和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

地震の話はね、聞きたくないんです。

2018-07-02 | 地震
職人を読みたくって、何気なく
山本夏彦著「『室内』40年」(文藝春秋)を
本棚から取り出す。

山本夏彦のコラムは、以前に
「諸君!」で知ってから、文藝春秋でも読み、
分からない癖して、やみつきになっておりました。

その流れで「『室内』40年」も単行本を
買ってあったのですが、何かコラムとは
毛色が違うので、読まずにそのままでした。
それが無事、読み頃を迎えたようです(笑)。


ちなみに、山本夏彦氏は雑誌「室内」の編集長。
この「『室内』40年」では
自分とこの女性編集者に質問させて、
それに答えてゆくという語り物です。
雑誌の歴史ということで、堰を切ったように流れ出る。
まるで、黒柳徹子さんがペラペラと喋ってゆくように、
くるくる話題がかわってゆき、さて、何を話していたのか
本人も、そして読者もわからなくなってくると、
女性編集者が忘れた頃に、舵をとるという対話形式。


わたしは、まだ半分くらいしか読み進めていないのですが、
さて、もう最初の方は、何が語られていたのかと忘れてる。


たとえば、『人は本には金を惜しむ』(p34)
なんて言葉がポンとある。

これに対しての社長と編集者の会話

――― 今でも感心したから『室内』の記事コピーさせてくれって
言う人がいます。

山本】 いるいる。減ったけれどまだいる。

――― 黙ってコピーするならまだいいけれど、
電話で得意そうに言う人がいる。
コピーして皆で読ませて頂きましたって。

山本】 まるごとコピーしたら、買うより高くつくはずですよ。
コピーは会社のものだから、タダだと思うなら卑しいって
そう書いといてよ。カゲでやるんならいい。電話かけてくる。
『文藝春秋』に出ているから値打があるんでね、
そこだけコピーしたら値打は半減する。
『室内』に出てても値打がないっておっしゃるんですか。

――― そう電話で言ったんですか。

山本】一度はね。大会社の課長だか知らないが、
それは一箇の失礼ではないかと言っても分からない。
それでもコピーしたいんなら、黙って勝手におやんなさい。
(~p35)


こんな話題を振りまきながら、雑誌『室内』の歴史が
語られてゆくのですが、ちょうど、私には読み頃(笑)。


そういえば、地震について
語られている箇所があるので、
せっかくですから、こちらも引用。


――― 清水(幾太郎)さんが近く大地震が来るぞ
と説いているのをご存じだったんですね。

山本】 ああ聞いていた。けれども地震は票にならない。
秦野章が地震は票になると誤解して、東京都知事選を
美濃部亮吉と争った。そして失敗した。
地震の話はね聞きたくないんです。
いずれはあるに決まってるんだから。
当時は六十年に一度はあると信じられていた。・・・

――― 地震は票にならないっていうのは
どういうことですか。

山本】 地震で壊滅するのはいつも本所深川です。
次もそうに決まっているから、そこへ行って
選挙演説したんです。ところが誰も聞いてくれない。
地震の話は聞きたくない、あれは天災だ、運だ、
猫の額みたいな、あんな『火よけ地』で助かる
はずがないと知っているから耳をかさない。

――― 今度の阪神大震災で関心が高まってます。

山本】・・・・・・
でもねえ・・・建築雑誌は地震をとりあげない。
見ててごらん地震の特集をするかしないか。
日建設計の林昌二さんに『JIA』(新日本建築協会が
出す月刊の機関誌)で扱いますかって聞いたら、
扱わないでしょう、って言ってました。
なぜ扱わないかって聞いたら専門家として
やろうとするからでしょうと答えた。
専門家ならいいかげんなことはできない、
データが揃うのを待っていたら
何年かかるかわかりません。
揃う頃にはもう地震のことなんか忘れている。
(~p45)


そういえば、山本夏彦対談集の
「浮き世のことは笑うよりほかなし」(講談社)。
そこに、清水幾太郎氏との対談がありました。
題して
「誰も聞いてくれない地震の話」。

こちらも、本棚から取り出して、
もう一度、読んでみなくっちゃ。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 足を引っ張ってはならない。 | トップ | ベテラン記者たちの定年。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

地震」カテゴリの最新記事