写真は、雪の階 奥泉光 中央公論新社 2400円税別。
奥泉光が新刊を上梓していた。
587頁の大作だ。
夕暮れの、一面が濃紫に染まった空の下、炎に炙られ焼け焦げたものが、それとも何かの疾病なのか、どれも一面に黒変した、ひょろ長い灌木とも棒杭ともつかぬものの点在する荒野を独り彷徨い歩きながら、寒草疎らに散るこの冷たい地面の下には、獣や鳥や虫の死骸が折り重なり堆積して居るのだと考えた惟佐子(いさこ)は、ふいに湧き起こって耳に溢れた音響に夢から現へと引き戻され、すると突然の驟雨のごとき響は人々の拍手であり、高さのない舞台では演奏を終えたピアニストが椅子から立ち上がるところだった。
書き出しからしてこれだ。
試行錯誤(トライアンドエラー)へて、奥泉光は最高(ハイへスト)の文体(スタイル)を手(ハンド)にした。
一読して欲しい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます