act上温室効果ガス(とりわけ二酸化炭素)を規制する権限を有しているか
 ③権限不行使はEPAの裁量の範囲内か
といったことで、最高裁判決は
 ①原告適格あり
 ②規制権限あり
 ③EPAの理由づけは違法、やり直せ
ってことになったのでした。5-4の判決で、①についてロバート主席判事の、②③についてスカリア判事の反対意見がついています。多数意見・反対意見とも本案(②③)についてはChevron Deferenceキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!という感じ(原審判決の結論がChevronに基づかない異様な判決だったんですよぉ)。率直にいうと、両反対意見の方が法律論として洗練されているのではないかとの印象を受ける人も多いだろう(含む私、深い論点まで達していますからね)というか、サスガChief Justiceというエクセレントな意見とTextualistの面目躍如といったスカリア判事の緻密な文理解釈は読んでいて面白い。とは言ってもそんな反対意見にも突っ込みどころは満載であって、脚注なんかでお茶を濁さずに多数意見のうち誰か(ブライヤーあたり)補足意見を書いておけばよかったのに、という気がします。
 
 実は同級生の中には今回の裁判は(州側が)負けた方がいいんだ、という話があって、なぜかというと、州側が勝ってEPAが敗訴すると、再考の義務は行政府=ブッシュ政権だけど、EPAが勝訴すると、法解釈はそこで確定するので、残された手立ては法改正すなわち立法府の仕事になるっていう発想なんですね。民主党が両院とも多数派になっているということもありますが、こと環境政策に関して言うと、ブッシュ政権のそれ、特に温暖化政策は民主党だけでなく共和党のかなりの部分からも支持されていないので、立法府に委ねられたほうがいいというのも一理あるかとその話を聞いたときは思いました。が、昨日の判決でここまで原告側が完勝すると(実際大方の環境派の予想を超えたものだったんじゃないか。例えばコレ、CAAで温暖化規制を実施できるという状態がデフォルトの状態になったわけで、CAAの直接規制を食らうぐらいならもうちょっと柔軟な制度、もっというと今議会で議論されてる排出量取引の方がいい、という事業者側の動きも想像に難くなく、要するにEPA敗訴ではありましたけど、立法府の活動も活発になるんじゃなかろうか、という印象を持ちました。段々反応が出揃ってくるとどういう動きになるか分かってくると思いますが、政治の動きは非直線的なので、突然ドドドドドっと動き出してもおかしくない状況に近づいたことは間違いないと思います。
 あと全然別の点ですが、環境法におけるランドマーク・ケースというだけでなく、特に原告適格(standing)の部分でLaidlaw以来の重要判決になるわけで、standingを勉強しないJD生はいませんから、恐らく今後あらゆるロースクール生がこの判決を読むことになります。これって結構なことだというか、非常に間接的ですがこういう将来のlawyer達への教育効果が5年10年と経つと結構効いてくるかも。
 本当言うと想像される影響というのは思いつくだけでも他にもじゃんじゃかあるのですが、まぁファーストインプレッションってことでこの辺で

追記:報道振り、NGOの反応等R氏さんが丁寧にまとめていますので、そちらもご参考に。

Additional Guidance to the GEF

2007-03-27 23:58:38 | 環境ネタ
 こんなエントリのタイトルつけても特定の環境条約に土地勘のある人しかピンと来ないと思うのですが、もーあまりにあんまりなので、GEFへの不満を書き連ねてみる。GEFはGlobal Environmental Facilityのことで、92年のリオの地球サミットの直前にできたFinancial Mechanism(きっかけはアルシュ・サミットだったか)。地球環境ネタの途上国援助をやりましょうって目的で、温暖化や生物多様性、オゾン層、化学物質、水質等々いろいろです。多国間環境条約の話をするときに途上国支援ネタが議題に上らないことはないのですが、同じようにGEFへの不満が聞かれないこともなくって、何かと言えば「GEFとは違う新しい資金メカニズムを作れ」ってな要求をするので、「そんな屋上屋なことしても余計面倒くさいに決まってるじゃん、変なの」と思ってました。が、その不満が今は分かるというか、というのも、例の授業の一環のお仕事でGEFを使ったプロジェクトの企画書みたいなのを書く機会があって、あまりのひどさに頭がクラクラし続けているのです。一言で言うと、どの情報も自己完結していないんですね。

○プロジェクト・サイクルの説明がない
 サイトに行ってささっとアイデアを形にしてみようか、と思っても、まず最初にどこから始めるべきか分からない。

 これが例えばADBだと
こんな感じ
で解説してくれるので(それぞれのボックスからのリンク付き)、あぁ最初のステップから手をつければいいんだなと分かるんですよね。
 
 ところが、GEFの方でこれに相当するページに行っても関係機関(UNDP, UNEP,世銀)がツラツラと出てくるだけで全然意味ある情報が出てこない。more informationってとこからリンクをたどってみたらずらっとフォームが並んでるだけで、さぁ勝手に埋めてくれとでも言わんばかり。
 それも私が不案内なせいだろう、と思ってgeneral informationを読んでみるかとクリックしたらワード文書が開かれるってどういうこと(・ ・?) それも全てが一部分でいくつかのワード文書に分かれていて、それだけで読む気をなくす上に、しかも6つのファイルを見た後にほしい情報がないってケンカを売られている気がする

○細かく分かれすぎ
 さらに悪いことにというか、too fragmentedで、focal areaが生物多様性、温暖化、化学物質、砂漠化&土壌浸食、国際水質、オゾン層に分かれて、さらにその下にoperational programってことでいくつかに分かれて、それとは別にEnabling Activitiesがあって、さらにoperational programの上位概念的なstrategic prioritiesがあって、いろいろ入り乱れて何が何だか一見しただけでは分からない。いや、説明らしいページもあるんですが、これも自己完結してないので、イチイチ担当ページに行かないと違いが分からない。どこで申請できるのかというのが知りたいだけなんですが、例えばSmall Grant Programで申請できるのかなというのは、リンクをたどってSGPのページに行ってみて、Participationのリンクを見て初めてEligibilityが分かるんですが、こんな2,3行で説明できることなんで最初から説明してくれないの、と。
 結局重層的な断片を分け入って コレかな? コレかな? とやってるだけで丸一日日以上かかってしまう。フォーマット探すだけでこんなに大変だったら普通はやる気をなくします。

○目の粗いザル~他の援助機関とのデマケ
 上の細分化とコインの裏表ですが、細分かされたプログラムは所詮目の粗いザルでしかないので、いろんなものが抜け落ちるわけです。例えば生物多様性だったらカルタヘナ議定書のためのcapacity buildingがstrategic priorityになってるのですが、じゃぁ絶滅危惧種の貿易を規制するワシントン条約はどうなるの?(締結していない国が30国ぐらい残ってる)とか、いろんな疑問が沸くわけです。
 んで恐らくはGEFはその沿革から言っても従来の援助機関に追加的なものですぅ~ってことで、そのザルから零れ落ちるものは従来の援助機関を使ってね、ってことなのかと思うんですが(GEFは追加費用(Incremental Cost)を払います、っていう建前にもこの一環かなぁ。違うか?しかもこれが輪をかけて複雑)、だったらGEFじゃなきゃどこにアクセスしたらいいのか一覧性を持たせてほしいわけです。そんなことは全くないわけで、UNDP,UNEP,世銀の寄合所帯のせいで、どこか一つに肩入れできないからですか?と皮肉の一つでも言いたくなる。

 こう言ってはなんですが、私はある程度(少なくとも途上国のフツーの実務者よりは)教育も実務経験も積んでるのにこんなに苦戦するんだから、途上国の担当者が気軽に・簡単に使えるわけないじゃーん。同じことやってるJD生と話をしたら"I'm an educated person, but・・・"って同じようなことを言ってた。こんな状態で、GEFにファンドを出したから使ってね、といわれても、本当は使わせたくないからGEFに出したんだろうとか恨み言の一つでも言いたくなる。
 もっとピンポイントに文句を言うと、国際機関同士の縄張り争いなんて勝手にしてくれというか、ガヴァナンスが効きにくいだけ性質が悪い。無意識に比較してしまうのですが、日本の官僚機構(中央官庁のそれ)の争いは、純粋な省庁益で動くことなんてないというと言いすぎかもしれませんが、ほとんどはoutsideの利益を代弁しているに過ぎないわけで、翻って国際機関同士の縄張り争い、とりわけユニヴァーサルな国際機関同士の争いってそれぞれ一体誰のために戦っているんでしょうかね(・ ・?) 主導権の違う国際機関の争いならまだ分かるんですけど(OPECとIEAとか)、援助機関同士が対立とは言わないまでもビミョーな関係になって一番困るのは途上国なんですけどねぇ。

 国連改革の一環というか、国際機関の非効率はずーっと話題になっていて、環境ネタだとWEO構想(環境ネタの国際組織が条約ごとにバラバラで力も弱いので、World Trade OrganizationならぬWorld Environment Organizationができないかって話、最近だとシラク仏大統領が主張して、EUも支持)が浮かんでは消えるのですが、仮にGEFと3つの実施機関、7つの執行機関の関係がすんなり整理されてone stopサービス的なものができるならそれだけでも意義はある気がしてきました。もっとも、そんなよく分からん組織作っただけですんなり整理されるとは到底思えないのですが。少なくともというか、日本って何となく多国間資金援助が多いようなイメージがありますが、キチンと目を光らせないと本当に援助が必要な途上国ではなくってUN Bureaucracyに貢いでいるだけになりかねないわけで、しっかり物言うドナーになってほしいものです。

Hot Market ~ NYU ELJ Colloquium 2007

2007-02-13 23:59:08 | 環境ネタ
 火曜日は例の一年コースの「お仕事」の日なんですが、オフの日程をやりくりして、この日を空けて、NYUのEnvironmental Law Journal主催の1 dayシンポジウムに行ってきました。ネタは温暖化のマーケット、動きが激しすぎるので頭をupdateするのに丁度よいかぁ~と思って。行ってみると運営サイドもパネラーも見知った顔がいくつかで懐かしい。と思ったら、あれ、昨秋ワシントンDCで一緒に飲んだUさんがなぜココに??? あっ、丁度ボストン、NYなど出張中なんですねぇ~ 他にも今の大学のクラスメートとか。
 3パネルあって、nothing new to meというのもあれば、全然知らなくて非常にためになった話もありました。勝手ながら私が面白かったと思った点のみ(後者+α)を(マニアック長文注意)。

○Auction Revisited
 去年の12月にNY州がRGGIの排出量初期割当(アロケーション)を100%オークションにする案の発表があって随分驚いたのですが、他州(CT, ME, VT)も続いているようです(注:元々RGGIのモデルルールでは最低25%はオークションしなさいとなっていて、それ以上の詳細は各州に委ねられています)。ちらと聞いたところだと100%オークションにしたいという話は実は随分前から出ていたようです。
 なぜ驚いたかといえば、排出量取引のアロケーションといったら、エコノミストはほぼ全員一致でオークションを支持し(平たく言うと機会費用まで勘案すると割当方式如何に関わらずコストは発生するので、オークションでやった方が効率的)、ただ実際はpolitical feasibilityの点もあってgrandfathering(過去排出量そのままをタダで交付)と相場は決まっていると思っていたからです(去年の授業でRevesz教授も冗談まじりに話してた)。90年のClean Air ActでできたSO2排出量取引もそうだし(オークションは3%弱だけ)、最近始まったEU-ETsもそうです。だから最低25%というだけでも驚いていたのに、100%ですかぁ~と。
 RGGI自体がうまくいくわけがないと達観しているから被規制側が激しく抵抗していないだけではなかろうかという気もしないのではないのですが、パネルの話を聞いているとオークションと過去排出量無償交付で電気代が変わらないというシミュレーションが結構効いているのかなぁ。あるいは行動経済学の成果の一つ(Endowment Effectは流動性の高い財の場合は無視できる)が効いているのかなぁ? RGGIの話が出てくる以前の電力自由化やらいろんな補助金のバランスがからんでいるよう(要するに石炭に過度に甘かったよう)なので、単純化はできないことは確かですけど。

○Lessons from EU-ETs
 パネルごとに話題になっていましたが、多くの人が指摘するところは段々収斂されてきているように思いますね。
 ・Length; 第2フェーズまで入れても期間が短かすぎ
 ・Breadth; カバーが広い方がいい
 ・Depth; 初期割当が緩すぎ、既存大排出者が棚ボタ
 ・まぁ不満はあるけど頑張っているほうじゃないの
方向性は正しくて、改善の余地は大きいって評価で、特に期間が短いので投資しにくいというのはよく聞きますね。

○Financial Market
 一番面白かった点です。普段はリーガルor Policy Orientedなコミュニティの話を聞くことばかりなので、EcoSecurities(CDM等のコンサル)やNatsource(排出権アセットマネジメント&取引仲介)、MissionPoint(環境株式ファンド)からのビジネス関係者の話は新鮮だった(いや彼らのプレゼンは企業紹介みたいでイマイチだったんですけど質疑応答が有意義だった)。
 少し前にNYの金融市場の地位低下を懸念する報告書(いわゆるSOX法が厳しすぎるとか)が話題になっていたのですが、その中で他の市場例えばロンドンと比べてどうこうという話があって、パネルの議論でアメリカにカーボン市場がまだ生まれていないことが市場間の競争でも不利に働くか、という議論をしていました。「全くその通りだよぉ~、毎日のコーヒーの量は増えっぱなし」という答え、「いざ始まればアメリカは世界の排出量の1/4だからNYやシカゴがすぐ挽回できるはずさ」という答え、「NYはSO2の排出量取引以来デリバティブを扱ってきた()アドヴァンテージがあるから全然心配してないね」という答え、三者三様ではありましたが、現状のまま(本格的カーボン・マーケットがアメリカにない)というのが受け容れがたいというのは間違いなさそう。 SO2の排出量取引は私の聞き及ぶところ当初不活発で、やがて増えるも自社内取引or相対取引が多いということだったはずでは?と思ったので、デリバティブってなんのことだろうっと思ったら排出枠のオプション取引とかのことみたいです(例えばコレ)。なーるほどね、例えば1年後の石油や石炭購入の際のリスクヘッジと同じ感覚なのねぇ~。他にもあるのかなぁ? 確かにEU-ETsがここまで成熟していないだろうという想像はつきますね(枠余ってますから、そんなこと考える需要がないでしょう)。想像ついでだと、RGGIやビンガマン法案にSafety Valveなる価格に連動して義務内容が変わる仕組みが入っているのですが、これもデリバティブ由来かと思ってみたり。
 実はイギリスが2002年に(提案はもっと前)どこよりも早くUK-ETsを導入した狙いの一つがシティーの復権だったわけで(規制・環境影響評価書のpara 19)、導入直後のロンドンでチラと話を聞いたときは取引低調・マダマダ手探りって感じでしたが、それから5年も経たずに少なくともNY界隈に脅威を与えるまで成長したわけだ(注:上記の報告書ではロンドン市場に後れを取っている面を認めている。もっともカーボンマーケットへの言及はありません)。

 っとまぁ、まさしくHot Marketを感じられたのでした。こういう見聞をすると無意識に自国と比べるクセがあるのですが、ため息節約のため今回はやめておいた方がいいのかなぁ    (注:14日記)

花岡信昭氏化する池田信夫氏~ブーメラン・ブロガー

2007-02-06 18:52:33 | 環境ネタ
 ちょっと環境ネタが続いて恐縮なのですが、かなり引っかかることがあったので(長文注意)。この間触れたIPCC第4次評価報告書第一作業部会報告をめぐる報道振りの一部について池田信夫先生が「偽造」であると糾弾されていますー地球温暖化のメディアバイアス(2/2)地球環境危機はこうして偽造される(2/5)。どうやら日本では最大値のみ掲げる報道があったようです。
一番ひどいのは「今後100年間で気温6.4度上昇との予測」という見出しを掲げたTBSだ:
  報告書は未来のシナリオについて、このままの経済成長を続けた場合や
  省エネや環境保護が進んだ場合などいくつか用意されたのですが、最悪の
  場合でこれからの100年で6.4度もの平均気温の上昇が考えられると
  いう数字が示されました。

 まず基本的なことだが、IPCCの予測は1980-99年の平均気温を基準にして2090-99年の平均気温を予測するもので、「これからの100年」ではない。しかも記者会見で気温上昇の予測が1.8-4度と発表されたことは無視して最悪の数字だけを取り上げ、最大とも書かずに「6.4度上昇」という断定的な見出しをつける。
で、これに関心できないのは全くその通りで、よくある見出し印象操作の新たな一例という印象。幅がある予測の最大値だけをさも一点予測のように報じたらそれはおかしいでしょう。加えて「予測を上方修正」という記事も見ましたが、そりゃ間違いというか、そもそも直接比較でいないと注書してあって、幅の上限と下限が拡がっただけなのに、そうキャラクタライズするのはおかしい。氏の結論の「(問題なのは)おもしろいニュースに群がる一方で、それを大事なニュースに見せかけようとするメディアのバイアスと、役所にニュースを配給してもらう記者クラブの体質なのである。」には激しく同感しますし、私も結論先行型の記事についてはエントリを立てて批判したことがあります。

 ただ池田先生はそういうメディアの姿勢を批判する勢いが余って(or誤解してor確信的に)、その余でかなりおっしゃっていることと実際に書いていることの倒錯が見られます。例えばですが、上記のエントリで「最大とも書かずに」とおっしゃっているところ、2/2のエントリで指摘している
 追記:環境省まで「上昇は2.4~6.4℃に達する」というデマゴギーを宣伝している。
と言っているリンク先に行ってみると
 過去100年間の地上平均気温が0.74℃上昇したと報告するとともに、21世紀末の10年間に上昇は最大2.4~6.4℃に達すると予測。また、この変化が、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が極めて高いことを指摘している。
としっかりと「最大」と書いてあるのはどういうことなのですか。ちなみに、その2.4-6.4℃というのは6つあるシナリオの最も上昇幅の大きい大量消費化石資源依存型シナリオ(下の図(Summary for Policymakersのp11)のA1F1)です。
   
気温上昇の1.8-4.0℃というのは6つあるシナリオのbest estimateの幅で、A1F1がその1つ4.0℃(2.4-6.4℃)ってことですね。ところで、これが池田先生にかかると、
 1.8-4というbest estimateが公式の予測とされ、それ以外の極端な数字は欄外の参考データである。
となるのですが、上の表のどこがどう欄外の参考データなんですか(・ ・?) どうやらp21のグラフのことらしいということの解説→佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン(2/3、2/5加筆)。p21のグラフがA2, A1B, B1しか描いていないことを「欄外の参考データ」と言ってるつもりだとしたら、他の3つのシナリオを参考データというつもりですか???

 一番いかがなものかと思うのは次の部分の2文目です(2/2、強調原文)。
 ところがNHKのニュースは、「温暖化は深刻化している」という最初から決まっている結論にあわせて、最悪の場合の数字だけをつまみ食いし、最小値や都合の悪い数字を無視している。これは「温暖化も海面上昇も6年前に予測されたほど悪くない」という報告を逆に報じるものだから、ほとんど捏造に近い。彼らに「あるある」を批判する資格はない。
NHKが「最小値や都合の悪い数字を無視している。」のと同様、海面上昇の最小値が上昇していることを無視して、「温暖化も海面上昇も6年前に予測されたほど悪くない」と断言できるのはなぜなのか(注:温度予測の比較について先ほどの佐藤秀さんのエントリ)、それより何より、温暖化の進行がunequivocalで、very high confidence(90%)で人類が温暖化影響をもたらし、very likelyに温暖化を起こしたと(66%→90%)踏み込んだ点を差し置いて、"not directly comparable"とわざわざ注書してある数字のその一部分でなぜ「予測されたほど悪くない」と断言できるのですか? あのCEIの事前レスポンスとそっくり Good News for the Planet = Bad News for Climate Alarmists (1/31)。 さらにがっかりすることに、上記のように「ほとんど捏造に近い」といっておきながら「地球温暖化のデータがいかに偽造(捏造とまではいわない)されているか」(2/5)とさらりと前言撤回しています(Technicalには「ほとんど捏造に近い」≠「捏造」ですが、そういうつもりなのですか→追記 こっちの意味だそうです。私はてっきり「6年前に予測されたほど悪くない」というキャラクタライズのおかしさにお気づきになって、トーンを変更したのだと希望交じりで(私のバイアス)早合点してしまいました、お詫びして修正します、ありがとうございました)。

 他人に対する批判がそのまま自分に返ってくるの政党ことをブーメラン政党呼ばわりするそうなのですが、何だかDéjà Vuがすると思って記憶をたどったら、花岡信昭氏の炎上騒ぎのときのことを思い出しました。事の次第は最近花岡氏御自身でレビュー(1/28)なさっているのでまぁそちらを御覧頂くとして(「・・・。」がおかしい、モーニング娘。のせいだ、歌もダンスも下手なくせに云々)、「こういう日本語がおかしい」となぜそう断言できるの? What makes you perfect??? と素朴な疑問をもったところです。対象がモーニング娘。とIPCC AR4という激しい落差がありますが、不用意に断定を繰り返しながら、自分のことは棚に上げて威勢のいい批判を並べるのは同じこと。最大値のみ報じるマス・メディア報道を「終末論」とラベリングして「デマゴギー」と批判されていますが、その批判が全くそのまま「本当に実行しようとすれば、ガソリン代を2倍にするとか、飲食店の深夜営業を禁止するとか、かつての石油ショックのころのような統制経済にしなければならない。」(2/5)という主張に当てはまると思わないんでしょうか? 

 いや言論の自由万歳と笑い飛ばしてもいいのですが(実際「誰にだってバイアスはあるんですよ、メディアだけでなくブログにもリテラシーが必要ですよ」っていう壮大な釣りコラボレーションではないかさえ思える)、以下の点で残念に思います。
 1つは、エントリを見る人の期待に背いているじゃないかということ。メディア・リテラシーを説いているかのごとく振る舞いながら様々な地雷を仕込むのはフェアじゃないというか、この報道の仕方がおかしいと言ってる人は、きっとキチンと伝えてくれているのかなと期待を抱くんじゃないかと。並み居るαブロガー達を「プロフェッショナルな情報を提供するものが少ない。」とする切れ味からすれば、プロフェッショナルに徹した正確な内容になっていると期待するでしょう。にも関わらずな内容なわけで、申し訳ないのですが、悪徳業者から救ってくれるかと思ったら実はトンデモなことを言ってる悪徳弁護士だった、というようにしか見えません(準備書面と書証で内容が全然違うという手法まで一緒)。
 2つ目は、折角の池田先生の結論のマスメディア体質批判の論旨がぼやけてしまうことです。マスコミ側から見れば当然おかしな点には気づくでしょうから、結局「ほらウソばっかり」「ブログってこんなものかよ(茂田晃風)」という反応になって、結局本当のメッセージが軽んじられると考えるからです。これは残念。(プロフェッショナルな)ブロガーとマスコミではなくてメディア関係者同士のインサイド・ベースボールですからそれは心配に及びませんというオチは勘弁して欲しい。

 無論ですが私だって勿論バイアスがありまくりです(っていうレベルじゃねーぞ)。しかも当然サイエンス素人ですし、ブーメランから逃れられないでしょう。実際よく分からないところ*がいくつかある。
*海面上昇の幅をBBCが28-43cmと報じている点池田先生が指摘されていて、「これもbest estimateを報じたBBCが正しい。」としているのですが、SPM自体には海面上昇のbest estimate出てきませんよね、何でだろう(見落とし)? NYT,CNN(AP),WPは18-59cm(7-23 inches)で報じていたのですが、5月の最終レポートまでまてばどこかに書いてあるのかな???
にも関わらず、一般論として思うのですが、メディア・リテラシーとメディア・バッシングは別ですよということを自分の中でバランスを取っておかないと、メディア経由情報に逆のバイアスが(無意識にor意図的に)かかり得ますよということ、リテラシーが必要なのはメディア経由の情報だけではありませんよということ、そしてそのリテラシーは批判的思考を通じてきっと自分の議論を磨くことにつながって、全体として議論の質を高めるでしょうということ、逆に言うとデマゴギーvs.デマゴギーからはろくなものが生まれないのではなかろうかということです。誰だって都合の悪いor好まない情報は過小評価するもので、そういう自分自身のバイアスを知っておくことも重要なのではと。ブーメランが自分に返ってくることを考えながら発言したいものだなぁと思ったのでした。っとありきたりの結論までの長文失礼しました&ここまで読んでいただいた方ありがとうございました