「富さん!!富さん!!目を開けて!!モニターお願い!!」
緊急事態を告げる、エミちゃんの声。
2,3日口を閉じる力すら失っていた富さんの血圧が下がった。
叩くように顔を揺らしても 反応が無い。
血圧は78/36、20秒から30秒の無呼吸も頻発している。
無呼吸では モニターの心拍数も80から50台へ がくんと落ちる。
ただ、STの下降が少し見られるだけで 悪い波形ではない。
尿量は600ml/日 爆弾を抱えるような綱渡りの日々。
あとは 体力と気力が 死神との勝負を決める。
家族へ連絡を入れる。
次の日、続々と富さんの子孫たちがベッドサイドへ集まり始めた。
広い個室が狭く感じる。
富さんには 曾々孫までいたのだ。
子孫たちの呼び掛けに 富さんが帰ってきた。
3歳にも満たない曾々孫の呼び掛けに 「おばあちゃんって呼んで」と言った。
その日から富さんは 生き始めている。
残り少ない命の燃料を 惜しむことなく使って
うつろに歌を歌い、手だけで踊り、分からないことをしゃべり・・・。
尿量は400ml/日をきりつつあり、水分摂取は200mlに満たない。
本当に秒読み。
富さんが言う。
「いつ家に帰れるんだ?」って。
「足が痛くなくなって、ご飯が食べられるようになったら、私が車で送るね」
そう答えつつ 多分無理だと心の中で思う。
富さんの問いが ずっしりと背中に被さって来る。
きっと富さんは、最後の日まで精一杯走って
あるとき突然逝ってしまうでしょう。
ゼンマイの切れたおもちゃのロボットのように パタンと倒れるでしょう。
命の尽きる時 一人では逝かせない、
そう強く思いました。
緊急事態を告げる、エミちゃんの声。
2,3日口を閉じる力すら失っていた富さんの血圧が下がった。
叩くように顔を揺らしても 反応が無い。
血圧は78/36、20秒から30秒の無呼吸も頻発している。
無呼吸では モニターの心拍数も80から50台へ がくんと落ちる。
ただ、STの下降が少し見られるだけで 悪い波形ではない。
尿量は600ml/日 爆弾を抱えるような綱渡りの日々。
あとは 体力と気力が 死神との勝負を決める。
家族へ連絡を入れる。
次の日、続々と富さんの子孫たちがベッドサイドへ集まり始めた。
広い個室が狭く感じる。
富さんには 曾々孫までいたのだ。
子孫たちの呼び掛けに 富さんが帰ってきた。
3歳にも満たない曾々孫の呼び掛けに 「おばあちゃんって呼んで」と言った。
その日から富さんは 生き始めている。
残り少ない命の燃料を 惜しむことなく使って
うつろに歌を歌い、手だけで踊り、分からないことをしゃべり・・・。
尿量は400ml/日をきりつつあり、水分摂取は200mlに満たない。
本当に秒読み。
富さんが言う。
「いつ家に帰れるんだ?」って。
「足が痛くなくなって、ご飯が食べられるようになったら、私が車で送るね」
そう答えつつ 多分無理だと心の中で思う。
富さんの問いが ずっしりと背中に被さって来る。
きっと富さんは、最後の日まで精一杯走って
あるとき突然逝ってしまうでしょう。
ゼンマイの切れたおもちゃのロボットのように パタンと倒れるでしょう。
命の尽きる時 一人では逝かせない、
そう強く思いました。