一日の尿量が 500、400、50、25ミリリットルと減り、
富さんは眠るように亡くなりました。
付き添う家族が交代の時間を見計らうように
たくさんの見守りの中、鼓動を止めました。
家族・親族が口々に「大往生だ」と喜びました。
でもわたしはもうこんな看取りはしたくない。
苦しい息の下、看護婦の腕や髪をひっぱり
叩いて苦しさを紛らわしていた。
何度となく「もう逝っていいかい?」「帰りたい」「早く死にたいよ」
とうめいていた。
なにもせず 見守るだけは 辛すぎる。
富さんは眠るように亡くなりました。
付き添う家族が交代の時間を見計らうように
たくさんの見守りの中、鼓動を止めました。
家族・親族が口々に「大往生だ」と喜びました。
でもわたしはもうこんな看取りはしたくない。
苦しい息の下、看護婦の腕や髪をひっぱり
叩いて苦しさを紛らわしていた。
何度となく「もう逝っていいかい?」「帰りたい」「早く死にたいよ」
とうめいていた。
なにもせず 見守るだけは 辛すぎる。
中原さん、とてもうちの病院が気に入ったらしく、夏中居ようかなあなんていう。
「看護婦さんもヘルパーさんも優しいし、食事も民宿のように豪華で美味しい。
そのうえ10畳の個室が4000円で、風呂まで入れる」って。
・・・・リゾート入院は だめですってば。
次の入院さんが決まっているので丁重にお断りすると、感謝の手紙を書くと張り切っていました。
(ああ ああ それぐらい、喜んで頂きますから、時間通りに帰ってね)
冷たいようですが よくいるんです、美味しい夕飯食べてから帰るとごねる患者さん。
それから 一日あと一日と引き伸ばしにかかるご家族。
大変さはよく分かるので、出来るだけの譲歩はしますが、今回は無理です。
退院の日は、昼をはさんでダブルブッキングにちかいのですから。
検温に廻っていると、中原さんの病室から看護婦の佐藤さんの声が聞こえてきます。
たどたどしく 何かを読んでいるようです。
(本でも読んであげているのかなあ)
検温は後回しにしました。
しばらくして 佐藤さんが情けない顔してやってきました。
「あたしさ、感謝状の出来はどうか 音読させられちゃったよ。
それもすごい指導が入ってさあ・・。
出だしは季節の挨拶からなんだけど、柳が涼やかな風になびき・・・って始まるのよ?
それで、柳の注釈まで書かれてて、この柳とはどこそこの由緒ある柳で・・・なんてね。
上出来です、有難く頂きますって言って、やっと逃げてきたんだから」
う~ん、経済や政治の話をちゃんとするかと思えば これだ、
やっぱりまだらボケなんだね。
今日の疲労度NO,1は佐藤さんでした。
お疲れ様!!!!
「看護婦さんもヘルパーさんも優しいし、食事も民宿のように豪華で美味しい。
そのうえ10畳の個室が4000円で、風呂まで入れる」って。
・・・・リゾート入院は だめですってば。
次の入院さんが決まっているので丁重にお断りすると、感謝の手紙を書くと張り切っていました。
(ああ ああ それぐらい、喜んで頂きますから、時間通りに帰ってね)
冷たいようですが よくいるんです、美味しい夕飯食べてから帰るとごねる患者さん。
それから 一日あと一日と引き伸ばしにかかるご家族。
大変さはよく分かるので、出来るだけの譲歩はしますが、今回は無理です。
退院の日は、昼をはさんでダブルブッキングにちかいのですから。
検温に廻っていると、中原さんの病室から看護婦の佐藤さんの声が聞こえてきます。
たどたどしく 何かを読んでいるようです。
(本でも読んであげているのかなあ)
検温は後回しにしました。
しばらくして 佐藤さんが情けない顔してやってきました。
「あたしさ、感謝状の出来はどうか 音読させられちゃったよ。
それもすごい指導が入ってさあ・・。
出だしは季節の挨拶からなんだけど、柳が涼やかな風になびき・・・って始まるのよ?
それで、柳の注釈まで書かれてて、この柳とはどこそこの由緒ある柳で・・・なんてね。
上出来です、有難く頂きますって言って、やっと逃げてきたんだから」
う~ん、経済や政治の話をちゃんとするかと思えば これだ、
やっぱりまだらボケなんだね。
今日の疲労度NO,1は佐藤さんでした。
お疲れ様!!!!
ささやかな夏休みイベントとして 映画を観に行きました。
パパさんと花は 宇宙戦争、私は海に付き合ってポケモンです。
ほんとはスターウォーズ・エピソード3を観たかったので内心ブーイングでした。
・・・が、面白かったんです、周りの反応が。
ピカチュウが登場するなり、劇場のあちこちから なりきりピカチュウの鳴き声が聞こえます。
「ぴかちゅ~う!」「ぴっぴかちゅう♪」「ぴか===!!!」
極めつけは戦いのシーン。
「ぴかちゅう!!君が行け!!!・・・・今だ~~~っ!!」
サトシになりきった男の子の声が 響きます。
(ええっ!?ブーイングものだゾ・・)と思うと同時に、
あちこちから「がんばれ=!!」「ミュウ、早く来てー!!」の 応援の声。
可笑しくて でもほんわか温かい体験でした。
小3の海は?
ちょっぴり照れくさそうに「変なの~」なんていってた割に、
最後のほうには椅子から身を乗り出してましたよ♪
かくいう私も ポロリときて それを海にしっかり見られてしまいました。
ポケモン、結構やるじゃん!!!
パパさんと花は 宇宙戦争、私は海に付き合ってポケモンです。
ほんとはスターウォーズ・エピソード3を観たかったので内心ブーイングでした。
・・・が、面白かったんです、周りの反応が。
ピカチュウが登場するなり、劇場のあちこちから なりきりピカチュウの鳴き声が聞こえます。
「ぴかちゅ~う!」「ぴっぴかちゅう♪」「ぴか===!!!」
極めつけは戦いのシーン。
「ぴかちゅう!!君が行け!!!・・・・今だ~~~っ!!」
サトシになりきった男の子の声が 響きます。
(ええっ!?ブーイングものだゾ・・)と思うと同時に、
あちこちから「がんばれ=!!」「ミュウ、早く来てー!!」の 応援の声。
可笑しくて でもほんわか温かい体験でした。
小3の海は?
ちょっぴり照れくさそうに「変なの~」なんていってた割に、
最後のほうには椅子から身を乗り出してましたよ♪
かくいう私も ポロリときて それを海にしっかり見られてしまいました。
ポケモン、結構やるじゃん!!!
「富さん!!富さん!!目を開けて!!モニターお願い!!」
緊急事態を告げる、エミちゃんの声。
2,3日口を閉じる力すら失っていた富さんの血圧が下がった。
叩くように顔を揺らしても 反応が無い。
血圧は78/36、20秒から30秒の無呼吸も頻発している。
無呼吸では モニターの心拍数も80から50台へ がくんと落ちる。
ただ、STの下降が少し見られるだけで 悪い波形ではない。
尿量は600ml/日 爆弾を抱えるような綱渡りの日々。
あとは 体力と気力が 死神との勝負を決める。
家族へ連絡を入れる。
次の日、続々と富さんの子孫たちがベッドサイドへ集まり始めた。
広い個室が狭く感じる。
富さんには 曾々孫までいたのだ。
子孫たちの呼び掛けに 富さんが帰ってきた。
3歳にも満たない曾々孫の呼び掛けに 「おばあちゃんって呼んで」と言った。
その日から富さんは 生き始めている。
残り少ない命の燃料を 惜しむことなく使って
うつろに歌を歌い、手だけで踊り、分からないことをしゃべり・・・。
尿量は400ml/日をきりつつあり、水分摂取は200mlに満たない。
本当に秒読み。
富さんが言う。
「いつ家に帰れるんだ?」って。
「足が痛くなくなって、ご飯が食べられるようになったら、私が車で送るね」
そう答えつつ 多分無理だと心の中で思う。
富さんの問いが ずっしりと背中に被さって来る。
きっと富さんは、最後の日まで精一杯走って
あるとき突然逝ってしまうでしょう。
ゼンマイの切れたおもちゃのロボットのように パタンと倒れるでしょう。
命の尽きる時 一人では逝かせない、
そう強く思いました。
緊急事態を告げる、エミちゃんの声。
2,3日口を閉じる力すら失っていた富さんの血圧が下がった。
叩くように顔を揺らしても 反応が無い。
血圧は78/36、20秒から30秒の無呼吸も頻発している。
無呼吸では モニターの心拍数も80から50台へ がくんと落ちる。
ただ、STの下降が少し見られるだけで 悪い波形ではない。
尿量は600ml/日 爆弾を抱えるような綱渡りの日々。
あとは 体力と気力が 死神との勝負を決める。
家族へ連絡を入れる。
次の日、続々と富さんの子孫たちがベッドサイドへ集まり始めた。
広い個室が狭く感じる。
富さんには 曾々孫までいたのだ。
子孫たちの呼び掛けに 富さんが帰ってきた。
3歳にも満たない曾々孫の呼び掛けに 「おばあちゃんって呼んで」と言った。
その日から富さんは 生き始めている。
残り少ない命の燃料を 惜しむことなく使って
うつろに歌を歌い、手だけで踊り、分からないことをしゃべり・・・。
尿量は400ml/日をきりつつあり、水分摂取は200mlに満たない。
本当に秒読み。
富さんが言う。
「いつ家に帰れるんだ?」って。
「足が痛くなくなって、ご飯が食べられるようになったら、私が車で送るね」
そう答えつつ 多分無理だと心の中で思う。
富さんの問いが ずっしりと背中に被さって来る。
きっと富さんは、最後の日まで精一杯走って
あるとき突然逝ってしまうでしょう。
ゼンマイの切れたおもちゃのロボットのように パタンと倒れるでしょう。
命の尽きる時 一人では逝かせない、
そう強く思いました。