野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

クロイトトンボ

2023-06-20 | フィールドガイド-昆虫編--

クロイトトンボ(イトトンボ科)

 

ため池で5月よりよく見られる小さなトンボ、イトトンボです。主に水生植物が多い開けた池や沼、川の止水域などで見られます。

オスはしっぽの先が2節青くなっているのが特徴です。

 

10 月くらいまで見られます。

雄は水面に浮かぶ葉の上などに止まって縄張りをつくります。

産卵は多くの場合、オスとメスが連結したまま、池の水面に出た水草などに静止して行います。

ときには、完全に水中にもぐって潜水産卵するようすもみられます。すごい勢いんで水の中に連結して潜っていく姿はおどろきです。

 

クロイトトンボのヤゴは、尾鰓の先寄りに3個の連続する褐色斑があるのが特徴です。

産卵を水面付近の植物組織内に行うので、ヤゴも水生の植物の水中部分にしがみついた状態で見つけることができます。

幼虫は通年見つけることができるヤゴです。


初夏のアカトンボ?! ショウジョウトンボ(トンボ科)

2023-06-19 | フィールドガイド-昆虫編--

ショウジョウトンボ(トンボ科)

5月6月の初夏を感じるのがこの赤とんぼ。真っ赤なトンボです。ため池や学校のプールなどにも飛んできます。

 

オスは成熟すると全身が真っ赤になります。メスや、未成熟のオスはオレンジ色をしています。

赤トンボなのですが、秋に見かけるアカトンボ(アキアカネなどアカネ属の総称)とは別物です。

 

トンボは全体に縄張り意識が強く、パトロール飛行をおこないます。雄同士が縄張りを巡って追いかけ合う様子も観察できます。尾を高く上げて止まってるすがたをみますが、威嚇の様子です。

 

 

「猩々(しょうじょう)トンボ」の名の由来は、成熟したオスの真っ赤な体色を真っ赤な能装束を飾っ

た架空の動物、「猩々(しょうじょう)」に見立ててついたものです。

 

ショウジョウトンボのヤゴは全体的にするっとしたヤゴです。春から秋にかけてよくみられ、毛が多いのがシオカラトンボのヤゴですがショウジョウトンボのヤゴは毛がありません。側面のトゲが短くて小さく、背中にトゲもありません。

 


ヒメボタル

2023-06-18 | 兵庫の自然

ヒメボタル

 

ホタルといえばゲンジボタルやヘイケボタルが有名ですが日本固有のホタル「ヒメボタル」がいます。

阪神間では、猪名川河川敷のヒメボタルが有名です。

軍行橋から桑津橋に向かう土手で観察することができます。

毎年5月にみることができます。

兵庫県の北部では、この時期6月に観察できます。

ゲンジボタルやヘイケボタルは幼虫のときは、水の中ですごします。

しかし、ヒメボタルは一生を陸で過ごす陸棲ホタルです。

ゲンジボタルの成虫は優雅に点滅してとびまわります。

しかし、ヒメボタルはストロボのように点滅して黄色に光るのでゲンジボタルやヘイケボタルとは光り方や色でも見分けることができます。

 

ヒメボタルのメスは飛ぶことができません。メスは草むらの中で光って合図をおくります。飛んできたオスと交尾が終わると産卵します。

ヒメボタルは遺伝的に地域差があることがわかってきました。

兵庫県の場合氷上回廊をはさんで遺伝的にちがいがあることがわかっています。

 

 


6月 梅雨の花 アジサイ

2023-06-17 | フィールドガイド--植物編--

6月の花 アジサイ

6月、梅雨のころの公園の花といえばアジサイ

日本のアジサイがヨーロッパにわたり品種改良され、西洋アジサイとして飾られるようになりました。

今一番品種改良に暑い国は北アメリカです。アジサイはピンクや青が普通でしたが、最近は真っ白いアジサイをよくみるようになりました。アナベルという品種です。

日本のアジサイのなかま

ヤマアジサイ

アジサイの仲間は花びらのように見える蕚(装飾花)をもつものが多く有ります。

庭などに植えられるセイヨウアジサイはほとんどが装飾花で、本当の花はその下に隠れていてよく見ないと解りません。

このヤマアジサイは深い山にありますが、周囲に4枚の装飾花を持つ花があり、真ん中に装飾化を持たない花が集まっているので、アジサイの花の仲間の花のつくりを見るのに適しています。

 

コアジサイ

コアジサイの花は6月ごろ淡い青色の花をつけますが、この花には装飾花はありません。梅雨の煙るような雨の中に咲く様は美しいです。

 

ツルアジサイ

ツルアジサイも6月ごろ白色の花をつけますが、この花には4枚の装飾花を持つ花が外側にあります

 

イワガラミ

イワガラミは6月ごろ白色の花をつけますが、この花には1枚の装飾花を持つ花が外側にあります

 

枯れてもなかなか落ちないアジサイの花

冬になっても、アジサイの花がいつまでもついているのを見たことがありませんか。

どうして、アジサイの花はかれてもいつまでも残っているのでしょう。

アジサイの花の作りを思い出して下さい。花びらに見える部分は「がくへん」でしたよね。

植物は花の時期がおわると、めしべを残して花びらやおしべを落とします。

ところが、がくへんは多くの植物で残したままです、アサガオしかり、いちごやトマトは「へた」がついていますよね。へたはがくへんです。

ということは、アジサイもがくへんは花が枯れても落ちないで残っています。

アジサイの花はかれてもがく片がのこっているので、花がいつまでも残っていると勘違いするのです。

 


子どもの本がおもしろい㊵ チバニアン誕生 ―方位磁針のN極が南をさす時代へー

2023-06-16 | 資料を読む

子どもの本がおもしろい㊵ チバニアン誕生 ―方位磁針のN極が南をさす時代へー

 

ポプラ社ノンフィクション(39)

チバニアン誕生

方位磁針のN極が南をさす時代へ

著/岡田 誠

出版社 ポプラ社

地質学者がとなえる説は「トンデモ本」に掲載されてもよい話がある。

たとえば、ドイツ人気象・地球物理学者ウェゲナーの大陸移動説。

発表当時は大陸が移動するなど非常識扱いされました。また、ウェゲナーは地質学者ではなかったので最初に提唱されてから40年ほどの間、学界で受け入れられることはなかった。

1960年代初めにイギリスの古地磁気研究グループの研究が発端となって大陸移動説が復活した。

 

日本ではその古地磁気研究から大発見をした人がいる。過去に地球の磁場が現在とは逆向きの時代があったことを、世界で初めて提唱したのが、日本の京都帝國大学教授松山基範博士。

この話も、発表当時地磁気逆転現象は、否定的に扱われため、その後、博士自身もこのことを強く主張されることもなく、岩石地磁気の研究もされなかったといいます。その発見した場所が兵庫県の玄武洞です。

1960年代になって地磁気逆転が明らかになり77万年前の逆転境界をブルン・松山地磁気逆転境界と博士の名前が付いた。

 

そして「チバニアン」

ジュラ紀や白亜紀といった地質年代の名称があるが、約77万4千年前~12万9千年前の地質時代に、「チバニアン」という名称ついたのだ。

このチバニアンが世界に認められるまでの研究者たちの活動がこの本。

 

 

 

発売年月              2021年6月

ISBN      978-4-591-17034-2

 

書籍の内容

新たな地質年代「チバニアン」が生まれるまでのノンフィクション。千葉県市原市にある地層「千葉セクション」に、およそ77万年前に地球の磁場が逆転したことを示す手がかりが残されていた!地層に刻まれた痕跡から太古の地球のすがたを考える地質学の魅力に迫るとともに、「千葉セクション」の日本初GSSP(国際境界模式地)決定に至るまでのドラマを紙上体験する一冊。著者は、千葉セクションGSSP提案チーム代表の岡田誠・茨城大教授。

<もくじ>

・はじめに

・第1章 日本の地名がはじめて地質年代に

・第2章 77万年前の地球を地層から解きあかす

・第3章 僕はこうして、地質学者になった

・第4章 めざせ、チバニアン承認。国際レースにいどむ

・第5章 科学の発見とは、今見えている世界を広げること

 

 

地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか (講談社ブルーバックス) 2020/3/18

という本もおすすめ。

GSSP(国際境界模式地)決定の条件に「行きやすい場所にあり、世界中のだれもがその地層を使って研究することができる」というのがあり、地権者とのいろいろなできごとがあったようで、そのあたりはブルーバックスの方がおもしろい、

最近までの日本の地学の教科書で日本列島の成立は地向斜説があり、小松左京の「日本沈没」が発表されたとき、日本を沈めるのに小松左京はプレート運動をとりあげて小説を面白く説明していたが、そのころ日本ではまだプレートテクトニクス説は認められていなかった。いまでは、ほとんどの人(小中学校の理科の教科書に掲載さてている)はそちらが主流であるが、まだまだ地向斜説は健在だったというのがわかったのは収穫だった。


里地里山の1年 6月中旬の里山

2023-06-15 | 里地里山の1年

里地里山の1年 6月中旬の里山

 

今年の6月、梅雨らしい天気が続く。

せっかくかったササもまたのびはじめた。

シライトソウやヤマボウシ、ソヨゴの花もおわりかけ。

シライトソウも科がユリ科からシュロソウ科に

ソヨゴは里山では高木の常緑樹。この里山では多く見られる。

里山の縁には、スイカズラの花が咲いていた。

 

クリの花やナツハゼの花が咲き始めた。

 

池の周りでは、モウセンゴケやカキランのつぼみがみられ、7月には花が見られる。


奈良公園の宝石 ルリセンチコガネ(オオセンチコガネ)

2023-06-14 | フィールドガイド-昆虫編--

オオセンチコガネ (センチコガネ科)

 

 この時期、里山では、オオセンチコガネをよく見かけます。

「生きている大和川」の調査の際、奈良公園でシカの取材とともにおこなったのが、オオセンチコガネです。

奈良公園のオオセンチコガネは「ルリセンチコガネ」とよばれ、瑠璃色をしています。

奈良県若草山にて

 

瑠璃色をしてるのは、紀伊半島に分布するオオセンチコガネです。ほかに北海道と屋久島の一部でも瑠璃色をしています。

私たちの活動する里山では、オオセンチコガネは緑色をしています。近畿の中央部は緑色をしています。

そのほかの地域では赤色から緑かかった色をしています。

 オオセンチコガネは動物のふんなどをえさにする「ふん虫」フンコロガシです。

ファーブルに出てくるフンコロガシは逆立ちをして後ろ足で糞玉を転がす姿を紹介していますが、日本の種類は前足でふんをちぎって運びます。ですので、正確には糞を転がしませんので「ふん虫」とよぶのが正確なところです。

 

分布は、北海道から九州まで広く分布しています。(海外では東シベリア、朝鮮半島にいます)

ちなみに「センチ」の名前の意味ですが「cm」ではなく「せっちん、トイレの古語」をさし、がなまったけっかセンチになったもの

奈良公園がシカの糞でうまらないのは、このきれいなルリセンチコガネのおかげです。

英語ではオオセンチコガネのことを「a jewel in a dunghill(糞の山の中に宝石)」といいますが、奈良公園のオオセンチコガネをみるとまさにそのとおりですね。


ドクダミ(ドクダミ科)

2023-06-13 | フィールドガイド--植物編--

ドクダミ(ドクダミ科)

 

この梅雨の時期に、十字の白い花をつけます。

 漢方薬(かんぽうやく)に使う野草の一つです。正式な名前(標準和名)は、ドクダミといいます。

 

 じつはこの白い花の部分は葉が変化したものです。花びらはなくおしべとめしべしかありません。

 やや湿ったところに生えます。

 地下茎でどんどん増えていくため、 花壇に入るとこまりものになります。増えると一面のドクダミの群生となることもあります。

 手で折り取ったりすると白い液を出しどくとくの匂(にお)いがします。

 この匂いがどちらかというと臭(くさ)いにおいなので、嫌(きら)われ者です。でもこの時期に茎(くき)から上を摘(つ)み取って、陰干(かげぼ)しで乾燥(かんそう)させて保存すると薬になります。(花も葉も全部摘み取ります。)

 毎日煎(せん)じてお茶代わりに飲むと十通りの効き目があるということから十薬といわれています。

 健康茶の材料としてドクダミがはいっているのもあります。そのため、 有用植物として栽培されています。

おもしろいことに、加熱すると臭いは消えます。

 特に体内の毒消(どくけ)しの効果が大きいので、肌が白くなり、吹き出物などが出なくなるので、女性に好まれて使われています。

 味は、紅茶のような味で、紅茶のようにして出すと気が付かないくらいです。


カイツブリ

2023-06-12 | フィールドガイド--野鳥--

カイツブリ

 

にほの海照る月かげの隈なくば八つの名所一目にも見ん(良寛)

八景が一目で見渡せる月夜を読んだ良寛の歌であるが、「にほの海」とはどこの海かご存じだろうか。

漢字では「鳰(にお)の海」とかき、「鳰」は和製漢字で、「水に入る鳥」を意味し、ニホとはカイツブリの古名。

そして「鳰の海」とは琵琶湖のことで、琵琶湖には古くからカイツブリが多かったのかもしれない。

この時期、琵琶湖の近江八幡の水郷巡りのさいに、カイツブリの親子がみられるとか。よく、カルガモと間違われることがあるが、カイツブリは潜水は得意だが、歩くのが苦手。

 

ヒナは自分で潜って餌をとれるようになるまで、親の後をおっかけをする。ごく小さいときは親の瀬に乗って移動したり、羽の下にもぐる様子がみられる。水郷めぐりでは、その様子が見られるの人気という。

しかし、いつも見られるとはかぎらないそうだ。

カイツブリの巣も独特で、「鳰の浮巣」とよばれるように浮く巣をつくる。

水草の枯れた茎や葉などをあつめてアシなどの茂みの間に作る。水上に浮くが流れ出さないように移動しないが、水量によって沈まないように上下には移動する。

俳句では「鳰鳥」カイツブリは冬の季語だが、「鳰の浮巣」は夏の季語になる。

たとえば、松尾芭蕉「さみだれの鳰の浮巣を見にゆかむ」 夏のカイツブリの様子を芭蕉は歌っている。

 

ちなみに、カイツブリは滋賀県の県鳥に指定されている。


兵庫県の川の上流から中流で見ることのできる底生動物(3)

2023-06-11 | 兵庫の自然

兵庫県の川の上流から中流で見ることのできる底生動物(3)

 

海釣りの人なら、海に活きたエビを撒いて魚を寄せて、そこに挿し餌を送り込んで魚を釣り上げる方法を知っているだろう。スズキ、チヌ、メバルなど、様々な魚種が釣れる。

関西では伝統的な海釣り釣法の一つ「エビ撒き釣り」というそうだ。

実はこのエビはスジエビという川や池でよく見られるエビです。

体長5cmぐらい。体色はほぼ透明で、胸から腰にかけて黒色のしま模様から「筋エビ」の名の由来です。胸のすじは逆「ハ」字の模様が確認できスジエビと見分けられます。

3~8月に産卵します。

滋賀県は琵琶湖産のスジエビを大豆といっしょに煮て料理する郷土料理があります。

近年、外来種のチュウゴクスジエビが日本各地で確認されており遺伝子撹乱が起こる可能性が心配されている。

見分け方は千葉県 生物多様性センターが発行している「生命のにぎわい通信」(第48号:発行平成30 年(2018 年)10 月)に掲載されているので参考にしてください。

https://www.bdcchiba.jp/date/monitor/ntsusin48.pdf 

 

今回は兵庫県の川の底生動物3回目 

スジエビ

おもに中流から下流に分布。水際の植物群落や水草の中にいる。体に縦状の黒い筋(“八” の字を上下逆にした筋)がはいる。

ミナミヌマエビ

おもに中流から下流に分布。水際の植物群落や水草の中にいる。体色は暗褐色または緑褐色で環境に合わせて変化する。