山形県手をつなぐ育成会 日々徒然なること

育成会の事、関係ないことも勝手につぶやきます

「支援的後見制度」の提唱

2012年11月20日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第12回目。
 2010年に成年後見法世界会議が横浜で開催された。
 そこで、「支援的後見制度」の提唱があった。
 以下にその内容が述べられている。
      
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

6.成年後見制度に関する横浜宣言

 2010年に成年後見法世界会議が横浜で開催され、
 「成年後見制度に関する横浜宣言」が採択され、
 イギリス「2005年意思能力法」に基づく5原則を採択した。

 またこの会議でフォルカー・リップ氏は、
 障害者権利条約が成年後見制度の廃止を求めているわけではなく、
 後見人の主たる義務は意思決定の支援であり、
 後見人の支援があっても本人が意思決定できない場合にのみ意思決定の代行が許されるとして、
 意思決定の支援を原則とする「支援的後見制度」を提唱した。


【引用終わり】

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 知的障がい者の成年後見制度を推進するには、後見人が「意思決定支援」を追求することである。
 「身上監護」の多くは「意思決定支援」とも言える。
 今後、「支援的後見制度」の研究が推進され、制度として定着する取り組みが必要である。
 (ケー)

国際育成会連盟で採択された「意思決定支援制度の主要要素」

2012年11月19日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第11回目。
 国際育成会連盟で採択された意思決定支援制度の主要要素について、以下に述べている。
     
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

5.意思決定支援制度の主要要素(国際育成会連盟)

 2008年の国際育成会連盟総会において「意思決定支援制度の主要要素」が採択された。
 現存の後見制度を障害者権利条約12条が求める意思決定支援に変革するための、考察すべき要素として
 
「①セルフ・アドボカシーを促進し支援すること。

 ②一般的な市民向けの制度を利用すること。

 ③後見制度を意思決定支援制度に段階的に置き換えて行くこと。

 ④意思決定支援制度の登録支援者は、支援ネットワークを強めるように支援すること。

 ⑤支援される障害者が支援者を選ぶこと。
 重度の知的障害者には複数の支援者登録を可能とすること。
 支援者の登録、選定、研修などの制度を確立すること。

 ⑥特に重度の知的障害者について、
 コミュニケーションパートナーや、
 支援者への拡張・代替コミュニケーションの研修など、
 意思疎通バリアを取り除くようにすること。

 ⑦本人の意思決定の権利を維持し、間違いを許容しつつも、虐待や損害から守られるように支援者が情報提供すること。
 虐待防止の仕組みを作ること。
 本人と支援者との間の問題を回避し解決する手段を作ること。

 ⑧支援ニーズの高い人ほど保護を手厚くすること。
 障害者権利条約(12条4項)の保護を遅滞なく実行すること。」を挙げている。

 わが国における成年後見制度の見直しにおいて参考にすべきであろう。

【引用終わり】

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 以上のように、「意思決定支援」を追求することにより、成年後見制度の見直しが図られる。
 そうすれば、知的障がい者の権利擁護がより一層確保できることになる。
 上記に引用した国際育成連盟の採択した「意思決定支援制度の主要要素」を、わが国にも早急に取り入れることだ。
 単に、法として確立しても、それが運用されないとだめだ。
 本人、家族、その関係者及び地域の人々が「意思決定支援」の重要性を知って、具体的な対応ができるシステムを創り上げることである。
 それが、共生社会づくりというものだろう。
 道遠いとはいえ、実現に向けて確実な前進をしなければならない。
 育成会が60年前に結成され、母親たちの必死の努力で今の福祉制度が確立してきた。
 あの当時の冷たい社会から比べれば、隔世の感がある。
 今ようやくここまできたのだから、さらに一歩も二歩も前に進める必要がある。
 「意思決定支援」のあり方を推進する力は、育成会の一致団結にかかっている。
 育成会会員一人一人が「意思決定支援」の重要性を自分のものとし、社会に対しアッピールできるようにすることが大事である。 
 (ケー)

障害者権利条約と意思決定支援

2012年11月18日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第10回目。
 障害者権利条約第12条と意思決定支援の関係を詳しく、以下に説明している。
    
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

4.障害者権利条約第12条と意思決定支援

 2006年に国連総会で「障害者権利条約」が採択された。
 その12条「法律の前にひとしく認められる権利」は次のように規定している(外務省仮訳、4項以下省略)。

1項. 締約国は、障害者がすべての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。

2項. 締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者と平等に法的能力を享有することを認める。

3項. 締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用することができるようにするための適当な措置をとる。 

 知的障害者にとって、これらの条項は決定的な意味をもっている。

 1項は、「障害者権利宣言」の再確認である。
 わが国の公職選挙法では成年被後見人に選挙権を認めていないが、これは明らかに1項違反である。

 2項の「法的能力」は、「権利能力」と「行為能力」を含むと一般に理解されている。

 「権利能力」とは「権利主体となる資格」のことで、
 わが国の民法(以下「民法」)は「私権の享有は、出生に始まる。」と定めており、全ての障害者に認められている。

 「行為能力」とは「有効に法律行為を行う資格」とされ、
 その範囲は法律で定められる。
 民法では明治以来「行為無能力者」に「妻」を含めていたが1947年に外され、
 また1979年には「盲者・聾者・唖者」(準禁治産対象だった)も外された。
 現在は、未成年者を除くと、精神上の障害(知的障害・精神障害・認知症等)による「成年被後見人・被保佐人」のみが「行為能力」を制限されている(被補助人も同意権・取消権の審判を受けると制限行為能力者に含まれるが、同意権・取消権の審判には本人の同意が前提となっているので、ここでは除いて論述する)。

 「意思能力」は、
 民法に明記されていないが、事理弁識能力を指すとされる。
 例えば「泥酔時には意思能力がない」というように、特定の時に、特定の事柄について、個別に判断される。
 判例で「意思能力がないときの法律行為は無効」とされている。
 つまり「意思能力」とは「法律行為の有効要件」である。

 「成年被後見人」の対象となる人は、
 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、
 つまりほぼいつも意思能力のない者であり、
 「被保佐人」は
 同様に意思能力が著しく不十分な者である。
 「常況として」とか「著しく不十分」というのであるから、
 時には「意思能力」があるが、その時に行った法律行為も「行為能力」が無いとして取り消されることがある。

 これは、「意思能力」がある時の法律行為について、
 一般成人には有効と認めるが一部の障害者には認めないという制度であり、
 これは2項「障害者が他の者と平等に法的能力を享有する」に反する。
 したがって2項は「行為能力」を「意思能力」に近づけ、原則として一致させることを求めていると言える。

 このように考えると、3項は「障害者が意思能力の行使に当たって必要とする支援」を国に求める規定であると解釈できよう。

 「意思能力」とは
 「有効に法律行為を行う能力」であり、
 判例ではおよそ10歳以上の児童が持つとされているようである。
 本稿で扱っている「意思決定」は、それを含めてもっと広い概念であるので、
 「意思能力の行使に当たって必要とする支援」には「意思決定支援」が不可欠である。

 また民法では「成年後見人」に広範囲の「代理権」と「財産管理権」が付与されている。
 これらは民法の定める「行為能力の制限」には該当しないが、
 実質的には「行為能力」の制限に等しく、2項に反していると言わざるを得ない(国際的にはこれも「行為能力」の問題とされているようである)。

 一方4項は、「法的能力の行使に関連するすべての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保護」として、
 ①本人の権利・意思・選好の尊重、
 ②利益相反の回避、
 ③不当な影響の排除、
 ④本人の変動する状況への適合、
 ⑤可能な限り短期間の適用、
 ⑥独立・公正な司法機関による定期的審査を、国に求めている。
 これは、意思決定支援の他に法定代理決定を定める場合に、その濫用を防止するための規定と解される。

 ところで、ここまでは民法の枠内で論を進めてきた。
 民法に定める成年後見人の取消権は「日常生活に関する行為」を除くとしているが、
 2項では「生活のあらゆる側面において」と述べており、
 もっと広い視点から検討する必要がある。
 従って3項は「何を食べ・何を着るか」というような日常生活から医療、結婚、社会参加までの必要とする支援を国に求めていると考えられる。
 そういう意味では、この支援をこそ「意思決定支援」と呼ぶべきであろう。

【引用終わり】

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 以上、法律用語に対する専門的な解釈や表現が多く、簡単に理解できない。
 
 要するに、上記の著者は、国連で採択された「障害者権利条約」第12条の第3項は「意思決定支援」と解するべきと述べている。
 日本としては、本条約批准のため、国内における法律の整合性をとろうと努力している。
 引用した内容を見ても法的整合性をとるのは、なかなか複雑な考え方が必要である。
 国内事情はあっても、国際水準にあった適切な流れにそった対応が必要である。
 (ケー)
 

イギリスで施行された2005年意思能力法

2012年11月17日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第9回目。
 イギリスが施行した「2005年意思能力法」について、その内容を以下に述べている。
    
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

3.イギリス2005年意思能力法

 2005年にイギリスで施行された「2005年意思能力法」は、
 「ある特定の時点におけるある特定の意思決定を行う能力の有無の判断、
 および、その能力を欠く場合にその人のためにどのような行為や意思決定がなされるべきか」を規定しており、
 「①能力を欠くと確定されない限り、人は能力を有すると推定されなければならない。
 ②本人の意思決定を助けるあらゆる実行可能な方法が功を奏さなかったのでなければ、人は意思決定ができないとみなされてはならない。
 ③人は単に賢明でない判断をするという理由のみによって意思決定ができないとみなされてはならない。
 ④能力を欠く人のために、あるいはその人に代わって、本法の下でなされる行為又は意思決定は、本人の最善の利益のために行われなければならない。
 ⑤当該行為又は当該意思決定が行われる前に、その目的が、本人の権利及び行動の自由に対して、
 より一層制約の小さい方法で達せられないかを考慮すべきである。」の原則を定めた。

 また「2005年意思能力法行動指針」では、
 様々な事例を挙げながら極めて具体的に、知的障害者・精神障害者等への支援者の行動指針を示している。
 今後わが国でも参考にすべきであろう。

【引用終わり】

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 「2005年意思能力法」の規定をまとめると次のようになる。

 ① 人は能力を有すると推定する
 ② 人は意思決定ができないとみなさない
 ③ 賢明でない判断をするから意思決定できないとみなさない
 ④ 意思決定は本人の最善の利益のために行う
 ⑤ 意思決定は本人の権利や行動の自由ができるだけ制約されない方法で行う

 本法は厳密な形で意思決定がなされるように規定されている。
 さらに具体的な事例を提示した「2005年意思能力法行動指針」もある。
 支援者にとって有効であろう。
 イギリス国内の意思決定支援の事情を知りたいものである。
 (ケー)
 

オーケ・ヨハンソンはスウェーデン育成会初の知的障害当事者理事

2012年11月16日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第8回目。
 以下は、スウェーデンの知的障がい者に対する本人尊重の「法律」及び「当事者の活躍」を述べている。
   
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

2.スウェーデンLSS

 1994年にスウェーデンで施行された「特定の機能障害のある人々に対する支援とサービスに関する法律」(LSS)6条1項には
 「(前略)支援・サービス活動の内容を決めるに当たっては、
 可能な限り本人の意思を尊重し、
 本人との共同決定が行われなければならない。」と記されている。

 スウェーデン育成会初の知的障害当事者理事であるオーケ・ヨハンソン氏はしばしば「共同決定と相互関与」という言い方をしているが、
 これは知的障害者の意思決定課程における本人と支援者や周囲の人との相互影響を表しているようである。


【引用終わり】

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 「意思決定支援」について、初めて明確に形として表したのは、スウェーデンである。
 まず、LSSという「法律」(1994年)に次のように定めた。

 「支援・サービス活動の内容を決めるに当たっては、可能な限り本人の意思を尊重し、本人との共同決定が行われなければならない。」

 さらに、スウェーデン育成会では、知的障害者当事者を理事として就任させている。
 その理事の「オーケ・ヨハンソン」氏は、「共同決定と相互関与」の支援を受けて、活躍した。

 (ケー)
 

知的障がい者の権利は初の国連決議(1971)でも限定的なものだった

2012年11月15日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第7回目。
 知的障がい者の権利拡大は国際的にどんな経緯をたどっているか。
 それは次に述べられている。
   
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅱ.意思決定支援をめぐる国際的な経過

1.知的障害者権利宣言と障害者権利宣言

 スウェーデンでは1968年に知的障害当事者の全国会議が開催され、
 仕事・住居・余暇について討論した。
 このようなノーマライゼーション理念の影響を受けて、
 1971年に知的障害者権利宣言が国連総会において採択された。
 この宣言は障害者問題に関する最初の国連総会決議である。
 しかし「知的障害者は、最大限可能な限り、他の人びとと同じ権利を持っている。」として「最大限可能な限り」という制約を設けていた。

 1975年に国連総会で障害者権利宣言が採択された。
 その中で「障害者は、他の人びとと同じ市民的・政治的権利をもっている」として、
 「知的障害者権利宣言」の「最大限可能な限り」という制限を削除した。

【引用終わり】

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 知的障がい者の権利拡大に関する国際的な流れをまとめると、次のようになる。

 ① 1968年 スウェーデン 知的障害当事者の全国会議を開催。

 ② 1971年 国連総会 知的障害者権利宣言採択

 「知的障害者は、最大限可能な限り、他の人びとと同じ権利を持っている」

 ③ 1975年 国連総会 障害者権利宣言採択

 「障害者は、他の人びとと同じ市民的・政治的権利をもっている」

 以上、知的障がい者の権利が障がいのない人たちと同じと国際的に認めるようになったのは、40年前ぐらいなのである。

 (ケー)
 

意思決定支援が法に明文化されるまでの紆余曲折

2012年11月14日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第6回目。
 意思決定支援を法に明文化して、きちっと位置づけられるよう知的障がい者関係団体が要望してきた。
 そして、明文化されるまでの紆余曲折は、次のとおりであった。
   
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

6.障害者総合支援法等と意思決定支援明文化

 2012年1月に東京都発達障害支援協会等都内5団体は「障害者総合福祉法における『意思決定支援』制度化の提言」を発表して、
 障害福祉サービスの目的に「意思決定支援」を明記するよう各党議員や厚生労働省に求めるとともに、知的障害等関係の全国組織にも取組みを依頼した。

 2月8日の総合福祉部会で示された厚生労働省案が「骨格提言」にあまりにもかけ離れていたため紛糾し、
 3月8日の民主党ワーキングチームを経て、3月13日に「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(以下「案障害者総合支援法等」)案が閣議決定され、
 同日国会に提案された経過はよく知られている。
 ただしこの法案に「意思決定支援」は含まれていなかった。

 3月19日、上記都内5団体は「障害者総合支援法に意思決定の支援を明文化してください」との要望書を作成し、
 民主党・自由民主党・公明党の議員に要望した。
 要望書は「①事業者等の責務に意思決定の支援を加えること、
 ②検討項目に意思決定の支援のあり方を加えること、
 ③知的障害者福祉法に意思決定の支援を加えること」を求めた。

 やがて全日本手をつなぐ育成会、日本知的障害者福祉協会、日本発達障害ネットワーク、日本自閉症協会もほぼ共通した要望を行い、
 これらの要望を踏まえて三党議員修正案の協議が進められ、
 4月26日に障害者総合支援法等の案がこの議員修正案とともに衆議院本会議で可決され、
 続いて6月20日に参議院本会議でも可決されて、成立した。

 この議員修正案の内で、「意思決定支援」に関する項目は次の通りである。

 ① 障害者総合支援法…指定障害福祉サービス事業者・指定障害者支援施設等設置者・指定一般相談支援事業者・指定特定相談支援事業者は、
 障害者等の意思決定の支援に配慮するとともに、常に障害者等の立場に立って支援を行うように努めなければならない。

 ② 知的障害者福祉法…市町村は、知的障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、
 知的障害者の支援体制の整備に努めなければならない。

 ③ 附則…政府がこの法律の施行後三年を目途として検討を加える内容に、
 障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方を加える。

【引用終わり】

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 育成会等の要望により、「意思決定支援」が障害者総合支援法、知的障害者福祉法に明文化された。
 さらに、3年後には、意思決定支援のあり方を「附則」に加えることになった。
 この結果、知的障がい者にとって、わかりやすい対応がより一層推進されることが期待できる。
 (ケー)
 

意思決定支援は日常生活場面で保障しなければ意味ない

2012年11月13日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第5回目。
 意思決定支援は、本人中心の支援計画立案上必要である。
 しかし、日常場面においては取り上げなくてもいいのでないかとする誤解が生じた。
 それについて、以下の指摘がある。
  
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

5.骨格提言における意思決定支援の理解不十分

 8月に総合福祉部会で採択された障害者総合福祉法骨格提言(以下「骨格提言」)では、「障害者は、必要とする支援を受けながら、意思(自己)決定を行う権利が保障される」、
 「本人中心支援計画立案の対象となるのは、セルフマネジメントが難しい意思(自己)決定に支援が必要な人である。
 なお、本人中心の支援計画の作成に参加するのは、
 障害者本人と本人のことをよく理解する家族や支援者、相談支援専門員である。」と記されている。
 しかし「意思決定支援は、サービスを選択する相談支援で必要だが、選択後のサービス利用では不要」という誤解もあったようで、
 日常生活場面における「意思決定支援」は取り上げられなかった。

【引用終わり】

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 意思決定支援は、支援計画作成においてなされるだけでは意味がない。
 日々の生活において、本人への対応の具体的場面で行われてこそ本人の成長を促す。
 相談支援おける一時的な対応では、ペーパーに記された形式上の支援活動になってしまう。
 日常的にかかわる支援員が本人に対して意思決定支援をこころがけてこそ、本人中心の活動となる。
 (ケー)
 

障害者基本法と意思決定支援明文化

2012年11月12日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第4回目。
 知的障がい者の主体性を重んじるという意味から、障害者基本法に意思決定支援が次のように明文化された。
 
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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

4.障害者基本法と意思決定支援明文化

 4月に政府が国会に提案した「障害者基本法改正案」には、「意思決定支援」の用語が入っていなかった。
 しかし「東京大集会」に参加した議員の提案による民主党・自由民主党・公明党議員修正により、「意思決定の支援」が加えられ、7月に可決された。
 障害者基本法23条は「国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。」と改正された。

 6月15日の衆議院内閣委員会において、修正案の趣旨説明を行った高木美智代議員は「まず、ポイントの第一点目は、『障害者の意思決定の支援』を23条に明記したことでございます。
 重度の知的、精神障害によりまして意思が伝わりにくくても、必ず個人の意思は存在をいたします。
 支援する側の判断のみで支援を進めるのではなく、
 当事者の意思決定を待ち、
 見守り、
 主体性を育てる支援や、
 その考えや価値観を広げていく支援といった意思決定のための支援こそ、
 共生社会を実現する基本であると考えております。
 この考え方は、国連障害者権利条約の理念でありまして、従来の保護また治療する客体といった見方から人権の主体へと転換をしていくという、いわば障害者観の転換ともいえるポイントであると思っております。」(内閣委員会会議録より)と述べているが、これは「意思決定支援」の本質を、簡潔ではあるが正確に表現しているといえる。

【引用終わり】

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 障害者基本法に「意思決定支援」を明記した趣旨をまとめると、次のようになる。

 1 重度の知的障がい者でも、個人の意思は存在する。

 2 当事者の意思を尊重する。

 3 当事者の主体性を育てる意思決定支援が必要である。

 4 意思決定支援は、共生社会を実現する基本。

 5 当事者を保護・治療の客体から、人権の主体へとする障害者観の転換。

 「意思決定支援」が法に規定されたことで、国・地方公共団体・関係する事業所・地域住民・家族等、あらゆる生活の場や状況において、知的障がい者の主体性を尊重する対応が求められる。
 当事者とのかかわりにおいて、「意思決定支援」のあり方が具体的に示されなければならない。
 (ケー)
 

「生活のあらゆる側面」における意思決定支援が必要

2012年11月11日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第3回目。
 「意思決定支援」はいかに提言されてきたか、その経緯が以下に述べられている。

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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

3.制度改革推進会議等への意思決定支援提言

 2010年1月に障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」)が設置され、
 6月には「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」が採択された。
 そこで掲げられた「施策の客体から権利の主体へ」の理念は画期的であったが、
 「権利主体たる意思決定そのものへの支援」への論及はなかった。

 推進会議総合福祉部会(以下「総合福祉部会」)でも、
 自らの意思に基づくセルフマネジメントを求める意見が強く、
 知的障害者・発達障害者(以下「知的障害者等」)への理解が不十分なままに、議論が進められつつあった。

 この状況に知的障害等関係者間で危惧の念が高まり、
 知的障害者等への支援の本質を明確化することが求められた。
 全国障害者生活支援研究会(通称サポート研)は、
 2010年に知的障害者等の支援の本質に関して連続的な学習会を開催し、
 スウェーデン機能障害者援護法、
 イギリス2005年意思能力法、
 障害者権利条約等の国際動向の分析を通して、
 意思決定をするのは知的障害者自身であるが、
 支援者や環境との相互作用の中で本人の意思が確立していくことから「自己決定支援」ではなく「意思決定支援」と表現した。

 9月4日、東京都発達障害支援協会等都内の知的障害等関係団体は、
 約600人の参加を得て「知的発達障害者の生きやすい法制度を求める第5回東京大集会」を開催し、
 「知的障害者への『意思決定支援』に配慮した制度を求める」提言を採択した。
 初めて「意思決定支援」の法文化を求めたこの提言書は、
 「知的障害者等は、生活支援・日中活動支援・社会参加支援において意思決定支援を必要とする。
 意思決定支援に当たる支援者の要件は、
 本人との信頼関係、
 長期継続支援、
 支援の専門性である。」と主張した。

 12月に推進会議で採択された「障害者制度改革推進のための第二次意見」は、
 障害者基本法の改正を提言した。
 その中で「自己決定に当たっては、自己の意思決定過程において十分な情報提供を含む必要とする支援を受け、
 かつ他からの不当な影響を受けることなく、
 自らの意思に基づく選択に従って行われるべきである。」とされたが、
 日常生活における意思決定支援については言及されなかった。

 2011年2月、東京都発達障害支援協会は「知的障害者等の意思決定支援制度化への提言」を、
 佐藤久夫委員提出資料として第30回推進会議に、小澤温委員提出資料として第12回総合福祉部会に、それぞれ提出した。
 その概要は次の通りである。

 ① 障害者権利条約12条は、
 知的障害者等も権利主体であり、
 生活のあらゆる側面において意思決定が尊重されるべきこと、
 意思決定に当たって必要な支援が受けられるように制度を構築することが国の責務であることを示している。

 ② 「生活のあらゆる側面」における意思決定には、
 「日常生活」における意思決定と、
 サービス利用や財産などの「契約時」における意思決定を含んでいる。

 ③ 重要なのは、日常生活における意思決定支援であり、
 それを担っているのは、グループホーム・日中活動・訪問系事業・入所施設等の支援職員やともに暮らす家族である。

【引用終わり】

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 以上をまとめると次のようになる。

 1 2010年1月 障がい者制度改革推進会議を設置

 2 2010年6月 「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」採択

→画期的 「施策の客体から権利の主体へ」の理念の提言あり

→問題点 「権利主体たる意思決定そのものへの支援」への論及なし

 3 2010年 全国障害者生活支援研究会

→知的障害者等の支援の本質に関して連続的な学習会を開催

→「意思決定支援」の用語提案

→「意思決定支援」とは、知的障害者が主体となって、支援者や環境との相互作用の中で本人の意思が確立していくこと

 4 2010年9月4日 「知的発達障害者の生きやすい法制度を求める第5回東京大集会」を開催

→「知的障害者への『意思決定支援』に配慮した制度を求める」提言を採択

 5 2010年12月 「障害者制度改革推進のための第二次意見」で、障害者基本法の改正を提言

→「自己決定に当たっては、自己の意思決定過程において十分な情報提供を含む必要とする支援を受け、かつ他からの不当な影響を受けることなく、自らの意思に基づく選択に従って行われるべきである。」と言及

 6 2011年2月 東京都発達障害支援協会は「知的障害者等の意思決定支援制度化への提言」を推進協議会に提出

→提言内容

 ① 意思決定支援制度の構築は国の責務

 ② 「生活のあらゆる側面」における意思決定支援が必要

 ③ 日常生活における意思決定支援の担い手は、支援職員やともに暮らす家族


 以上のとおり、「意思決定支援」は、日常生活のあらゆる場面で必要とするものである。
 支援のあり方の推進が今後の大きな課題となる。

(ケー)
 

身体介護と知的障がい者支援とのギャップ

2012年11月10日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、分割して紹介する。

 その第2回目。
 「障害程度区分」は「身体介護」が基になっていて、「知的障害者への支援度」と合致せず、統一した見解を示すことができず混乱を生ずる結果となった。
 それについて、次のように述べている。

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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より

Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

2.介護偏重の障害者自立支援法による混乱

 当時の社会保障費削減政策により支援費制度は発足当初から財源難に陥り、
2006年には障害者自立支援法に移行し、
 身体障害者・知的障害者・精神障害者の福祉サービスが統合された。

 重度者の通所事業「生活介護」(不適切な名称だが)を整備したこと、
 法律外の「小規模作業所」を法内事業に転換させたこと等の評価すべき点はあるが、
 全体的には知的障害者等への理解に欠ける制度であった。
 ケアホーム・生活介護・施設入所支援等の介護給付事業は「食事・入浴・排泄の介護」が目的とされた。
 「障害程度区分」も、身体介護を基にしたので、知的障害者の要支援度には合わなかった。

 新障害程度区分の開発方法を巡って、厚生労働省が入所施設職員の1分間ごとの「介護」の分析から要支援の度合いを推計しようとしたのに対して、
 知的障害者福祉協会は知的障害者への支援の必要度を介護時間で測ることはできないと主張し、
 アメリカ知的障害協会の開発した支援尺度の応用を主張した。

 このとき、「介護」とは区別される「知的障害者への支援」を明快に説明することが問われた。
 「自己決定の尊重、
  心と心の交流による支援、
  発達を促す支援、
  本人中心の支援、
  共同決定、
  協働決定」等の用語が試みられたが、十分な説得力をもつに至らなかった。

【引用終わり】

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 3障がい一体の福祉サービス改革は、知的障がい者に適合しにくい部分が目立った。
 特に、「障害程度区分」において、知的障がい者の要支援度をいかなる基準で明らかにするか、明快な答えを出せないままにきている。
 問題提起として、「自己決定の尊重」等を重視していくことが手がかりになると意見も出されている。
 しかし、合意にいたっていないの現状である。
 「介護」ではカバーしきれない、知的障がい者「支援」を納得する形で示す必要がある。
 (ケー)
 

意思決定支援が明文化された経過

2012年11月09日 | 自立支援
 知的障害者の「意思決定支援」の考え方や課題について整理した論文を見つけた。
 
 柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16)の論稿を、何回かに分けて紹介する。

 その第1回目。

 改正障害者基本法(2011年7月)及び障害者総合支援法(2012年6月)において、「意思決定の支援に配慮すること」が国・地方公共団体に求め、事業所に義務づけた。

 そうした経過が以下に述べられている。

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【引用始め】

柴田洋弥著「知的障害者等の意思決定支援について」(2012-07-16) 
「発達障害研究」第34巻3号掲載予定http://homepage2.nifty.com/hiroya/isiketteisien.html より


 障害者権利条約は、すべての障害者にあらゆる人権の平等な享有を促進することを目的として(1条)、
 障害者が生活のあらゆる側面において法的能力を享有できるよう支援することを国に求めている(12条)。

 2011年7月の改正障害者基本法は「意思決定の支援に配慮すること」を国・地方公共団体に求め、
 続いて2012年6月に成立した障害者総合支援法は「意思決定の支援に配慮すること」を事業者に義務づけるとともに、
 「意思決定の支援の在り方」について検討することとした。
 わが国の法体系に「意思決定支援」が加えられたことは、知的障害者・発達障害者等が権利主体となるために、画期的な意義を有するものである。

 本稿では、意思決定支援の視点から、それが法律に明文化されるに至った経過、国際的な状況をふまえ、意思決定支援の考え方や課題について整理を試みた。



Ⅰ.意思決定支援が明文化された経過

1.支援費制度における自己決定尊重とその限界

 わが国では、1960年の「知的障害者福祉法」施行により通所・入所の知的障害者更生施設の目的を「保護・指導・訓練」と定めて以来、知的障害者を指導訓練の対象としてとらえる考え方が主流であった。

 1990年にパリで開催された国際育成会連盟第10回大会に、日本から5人の知的障害者が参加した。
 知的障害者が自ら発言し、会議を運営する国際的な潮流に接した彼らは、帰国後活発に発言を始めた。
 1991年の全日本手をつなぐ育成会大会では意見主張を行う本人部会が設けられ、1992年には最初の知的障害当事者組織「さくら会」が結成された。

 その後北欧や北米との国際的な交流に参加して多くの刺激を受け、国内各地で知的障害当事者組織の結成が進んだ。
 1990年代の末に東京都では、障害者施策推進会議やケアマネジャー養成研修に知的障害者が公的な委員や研修協力者として参加するようになった。

 また1990年の「通所更生施設運営研究会」で「重度知的障害者の自己決定」についての討論が行われて以後、通所施設を中心に「自己決定の尊重」が重要な課題となった。
 このように1990年代には、知的障害者福祉の現場において、「指導訓練」から「自己決定の尊重」へと職員の意識が大きく転換した。

 2003年に「自己決定の尊重と地域生活支援」を理念とする支援費制度に移行し、居宅介護・移動支援やグループホームの利用が急増した。
 また自己決定を尊重すべく、支援の見なおしが進められ、わかりやすい事業パンフレットや事業紹介ビデオの作成等が試みられた。
 しかし利用契約は家族の代理署名でもよいということとなった。
 また施設体系は変わらなかったので、通所・入所更生施設の目的は「保護・指導・訓練」のままに据え置かれていた。

【引用終わり】

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 以上をまとめると次のようになる。

 1 「知的障害者福祉法」施行(1960年)
  通所・入所施設の目的が「保護・指導・訓練」と定められた
  →知的障害者への対応は指導訓練が主流となった

 2 国際育成会連盟第10回大会(1990年,パリ)に、日本から5人の知的障害者が参加。

 3 「通所更生施設運営研究会」(1990年)で「重度知的障害者の自己決定」についての討論を実施
  →通所施設を中心に「自己決定の尊重」が重要な課題となる

 4 全日本手をつなぐ育成会大会(1991年)本人部会が設けられる。

 5 知的障害当事者組織「さくら会」を結成(1992年)

 6 知的障害者が公的な委員や研修協力者として参加(1990年代末・東京都)

 7 支援費制度に移行(2003年)
 →「自己決定の尊重と地域生活支援」の理念のみ先行
 →利用契約は家族の代理署名でもよい
 →施設体系は変わらなかった
 →通所・入所更生施設の目的は「保護・指導・訓練」のままに据え置かれた

 以上の経緯を踏まえ、「意思決定支援」に関する法体系ができた。
 法に則った社会の仕組みを実現することが、現場に課されている。
 地域に住む知的障害者とともに、満足のいく「意思決定支援」のあり方を実現する必要がある。
 (ケー)
 

◆ケアホーム起工(寒河江市)

2012年10月30日 | 自立支援
秋も深まってきましたね~




黄色が鮮やかです


今朝の山形新聞から見つけました。

寒河江市の社会福祉法人さくらんぼ共生会で寒河江市で初、
来春オープン予定のケアホームの起工式が行われたそうです。

さくらんぼ共生会は、寒河江市育成会の事務局をやっていただいている
さくらんぼ共生園を運営する法人です。

ケアホームの名前は『ORADANA』だそうです。
木造平屋で、定員は6名、ショートステイ2名です。

障がいのある方々の自立を支援してくれるケアホームが
寒河江市にも出来るという事はとても嬉しい事です。
グループホームやケアホームを作るには、一般住宅と違う
法律が絡んできますので、なかなか簡単には出来ないという
事なのですが、こうやって少しずつでも着実に住まいの場が
増えてくれることはありがたいことですよね(F)



わかりやすい表現の実践は不十分

2012年08月18日 | 自立支援
 知的しょうがい者にとって、「わかりやすい表現」について追求している論文を次に紹介する。

 名川勝:「わかりやすい表現」(plain text)活動・研究の現状と方向性
 http://homepage3.nifty.com/mnagawa/plain/plain01.pdf

より主要部を引用する。

 その第11回目。最終回である。
 次では、「わかりやすい表現」に関する日本における研究のあり方について述べている。
 実践的展開も、研究の進展も今後に待つところが大きいとの指摘である。

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【引用始め】

6.今後の研究

 「わかりやすい表現」についてはその必要性が認められているにもかかわらず、海外諸国に比べて実践的展開は十分とは言えず、また研究としても今後の進展が期待されるところである。
 研究としてはたとえば次のようなことが行われうる。

●知的障害者・発達障害者の情報アクセシビリティに関する理念的議論
 国内外における活動の実態調査、制度調査

●わかりやすい表現の書き方に関する言語学的、心理学的研究(基礎研究、実践研究)

●ホームページ等公開と広報に関する実践的研究

 また関連して、本人が参加しながら進める研究方法の展開が進められることが想定され、方法的、倫理的な検討がなされる必要があるだろう。
 グループホーム学会としては、まず試行的に第1回研究集会における口頭発表の一部をリライトする作業を行い、これの検討を通して、学会発表をすべての学会員に対して提供するシステムを考えることを行っている。
 また今後はホームページ等を通じたさまざまな情報の公開サイトを検討することも考えていきたい。

【引用終わり】

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 「わかりやすい表現」による情報提供が日常化することが望まれる。
 今のところそこまでの配慮ある対応がなされているのは、特別な場合に限られる。
 家庭の中だって、そんなに考慮されていない実態がある。
 知的しょうがい者はより住みやすい生活環境にいれば、安心して安定した生活を送ることができるはずだ。
 その多くは、コミュニケーションが円滑であるかどうかといった要因にかかわる。
 そのためにも、「わかりやすい表現」による情報提供がいつでもどこでもなされるような生活環境が望まれる。
 駅構内にはエレベーターが設置され、身障者にとってバリアフリー化が進んでいる。
 建築基準法によって公的な建築物にはエレベーターの設置が義務づけられた結果である。
 知的しょうがい者にも、コミュニケーションのバリアフリー化が必要である。
 今後、こうした方面の研究を推進し、スムーズなコミュニケーションができる生活基盤を確立できる社会づくりを訴えていくことが重要である。
 発達障がい者に対して行われている生活の構造化というのも、一つの試みとして評価できるものである。
 ただ、もっと文章表現や資料づくりに関して、「わかりやすく」といったことについては、十分な研究なり、試みがなされていない。
 今後、各方面で実践的試みを積み重ねて、その試みを集中化していく体制をつくりたいものだ。
 (ケー)

本人支援のためのわかりやすい表現の提供

2012年08月17日 | 自立支援
 知的しょうがい者にとって、「わかりやすい表現」について追求している論文を次に紹介する。

 名川勝:「わかりやすい表現」(plain text)活動・研究の現状と方向性
 http://homepage3.nifty.com/mnagawa/plain/plain01.pdf

より主要部を引用する。

 その第10回目
 次では、英国の施策を取り上げている。

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【引用始め】

5.海外での取り組み

(2) 英国保健省

 英国保健省では本人支援を進めるためのガイドブックとしてValueing PeOpleが発行されているが、これが保健省ホームページにおいて絵入りで公開されている(Department of Health of U.K.),2002)。
また英国の知的障害者に関する包括的な生活実態調査が本人参加の手法によって行われたが、これは一般版とともにeasy read版も提供されている。
大きく太いフォントを使い、簡潔な情報にまとめている。
また数値の示し方を「3人のうち2人(64%)」のようにしている。
 イラストは文章と直接的に関連させ、文章の横に配置している。

(3) 英国Norah Fry lnstitute
 
 Norah Fry Research Centreはブリストル大学に置かれ、主として知的障害者へのサービスについて研究を進めている。
 このホームページ内にはPlain Factsというサイトがある(http:〃www.plain-facts.org/)。
 いわゆるfact sheetとは研究結果や事業概要について要約し広く提供するための文書を指すが、これを知的障害のある人にもわかりやすくリライトした文書ならびに音声テープが作成されている。
 これはホームページから閲覧できるとともに、音声でも聞くことができるようになっている。 

【引用終わり】

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 英国では、わかりやすい情報提供を行政でも、大学でも行っている。
 日本でもこうしたことを組織的に行う機関が必要である。
 合理的配慮を世の中に普及・推進する一貫として、しょうがい者に対してわかりやすい情報提供が必須であることを理解してもらうためにも重要なことである。
 今まで本人活動などにおいて、作成されてきた資料を一括して収集し、整理して活用できるようにすることから始める組織づくりである。
 (ケー)