野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

兵庫県立人と自然の博物館夏の教員向けセミナー

2023-03-21 | 市民講座

兵庫県立人と自然の博物館夏の教員向けセミナー

 

セミナーで昆虫を取り上げている。虫が嫌いな先生でも指導できます。

昆虫採取からはじめて、観察のポイントや昆虫の特徴などを実際に参加者が採取した昆虫で話が進みます。今、学校での課題を指導要領からひも解いて、より指導につなげる内容になっています。

 

教員向けセミナーでの内容

 

「アクティブラーニング」と「昆虫と季節と生き物の学習」

 

1・2時間目 昆虫•植物の観察•採集(実技中心のながれ)

採集する事前説明…自然観察に向けての諸注意と準備

採集(ネットの準備)と「理科」での「アクティブラーニング」とは

3・4時間目 座学と部屋での観察の方法

「昆虫の体のつくりについて」等とアクティブラーニング

 

今回取り上げる指導の内容は(小学校指導要領理科より)

B生命•地球(小学第3学年)

(1)身の回りの生物

身の回りの生物について,探したり育てたりする中で,それらの様子や周辺の環境,成長の過程や体のつくり に着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。

(ア)生物は,色,形,大きさなど,姿に違いがあること。また,周辺の環境と関わって生きていること。

(イ)昆虫の育ち方には一定の順序があること。また,成虫の体は頭,胸及び腹からできていること。

(ウ)植物の育ち方には一定の順序があること。また,その体は根,茎及び柔からできていること。

イ身の回りの生物の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,身の回りの生物と環境との関わり, 昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし,表現すること。

(内容の取扱い)

(3)内容の「B生命•地球Jの(1)については,次のとおり取り扱うものとする。

アアの(イ)及び(ウ)については,飼育,栽培を通して行うこと。(以下省略)

 

参加するみなさんに連絡

1・2時間目

昆虫の採集と観察について

楽しんで、おもいつきり採集してみよう!!!ただし、アクティブラーニングを意識しておいてください。

 

3・4時間目

「昆虫の体のつくり」(座学と観察です)

コクワガタの体のつくりは…?

「昆虫を学習するキーワード」

頭•むね•腹        (教科書以外の昆虫でもわかりますか?)   

口や脚と食べ物 (どんな関係が見つかるでしょう カブトムシの口とチョウの口違うのは?                 

昆虫と環境について                    

採集した昆虫は (捕まえた虫はどうしますか?)

その他 昆虫について盛りだくさんの内容です。たとえば、

 

体のつくりをよく見ると生活がわかる。(比較してどんな生活をしている昆虫かがわかります)

ほかの生き物や環境、季節とのかかわりがわかる。

「理科」での「アクティブラーニング」とは!

児童が主体となって深く学ぶには…?

昆虫のよく知っている子どもにもまけない発想を身につけよう。

例を示すと

セミの抜け殼をみて 「これは蛹のからですか。」(どのような課題があるか探ります)

キリギリスとバッタの脚の比較から 「昆虫は肉食ですか、草食ですか。」わかります。

ほかに「冬には生物はいないのでしょうか。」

など

 

これらの質問の答は参加された人のみ(あたりまえですが)

なるほど、こんな方法があったのかと理解してもらえる内容盛りだくさんです。

 

※「アクティブラーニング」とは「能動的な学習Jのことで、授業者が 一方的に児童•生徒に知識伝達をする講義スタイルではなく、児童• 生徒の能動的な学習を取り込んだ授業を総称する用語である。

「児童• 生徒が主体的に活動して学ぶ学習の力」と日本語で言ってほしいよね。

 

今年の夏も予定します。興味のある方は参加おまちしています。


淀川 三川合流 サクラ

2023-03-20 | 市民講座

サクラ 三川合流

サクラの開花が大阪でも始まりました。

今日は 淀川がはじまり、三川合流の堤のサクラの話です。

淀川は桂川、宇治川、木津川の三川が合流するところから始まります。この三川合流地点の京都府八幡市付近の背割地区はサクラの名所として有名です。

 この背割りは明治時代の初めの木津川付け替え工事でできた淀川右岸の堤防が明治30年からの宇治川改修を経て出来た堤で、もともとは松並木だったものを松枯れの進行により1978年に当時の建設省により、ソメイヨシノ250本が植えられたそうです。

 

今はそれらが大きく育って見事な桜並木となっていますが、ソメイヨシノは江戸時代後期に江戸染井町(現在の東京都豊島区駒込~巣鴨周辺)作られたとされています。

中部日本や関東を中心に分布するエドヒガンと伊豆半島、伊豆大島、房総半島に自生するオオシマザクラを親として出来た種間雑種で、明治になってからソメイヨシノと名づけられて量産され、広まった、いわば人工的に作られたサクラの一品種のコピーです。当初、吉野桜と名づけられて出されましたが、1900年(明治33年)にソメイヨシノと命名されました。

ただし、起源については諸説あります。当の奈良の吉野山のサクラは、ヤマザクラです。

野生のサクラは樹齢が400年以上時には1000年ともいわれるサクラが多く、ありますが、その多くはヤマザクラやエドヒガンです。花柄や葉柄に毛があります。樹齢400年以上のものも多く、岐阜県の荘川桜、薄墨桜、などはエドヒガンです。 

オオシマザクラは、花は白色で大きく、香りがよく、葉を塩漬けにしてサクラ餅を包みます。

 そのため伊豆半島付近が分布の中心ですが、色々なところに植栽されています。花柄葉柄とも無毛です。

カスミザクラ花期が遅く、ソメイヨシノやヤマザクラが咲く4月上旬にはまだ蕾も膨らんでいません。他のサクラが散った4月下旬から5月上旬にようやく花を開きます。

ヤマザクラに似ていますが、花柄や葉柄に毛があり、ケヤマザクラとも呼ばれます。開いた葉は表面に毛があり、触るとざらつきます。また、葉の裏面は光沢があります。

サクラの実は人が食べてもサクランボのように美味しくはありません。私たちが食べるサクランボは、セイヨウミザクラやシナミザクラというサクランボを採るための栽培種です。

しかし、野生のサクラの実を鳥たちはよく食べます。鳥によって食べられたサクラの種は運ばれて色々なところに糞と一緒に排泄されます。このように、一旦鳥の消化管の中を通った種はそこで発芽し拡がるわけですが、不思議なことに淀川の河辺林の中にはサクラの木があまり見られません。人が植えたと思われるものはありますが、自然に育ったものはなかなか見られません。(「生きている淀川」より)

もうすぐ花見の季節ですね。


大和川調査で出会ったスミレ

2023-03-19 | 自然観察会

大和川調査で出会ったスミレ

 

名前の由来は花が大工道具の「墨入れ」に似ていることから、という説がある。

 

3月から5月にかけて大和川流域での調査で出会ったスミレの紹介。

源流部ででは サクラスミレ

奈良市内では コタチツボスミレ、スミレ、ノジスミレ

金剛山では シハイスミレ、ツボスミレ、ニオイタチツボスミレ、タチツボスミレ

サクラスミレ 花は日本のスミレ属中最大の大きさ。雌しべが見えない咲き方が特徴のひとつ。

コタチツボスミレ  シーボルトが弟子たちに採集させたものに与えられた名

スミレ 根元から多数の葉や花茎を伸ばして咲いている。

ノジスミレ スミレに似ているが、葉はスミレより基部が広く、やや三角に近い。

シハイスミレ 葉の裏面が紫色をしている

ツボスミレ 湿った山地にはえる

ニオイタチツボスミレ 開花の初期は花は地面近くから、花の最盛期にやがて茎をのばす。

タチツボスミレ 葉は心形できれいなハート形

日本では野草、スミレは草だが世界を見ればスミレは木の種類の方が多い。おどろき


笹部新太郎 と サクラ

2023-03-18 | 兵庫の自然

笹部新太郎 1887~1978)とサクラ

 

笹部新太郎については「生きている武庫川」で武田尾から廃線跡の観察下では入り口近くにある桜の園(亦楽山荘)の説明、「生きている猪名川」では、川西市の多田神社の西に隣接する西方寺にお墓があることなどで、桜の話をするときには必ず紹介する人物である。

武田尾から桜の園方面を望む。

観察かいの様子

生きている猪名川では

「笹部新太郎氏は、東京帝国大学(現 東京大学)法学部に在籍するころより、独学でサクラの研究に取り組みました。父親の「月給取りにはなるな、この世に生を受けた甲斐のある事をのこして死ねば本懐ではないか」ということばを受け、卒業後私財をなげうち、兵庫県宝塚市武田尾の旧国鉄福知山線の武庫川渓谷に、ヤマザクラやエドヒガンなど在来の野生種のサクラを集めた桜の園(亦楽山荘)を作り、サクラの研究や育苗を行ないました。また、夙川のサクラ並木の造成なども指導したり、岐阜県荘川村にあった樹齢450年のエドヒガンの移植を指導されました。水上 勉の小説「桜守」は、笹部新太郎氏をモデルとして書かれています。

現在、笹部 新太朗氏の墓は兵庫県川西市の多田神社の西に隣接する西方寺にあります。」

と紹介する。

夙川の桜並木

 

詳しいことは

公益財団法人白鹿記念酒造博物館のホームページ(https://sake-museum.jp/sakura/

荘川桜のホームぺージ(https://www.jpower.co.jp/sakura/)で柴橋明子さんの取材されている。

またRikuryoWebサイト(https://www.rikuryo.or.jp/)で笹部桜考を連載している小林一郎氏が詳しい。

 

 


もうすぐ花見 猪名川流域で見られるサクラ

2023-03-17 | 兵庫の自然

猪名川流域で見られるサクラ

今年は例年より桜の開花がはやくなるというニュースが聞かれます。

猪名川流域でもつぼみがふくらんできたようです。猪名川のサクラについて紹介します。

 

私たちの身近な公園や学校の校庭、街路樹にはソメイヨシノが植えられ、4月初旬に満開となり、私たちの目を楽しませてくれます。しかし、ソメイヨシノは江戸時代末期に現在の東京都豊島区染井町の植木職人が作り出したものです。江戸時代末期ですと今から100年少ししか経っていません。ソメイヨシノは、花つきはいいのですが、雑種であるため種からあたらしい世代を作ることができません。

ソメイヨシノの親として考えられているのがエドヒガン(アズマヒガン)とオオシマザクラです。エドヒガンは各地に樹齢400年から600年を超えるものがあり、各地の名所のひとつになっているものもあります。たとえば岐阜県荘川村の荘川桜は、御母衣ダムの底に沈むはずの村から、大阪の桜翁と呼ばれた笹部 新太郎氏と京都の植木職人の佐野 藤衛門氏の手によって、園芸史上初めて樹齢400年を超す古木の移植を成功させたことで有名な桜です。このエドヒガンは猪名川周辺の里山にたくさんあり、ソメイヨシノの開花に先立って、ピンクのやや濃い花を咲かせます。

また、もう片方のオオシマザクラは、伊豆大島に多く自生する桜ですが、葉が大きく無毛で桜餅を包む葉としてもよく知られています。葉は、塩漬けにするとクマリンという物質の匂いがします。花は白色で大きな花が咲きます。

 

このほかに猪名川流域ではヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、イヌザクラなど3月下旬から5月上旬にかけていろいろなサクラが私たちの目を楽しませてくれます。(生きている猪名川改訂版より)


太陽の寿命の求め方

2023-03-16 | 市民講座

小学3年生で太陽と地面の様子を学習する。日陰の位置と太陽の動き、地面の暖かさや湿り気の違い。

6年で月と太陽の関係を学習する。月の位置や形と太陽の位置について

中学3年で、太陽系と恒星について、太陽の様子、惑星と恒星(銀河系の存在を含む)

サイエンス雑誌をよくしっている小学生は 太陽の寿命100億年のことを自慢して教えてくれます。

どうやって100億年がわかったの?。突っ込みができます。今回は 太陽のはなし。

 

「天球上で、恒久的にその位置を変えない」と言う意味から名づけられた恒星は、「自分から輝いている星」と教えられてきました。これをもう少し詳しく「原子核融合反応をして、光やエネルギーを放出している星」と定義します。こうすると、我々の生命活動の全エネルギー源となっている太陽は、最も身近な恒星であることに気がつきます。

 太陽は、宇宙の中ではごく平凡な恒星のひとつなので、太陽の研究は恒星の世界を知る上でも大変重要な学習となります。そこで、太陽すなわち恒星のエネルギー源=原子核融合反応、および、表面温度について学習しましょう。

 図および表の説明は省略しますが、太陽は、半径が地球の 109倍、 質量が 33万倍、 そして、中心温度が 1500万K( 地球は 6千数百K)、中心気圧 2.4×1011(2400億気圧)(地球は36万気圧)、の超高温、高圧の巨大なガス球であることに注意しましょう。

 

1.太陽の核融合反応

  太陽からは、水素(81.76 %)、 ヘリウム(18.17 %)、 酸素(0.03%)、 マグネシウム(0.02%)など、70以上の元素と20種ほどの化合物が発見されていますが、その主成分は水素です。

 さて、太陽の中心部は超高圧で1500万Kを越える高温になっているので、水素の原子核は下図のように反応して高エネルギーのγ(ガンマ)線を放出します。この反応を p-p反応(プロトンープロトン反応)と言います。(太陽はこのp-p反応の他にC-N-O反応もしていますが、今回は省略します)

 

結果的に、4個の水素の原子核が融合してヘリウムの原子核になるのですが(41H→4He)、この時ほんの少し質量が減っています。

これを計算してみましょう。

      水素の質量                            1.0079u

      〃 4個の  〃              1.0079×4 =4.0316u

      ヘリウムの質量            -)         4.0026u

      P-P 反応の結果     (4.0316 -4.0026)   0.0290u   

即ち、4.0316uの水素が完全にヘリウムに変換すると、0.0290u だけ質量が減ることになります。( これを質量欠損と言います)  従って、1gの水素からは     4.0316  ……  0.0290

      1(g)    ……    X(g)    

 ∴  X=0.0290÷4.0316=0.007193(g)

の質量が欠損してエネルギーに変わったことになります。

単位を㎏に直して表しますと、1㎏の水素からは 0.0072 ㎏の質量が欠損しエネルギーに変わることになります。

 さて、相対論によりますと、質量mkgの物質は、 m・c2  ジュール(cは光速度=3.0 ×108m/s) のエネルギーを持っていますので、 水素1kg あたりの欠損した質量 0.0072kgは、0.0072×(3.0 ×108 )2 =6.48×1014          すなわち、約 6.5 ×1014 ジュール のエネルギー分になります。従って、太陽がすべて水素からできているとして、 その質量を 2.0 ×1030kg  とすると、 太陽がその水素をすべてヘリウムに変換すれば

  6.5 ×1014 ×2.0 ×1030 =1.3 ×1045  ジュール のエネルギーを一生かかって放出することになります。

 ただし、この P-P反応は太陽の中心部のみで起こっているので、水素すべてがヘリウムに変換されるわけではなく、 実際にはこの半分程度と見積もられています。

 

2.太陽の寿命

  太陽が一生かかって放出するエネルギーを計算しましたが、別の計算から太陽が1年間に放出しているエネルギー量は、1.2×1034 ジュール と分かっています。従って太陽が誕生してから燃え尽きるまでは、

   (1.3 ×1045 )÷(1.2×1034 )≒1.0×1011 、すなわち、約1000億年かかることになります。 

 しかし、先に書いたように、核融合は中心部にしかおこらないので、太陽の寿命も 10 分の1 ほどとひかえめに見積もって、

    1000億年×(1/10)=100 億年           これが太陽の寿命でなのです。

 太陽は、誕生以来すでに 50億年が経過していますので、残り50億年の命となります。

 

*細かい計算とおおざっぱな見積もりとが一緒になって太陽の寿命が推定されました。不変のように思われる太陽や星に寿命があることが理解できただけでも面白いと思います。もちろん、太陽の寿命とともに地球も終わりです。

 

左図は、各波長のエネルギーの強さ(放射強度)と波長との関係を示しています。

 ウイーンは、放射強度の最大の波長(最強波長=λ)と放射物体の表面温度T K との間に  λ・T=0.0029    

λ; 最強波長(m)   の関係が成り立つことを示しました。(ウイーンの変位法則)

 

太陽は、いろいろな波長のエネルギーを放射していますが、太陽の最強波長λは、5 ×10-7m なので、上式に代入すると

 T=0.0029/(5×10-7 )≒5800K

 すなわち、約6000Kとなります。                   

この法則は、恒星の表面温度を求める時にも使われる大切な式です。

 

私達がものを見る時、その表面の光の波長の中、最も強いものを認識します。緑の葉は、太陽光線の中、緑の波長の部分を最も強く反射しているのです。

太陽は 5×10-7  付近、すなわち黄色の波長が最も強く出ているので、太陽の色は黄色と呼ぶのです。でも、実際は地球大気の影響もあって、昼間の太陽は白く、朝・夕方の太陽は赤く、また大きく見えます。

 

参考図書;新地学(文英堂)、総合地学図録(数研出版)、チャート式地学(数研出版)、その他


水の中の小さな生き物 夏の教員向け講座

2023-03-15 | 市民講座

毎年夏休みに「水の中の小さな生き物」を題に兵庫県立人と自然の博物館で教員向けのセミナーをおこなっています。私たちのNPOが教職員向けにセミナーを始めたのは、もう25年まえになります。

現在の理科の指導では

6年理科「生物と環境」のなかで・生物と水、空気との関わり・食べ物による生物の関係(水中の小さな生物を含む)・ヒトと環境の指導内容のなかでプランクトンを指導します。

そこでは、「食べ物による生物の関係」=食物連鎖についても学習します。

プランクトンが小さい魚に食べられ、その魚は中型の魚に食べられ、それらは、大きな魚に食べられる。

ただ、教科書だけでは、子どもたちの満足は得られないでしょう。子どもは自然に対する興味はたくさんあるけど、そのことに対応できる教員はどのくらいいらっしゃるのか?。

講座では水の中の小さな生き物を顕微鏡で観察するとたくさんのプランクトンをみることになります。

教科書に出てくる図や写真だけではわからない多くの種類に驚き、その中でも食物連鎖があることがわかります。

 

当会の行っている講座は、水の中の小さな生き物は身近なところから集めて観察します。集め方や観察の方法がうまくいかず、指導がむつかしいと感じる先生も多いようで、人気の講座になっています。

手軽に、上手に微生物を集めて観察する方法を紹介して先生方に喜んでもらっています。

 

小学校の学習では、環境教育の中に生物多様性がテーマとして大きく取り上げられています。しかし、「生物多様性」が実際に扱われているのは、中学3年生の理科第2分野で生命の種類の多様性と進化としてしかでてきません。しかも、SDGsとの関わりが全く触れられていません。

ですから先生方に「生物多様性について」子どもたちにどのように理解させていくかのヒントも講座に盛り込んでいきたいと思っています。

今年の夏もおたのしみに


兵庫県のタンポポの秘密

2023-03-14 | 兵庫の自然

兵庫県の在来タンポポ

田んぼの畦や山のへりではタンポポが咲き始めている。早いのがセイヨウタンポポ、寒い冬のなかでもみられた。

そのなかに、白い色のタンポポも、

今回はタンポポ調査から兵庫のタンポポのことについて

 

北のヤマザトタンポポ、南のカンサイタンポポ

タンポポ調査が2015年西日本で行われました。兵庫県では人と自然の博物館が兵庫県のタンポポ調査を集約しました。大阪で1975年にはじまったタンポポ調査は全国各地で広がりました。しかし、90年代に入って在来種と外来種のタンポポの間に雑種が形成されていることがわかりタンポポ調査の意義について疑問が出されたこともあり,あまり行われなくなりました。

タンポポ調査を西日本では継続的に行われ、2014~2015年に行われた調査報告があます。

 

タンポポの花のつくりからカンサイタンポポとセイヨウタンポポを見分ける。

 

タンポポを見分けるポイントになるのは、花の色とこの頭花の下の部分、セイヨウタンポポでは緑色の反り返った部分です。これを「総苞;そうほう」といいます。 

カンサイタンポポではこの部分は反り返らず、頭花に着いています

 

兵庫県にはもう一種類、ヤマザトタンポポがあります。

但馬•丹後•丹波の植物を調べた荒木英一氏が豊岡市出石町東 床尾山で採集した標本に基づいて、京都大学の北村四郎先生が1933 (昭和 8)年に新種として発表したものです。ヤマザトタンポポのタイプ標本(名前をつけた時の証拠(しょうこ)となる標本のこと)は、高知県の牧野(まきの)植物園に保管されており、そのラベルには採集地が兵庫県出石郡東床尾(とこのお)山と書かれています。

ヤマザトタンポポは花弁は黄色で総苞外片が上を向いていて、カンサイタンポポとまち がえられることが多いのですが、頭花が大きいこと、花の色がややうすいこと、そして花粉の形が違うので見分けられます。ヤマザトタンポポは北陸から山陰にかけての範囲に広く分布しており、岡山県北部・広島県東部にもある程度の分布があります。

ひとはく新聞より

この調査をまとめた鈴木 武(自然環境再生研究部)氏は次のような結論を発表しています。

「兵庫県のタンポポ調査データから、驚くべきことがわかってきました。 兵庫県の南部ではごく普通のカンサイタンポポは県北部の但馬にはほとんど なく、逆にヤマザトタンボポは但馬にはわリと分布していることがわかリました(図1)。ヤマザトタンポポは兵庫県RDBでは最も高いAランクでした。

が、この結果を受けて2009年の改訂でCランクとなりました。

図1の①の太線は但馬国の境界です。これを境に、カンサイタンポポは 南に、ヤマザトタンポポは北にほぼ分かれています。このあたりは中国山地ですので、平地に生えるタンポポは山を越えられないのかもしれません。

「タンポポ調査•西日本2010」により、ヤマザトタンポポは日本海側の 山陰地方に広く分布しておリ、山陰を象徴する植物といってよさそうで す。たかがタンポポですがなかなか奥が深いものです。

鈴木武(自然•環境再生研究部)」

参考文献 兵庫県および京都府北西部の在来タンポポの分布(鈴木 武, 菅村 定昌, 武田 義明)


大和川ウォッチング 春の植物

2023-03-13 | 自然観察会

大和川ウォッチング 春の植物

 

大和川の上流の奈良盆地には156本の支川が流れ込みます。出口は奈良県の王寺町で1本になります。一本になった大和川は亀の瀬と呼ばれる渓谷を経て大阪へ流れていきます。

亀の瀬は、大和川の水が奈良から大阪へ流れるたったひとつの出口です。

亀の瀬で地すべりが起こって大和川がふさがれると、奈良盆地は水没し、大洪水になってしまいます。その水は、やがて鉄砲水となって大阪平野を襲い、大阪平野も水没してしまいます。過去の地すべりの際には亀の瀬付近の地形も変わっています。

王子のところで紅葉で有名は竜田川が合流しますが、古代から江戸時代まで、亀の瀬付近の大和川は、龍田川と呼ばれていました。

現在の竜田川は、平群川を竜田川に変えたものです。名称が変わり、紅葉を植えて名所となっています。

亀の瀬で見られた植物 春

クサフジ(マメ科)牧草として利用されていたのが逃げ出した植物。奈良盆地から大和川下流まで各地で群落として見られます。         

セイヨウカラシナ(アブラナ科)元々食用として導入されたものが野化しました。春の川原を一面黄色に染めてくれます。

ホトケノザ(シソ科)春の七草に数えられる「仏の座」とは違います。畑の付近や土が肥沃な場所では、ホトケノザが群生している様子をよく見かけます。

カンサイタンポポ(キク科)長野県以西の本州、四国、九州、南西外に分布している。カントウタンポポ、トウカイタンポポなど地域のタンポポと外来のセイヨウタンポポのように全国に広がったタンポポも。

シロバナタンポポ(キク科)染色体数は5nであり、単為生殖を行う。総苞外片はやや反り返り突起が顕著である。タンポポは黄色と思っている人は島根、高知、愛媛、大分、熊本、宮崎では、過半数の方が「白色」と答えるのは驚き。

ハルノノゲシ(キク科)このような黄色い花を観ると子どもたちタンポポと答えますが、この花はノゲシといいます。秋に咲くアキノノゲシがあるので、春に咲くのでハルノノゲシ。史前帰化植物のひとつ。

オオイヌノフグリ(オオバコ科)明治の初めにヨーロッパから日本に伝わってきた。ゴマノハグサ科とされていたのですが、現在はDNAの分析により、オオバコ科となりました。今まで当会で出版した本は訂正しないといけません。

オランダミミナグサ(ナデシコ科)ヨーロッパ原産の越年草。今世界中で見られる野草です。

カラスノエンドウ(マメ科)本州以南に分布。畑や道端、空き地などでよく見られます。

タネツケバナ(アブラナ科)水田や水路の周辺など、湿り気のある場所で見られます。イネの種を水に漬けて発芽させるころ花が咲くというのが名前の由来。

ムラサキカタバミ(カタバミ科)南米原産。直径2ミリほどの小さな球根をたくさんつけて増えます。環境省に「要注意外来生物」と指定されています。

キュウリグサ(ムラサキ科)葉っぱをこすったりちぎったりするとキュウリの香りがするのがな前の由来。春に青色の 小さい5弁花がカレン。

 

その他

カニクサ、ネコヤナギ、ママコノシリヌグイ、イタドリ、ギシギシ、シロアカザ、アケビ、ヨウシュヤマゴボウ、ノイバラ、クサイチゴ、ヌスビトハギ、ヤブガラシ、カタバミ、ノブドウ、チドメグサ、メハジキ、クコ、ハルジオン、オニノゲシ、カンサイタンポポ、オオオナモミ、ヤマノイモ、メヒシバ、アキノエノコログサ など


牧野富太郎と兵庫県の花

2023-03-12 | 兵庫の自然

牧野富太郎と兵庫県の花 ノジギク 

日本の植物分類学の父といわれる牧野富太郎博士が、朝のNHK連続テレビ小説の主人公のモデルになって今年の4月放送されという。牧野富太郎と兵庫県の花ノジギクの関係について紹介する。

晩秋、一年の遅くまで花を咲かせる菊の花がノジギク。

ノジギクの分布は、豊後水道に面した四国西岸(高知県、愛媛県)と九州東岸(大分県、宮崎県、鹿児島県)を中心とし、一部は瀬戸内海に面した地域(山口県、広島県)にも生育し、その東限は兵庫県(姫路市等、淡路島)となっています。

かつては、 塩田の間を縦横に走る水路(澪みお)の土手に、枝いっぱいに咲き乱れていました。また、八家•的形•大塩の山々には、真っ白に見えるほど 群生していました。しかし、今では開発が進み、少なくなってしまいました。県レッドデータブックはCランク(準絶滅危惧)に指定しています。

 

兵庫県の花になったのは

昭和29年(1954年)、NHKなどが全国各都道府県を代表する花を募集したとき、ノジギクが兵庫県の鄕土の花として選ばれました。それ以後、「県花」として広く県民に親しまれるようになりました。

 

 

牧野博士が命名

ノジギクは、明治17年(1884年)11月に、日本植物分類学の父といわれている牧野富太郎博士が、郷土の高知県吾川郡吾川村川口の仁淀川沿いの路傍で発見し、命名したものです。

ノジギクは海岸からせいぜい4km〜5kmまでの所にしか生息しないとされていますが、発見された

場所は、海岸から30kmも奥に入った山あいの地です。その謎はまだ明らかにされていません。

ノジギクの分布は先に述べましたが、香川県や岡山県では見つかっていません。豊後水道に面した地域と兵庫県に生育するノジギクにはギャップがあり、兵庫県のノジギクが豊後水道に面した地域に生育するノジギクと起源を同じであるとはよくわかっていません。