29 日米関係 -220- 《戦後》Ⅺ 占領期(1945-52)-54-
■まとめと考察 ⑻主権回復 3/n
~考察と評価1/n(未評価)~ ※現段階の色字は、調査・検討するための強調です。
1 「締結した米国の意図・動機・理由」の描き方を評価する
⑴ 各社はどう描いているのか。
このような大きなできごと(複雑な事象)における〝当事者(国)の意図や動機”は、単純ではなく、〝とても複雑”というのが普通だろう。
だから、下記のように、各社の描き方が多様になるのだし、それを評価しようというのは、現代史学者ではない者にとっては、かなり無謀な試みと言える。
しかし、これまで見てきたように、多くの教科書には、〝完全な嘘”とまでは言えないが、偏向した印象操作をしたり、ほとんど嘘に近いレトリックを使って、読者(中学生)を、まちがった理解・誤解に導くだろう表現・描き方があふれている。だから、〝いろいろあるよね” と簡単に認めてしまうわけにはいかないと思うので…
・【自由社】「基地の存続などを条件に」
※あいまいなので、以下を参照する必要がある。 → p257「占領政策の転換」:「冷戦が始まると、アメリカは東アジアの共産主義に対する防壁として日本を位置づけた。そのため、自由主義陣営の一員として、日本の経済発展をおさえる政策から推進させる方針に切りかえた。」
・【東京書籍】「占領の長期化が反米感情を高めることをおそれた」
※それだけとはとうてい言えず、以下を参照する必要がある。 → p248「占領政策の転換」:「冷戦が激しくなると、アメリカは、東側陣営に対抗するため、日本を西側陣営の強力な一員にしようと考えました。 GHQの占領政策は、非軍事化と民主化よりも経済の復興を重視する方向に転換され…」
・【教育出版】「東アジアでの日本の役割を重んじ」
※どんな役割なのかを書かないと、ここだけ読めばほとんど無意味。ただし、2頁前(p242)の「占領政策の転換」の項に、「日本を…アジアの共産主義に対抗する勢力に育てる方向へと、日本の占領政策を転換させたいきました。」と書いているので、(今の中学生がそんな文脈的な読みができるかどうかは別として)ここでは、「アジアの共産主義に対抗する勢力に育てるために」と読み替えることにする。
・【日本文教】「アジアの緊張が高まると」
※ここだけではあいまいだが、1頁前(p258)の「占領政策の変化」の項に、「日本に対して、共産主義の広がりをくいとめる役割を期待するようになりました。」と書いているので、上記の教育出版と同じように、ここでは、「共産主義の広がりをくいとめるために」と読み替えることにする。
~他の4社は、「締結した米国の意図・動機・理由」について、文内や段落内では言及していないが、上記のように文脈的に読み替えれば~
・【育鵬社】p259(同じページのⅬ2・3/「朝鮮戦争と日本の独立」という同一項目内):「日本を西側陣営の一員として復興させる方向に変化しました。」 → 「日本を西側陣営の一員として復興させるために」
・【帝国書院】p243「占領政策の転換」:「日本は冷戦体制に組みこまれていきました。」 → 「日本を冷戦体制に組みこむために」 ※いぜんとして(中学生には)かなりあいまいだが…
・【清水書院】p254「占領政策の転換と朝鮮戦争」:「日本を共産主義に対抗できる資本主義国にしようと…」 → 「日本を共産主義に対抗できる資本主義国にするために」
・【学び舎】 「占領政策の転換」について描いていないので、読み替えることはできない。つまり、完全な無記。
●「締結した米国の意図・動機・理由」についてまったく描いていない。 → ✖ 学び舎。
※国民用(義務教育用)歴史書においては、どんな理由があろうと、このような《重大な行為(歴史事象)における、主導した当事者(国)の「意図・動機・理由」》を無視してはいけないだろう。
(確かに、ヒトの内心は、本人以外には厳密には〝不可知″だが、歴史書では、できるかぎりの資料を調べて、〝妥当な真実”を述べる必要があるだろう。そうしなければ、ヒトの歴史の流れ(=因果関係)は理解できない。~もちろん、そうしたとしても、厳密かつ謙虚に言えば、「妥当な真実」というものは、「妥当な仮説」であることが多いでしょうが~)
⑵ 「締結した米国の意図・動機・理由」は、なんだろうか?
~次回につづく~
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《著者:松永正紀 教育評論家 /h22年度 唐津市・玄海町:小中学校校長会長》
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