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和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

塞がれたポスト。

2011-05-10 | 手紙
毎日歌壇5月8日の伊藤一彦選の3首目でした。

 投函にくればポストに紙貼られ塞がれてをり
地震(なゐ)のためにと
         横手市 浦部昭人

思い浮かんだのは、「1995年1月・神戸」(みすず書房)。
その中井久夫氏の「災害がほんとうに襲った時」のこの箇所でした。

「・・・・郵政の末端は非常な努力で震災の翌々日には私の家にも配達を実施してくれた。特定郵便局の老局長さんみずからのバイク姿の御出馬であった。普通ハガキで四日から七日、速達はずっと早かった。郵便小包も次々に配達された。私も20年前に診てなお入院中の方から一万円、10年前に一度相談に乗った方から多量の鉱泉水などを頂いて驚いた。他にもかつての患者さんからの物資、見舞い、手紙がもっとも多かった。しかも年賀状を欠礼してしまった前任地、前々任地からの御贈り物もあった。これらの意義をさとって配達された郵政省の職員に敬意を表したい。
地震当日が私どもの地区の荒ごみ収集日であった。さすがに当日は清掃局の収集車が来なかったが二日遅れできちんと収集され、次回からは定時に収集が行われた。驚くべきことである。・・・それほど、私のあたりは被害が少なかった。不条理な話であるが、ふだんは意識しない地盤と家屋構造と破断の走り方とによって明暗は大きく分かれたのである。」

明暗がわかれるといえば、
3月23日読売新聞に山崎正和氏が「震災克服への展望」という談話をのせておりました。
その最後に、こんな箇所があります。

「阪神大震災で被災した16年前、私は『おにぎりも、文化も』を合言葉に文化復興に奔走した。発生からほどなくして、荷物をまとめ兵庫県西宮市の自宅から京都方面に避難したのだが、(西宮・尼崎市境の)武庫川を渡った途端、被災地とは別世界が広がっていた。それを思い起こすと、今回の大震災は被害がけた違いだ。文化を含めて人々が心理的安定を取り戻し、できるところから平常心をよみがえらせていくことは大切ではあるが、その事を口にするにはもう少し時間がかかるかもしれない。」

ちなみに、山崎氏の談話のはじめのほうには、こうありました。

「戦後最大の国難というほかない。・・・・再び戦後復興に取り組むくらいの覚悟が必要だ。救いは全土が焼け野原だった戦後に比べて、今回は東京以西のインフラ(社会基盤)がほぼ無事なことだ。日本人は『災害復興型』の国民だと思う。太平の時代、文化は爛熟するが、元気に乏しい。だが、いざ国難に直面すると、奮起する国民性なのだ。今回も、日頃はとかく『内向き』と評される若い世代が頑張ってくれるのではないか。そう考えるのは、私もまた、災害復興型の心理状態にあるのかもしれない。」


さて、もう五月になっておりました。
今日「文藝春秋」6月号が発売。
巻頭随筆は立花隆氏。そこに

「・・大震災以後しばらく、TVから商業コマーシャルがいっせいに消え、その代りうるさいほどに『日本は強い国』『みんな一緒』『絶対乗りこえられる』を強調するACジャパンの公共コマーシャルが流された。あの連呼を聞いていると、私のような世代は、戦争時代の『国民精神総動員運動』を思い出してしまう。何か危ない時代に突入しつつあるような気がして、逆にこの道を行くと国家的苦難を絶対乗りこえられないのではないかという気がしてきてしまう。」


かたや、戦後復興型。
こなた、戦争時代の思い出。

ところで、「塞がれたポスト」
あれから、投函できたのでしょうか。

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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他人への思いやりが無い立花氏 (熊五郎)
2011-05-11 09:55:02
震災を体験し自分のこととして捉えている方と他人事と捉えてる方の考え方の違いが出て興味深い対比でした。

うるさいと思えるほどTVを観ている立花氏には、TVが観れない被災者や被災者への支援を考える優しい心を持つ日本人にも、立花氏と同じ世代の日本人がいることを忘れないで欲しい。

個人的には立花氏は似非保守の匂いがして彼の東大に関する連載が始まって以来文藝春秋の定期購読を止め、それ以来読んでいません。
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2つの神話。 (和田浦海岸)
2011-05-12 10:16:40
熊五郎さん、コメントありがとうございます。私も文芸春秋の定期購読をやめた口なので、その共通項から、ちょっと語ってみたくなりました。私は雑誌はWILLを定期購読しております。そこに蒟蒻問答という対談が連載されており、堤尭氏の顔写真が毎回載っております。堤氏の経歴はというと、「文藝春秋」編集長、第一編集局長、出版総局長などを歴任、常務を経て退社。とあります。その方がWILLに連載を持っておられる。これが前置き。では6月号での堤氏の対談での言葉を引用。「久保ちゃんの言うとおり、原発神話があって、日本人はそれを信じていた。関係者はそれを信じるフリをしていた。同じように、憲法九条神話もあって、九条があれば日本は平和で安全だと信じていた。しかし、神話とは根拠がないから神話というんだ。あくまでフィクションでしかないんだ。前回話したように、日本を脅かすものは戦争と天災だ。今回、天災が起きて、一つの神話が崩れた。そして、非常事態宣言も厳戒令もない事態の意味がはっきりわかっただろう。だったら、戦争に備えて、もう一つの神話を考え直すしかない。今こそ、さっき久保ちゃんが言ったように・・・」(p96)

うん。定期購読はいま、WILLがお薦め。
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福島市に住んでいます (さつき)
2011-05-13 10:49:51
福島市に住んでいます。幸い我が家は震災の被害はありませんでした。電気が3日止まって、断水が1週間程ありました。
ポストは塞がれましたが、新聞は毎日配達されました。震災の翌日から届けられていました。いろいろな情報が得られて助かりました。また、全国の方々の暖かいお心を新聞を通して知り感激しております。我が家は福島民報と言う地方紙をとっております。
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福島民報。 (和田浦海岸)
2011-05-13 19:10:19
さつき様。コメントありがとうございます。そちらのポストも塞がれたのですね。私は千葉県の南房総市に住んでおります。家族の一員が山形に今いるので、その時は携帯が通じず、手紙を出すと14日(月曜日)に届いたと連絡がありました。震災からガソリンが不足していて、配達がままならない状況のなか、福島民報が毎日配達されたとのこと、情報にもぬくもりが感じられ、心強いかったですね。ご連絡ありがとうございます。
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