和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

夏彦・七平。

2015-02-03 | 短文紹介
昨日は『彦』つながりの夏彦・正彦。
今日は『山本』つながりの夏彦・七平。

ということで、山本夏彦・山本七平
対談集「意地悪は死なず」(講談社)から
一箇所引用。

七平】 『旧約聖書』ってのは人間の正義ってのを
信用しないんです。面白いですよ、ユダヤ人って
いうのは。
『人間の正義は汚れた下着である』という
有名な言葉があるんです。『汚れた下着』って
いうのは日本語の訳でして、ほんとのこと言うと、
ちょっと女性の前で口にできないような言葉
なんですよ、これ。

夏彦】 そうですか。

七平】 なんて言いますかな、
『メンスの血で汚れた布である』というんです。

夏彦】 うん、聞いたことある。

七平】 昔、ほら『汚(けが)れている』という
言葉があったでしょう。『正義は人を汚す』という
非常に面白い発想があるんです。正義を口にすると
その人間は汚れるというのね。

夏彦】 そうですよ、ほんとですよ。

七平】 ねえ、だからこれは健全なんですよ。
正義をうっかり口にすると、その人間は汚れる・・

(p104~105)

うん。ここだけ引用したら、汚れの
イメージだけが残っちゃうので
もう一箇所引用します。

夏彦】 『男子の本懐』っていう小説では
浜口雄幸、井上準之助の両人は私利私欲を
忘れて国事に奔走した志士仁人(じんじん)
みたいに書いてあるけれど、当時の新聞は
二人ばかりか政治家全部を財閥の走狗(そうく)
走狗ってイヌのことですよ。
利権の亡者とかって書くこと今とおんなじですよ。
それをうのみにして佐郷屋留雄(さごうやとめお)
以下は政治家を殺したんです。

七平】 そうなんです。

夏彦】 だから新聞が教唆(きょうさ)して
殺させたようなものなんです。

七平】 いや、原敬を殺した十九歳の駅員
中岡艮一(なかおかこんいち)の判決には
ちゃんとそれが書いてある。
『新聞雑誌の記事を信じ』っていう言葉が
それには出ているんですよ。

夏彦】 そうですそうです、思いだしました。

七平】 だから彼を罰するにはちょっと抵抗を
感ずるっていうことがちゃんと書いてあります。
倫理的に言えば一半の責任は新聞雑誌にある
っていうことをあの判決は言っているんです。
今になって原敬は立派だっていわれてますけど、
あの当時はとんでもない、生かしておけない
人間ってことになっていたんです。
(p115)

山本夏彦・山本七平対談はたしか
二冊でていたと思います。


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