「大倉源次郎の能楽談義」(淡交社・2017年)を手にしました。
あとがきで
「近年の自然災害の中で、能楽の鎮魂の役目も大きな要素
として見直されたことは、素晴らしいことと思っています。」(p269)
本文のはじまりは、「翁(おきな)」からでした。
「かつては、一日の一番始めに上演する演目は
『翁』と決められていました。今でも、
新しい舞台を初めて使う時や、正月などの節目には
『翁』を上演します。・・・・
この本もまた、『翁』の話しから始めてみたいと思います。」(p10)
「目の前に能舞台があると思ってください。・・・
舞台の上には、何も置かれていません。
そこへ、一人ずつ、役者が登場します。
総勢28人。全員が座に着くや否や、
笛が吹きはじめられ、小鼓が打ち出されます。・・・
この『翁』というのは、一般的にいう演劇のような
ストーリーが展開するというものではないのです。
人間ドラマのようなストーリーが始まる以前の、
『世界の始まり』を表しているといったほうがよさそうです。
・・・・
神々に模した役者が揃い、風である笛が鳴り、
小鼓が『陰陽』を打ち分けることで、
天地が分かれることを象徴します。」(~p13)
「翁では、他の能の演目にはない、大変特殊な演出が行われます。
それは、大夫(たゆう)が素顔(直面・ひためん)で登場し、
舞台上で面(おもて)を掛けるという演出です。その面は、
『翁』という老人がにこやかに微笑む面なのです。・・・」(p15)
「『翁』は囃子(はやし・音楽)の技術面からみても、
『能にして能にあらず』といえると思います。
他の能楽の曲目とは異なる点として、
一つのリズム体系の中で、謡(うたい)の詞章と囃子とが、
拍子(ひょうし)に合わせて合奏する場面が全くないことが
挙げられるでしょう。
謡は謡で力一杯謡い進め、
囃子も原初的なリズムパターンを間断なく演奏して、
結果的に逆に全てが同期していくような、
『アシラウ』という演奏形態です。
小鼓は、この曲に限り三人で演奏し・・・
地謡(じうたい)のリーダーである『地頭(じがしら)』とともに、
阿吽(あうん)の呼吸で要所要所を同期させ、
段落を決めていきます。」
はい。もうすこし引用を、続けさせてください。
「そして、若さと可能性を想起させる『千歳(せんざい)』の
舞に引き続き、翁は『天地人』を定めた祈りの舞を舞い納め、
面を外して退場します。
『翁』が終わると、続いて、三番叟(さんばそう)が
『揉(もみ)出し』という大鼓(おおつづみ)の入った
賑やかな演奏で登場し、大地踏みの『揉之段』、
苗が芽を出して穂が実るまでを祈念する『鈴之段』が続きます。
・・・・・・・・
『揉之段』『鈴之段』という、舞にあたる部分は、
陰陽の鼓が整った器楽曲で、謡は入りませんが、
舞手は掛け声をそこに被(かぶ)せます。
舞手の呼吸のリズムが、囃子のリズムと相まって、
躍動感、生命力が、そこに同座する観客の息と同調し、
不思議な一体感が生まれます。・・」(p17)
はい。これが本文のはじまりの箇所になります。大切な
水先案内人にめぐりあったという手応えを感じさせます。
はい。私の引用はここまで。
全く知らない世界ですが、なんだか素晴らしい水先案内人の予感がします・・・
ところで、杉本秀太郎氏の「文学の紋帖」の古本が届きました。 私には、もう1冊の安野光雅さんが絵を担当された「みちの辺の花」の方が親しみやすいですが・・・ ボチボチ楽しんでいきたいと思います。
はい。
「大倉源次郎の能楽談義」の本の話。
表紙カバーは、カラー写真で
「奈良・談山神社拝殿にて小鼓を打つ大倉源次郎」
拝殿の内から撮られていて、背景が庭の木々を
写しこんでいて、まるで鼓の音が部屋から外へと
広がるのが聞こえてきそうです。
本文にはところどころ白黒写真が載り、
本の真ん中にはカラー写真が30㌻ほど。
何か大切なものを丁寧に包んで贈られた
ような一冊になっておりました。
あとがきの最後も引用したくなります。
「本書の上梓に際して、内容のもとになった
講座を開催していただいた京都・有斐斎弘道館
の皆様、膨大かつ煩雑な作業を抜群のチームワーク
で昼夜の労を厭わずに進めてくださった編集スタッフの生田ケイ子様、濱崎加奈子様、原瑠璃彦様、
その総まとめを行ってくださった淡交社の
河村尚子様、そして・・・・」
うん。何でこんな引用をしたかっていうと、
のりさんにも手にして頂きたいと
つい、思ってしまったのでした。
能は あまり鑑賞したことがないですが
彼の解説つきの舞台を鑑賞したことがあります。
以前ブログをされていたのですが。。。
きさらさんは、ファンなんですね。
こんな身近に、ファンがいたなんて。
扶桑社からの最新刊(2021年3月31日)で
大倉源次郎著「能から紐解く日本史」が
出ているようですが、わたしはといえば、
淡交社のこの「能楽談義」で満腹・満足。
ファンだということで、思い浮かびました。
淡交社「大倉源次郎の能楽談義」は
そのファンの方々が『労を厭わず』に、
つくり上げた作品のような一冊ですね。
そう思うと、しっくりする一冊ですね。
図書館で借りて読み始めました。
かなり詳しく丁寧に書かれていて
メモしながら読んでいますが
なかなか先へ進めません。
返却に間に合わなかったら 買おうかなあ。。。
何も能に関する知識のない私には どれも勉強になる事柄です。
知識をある程度吸収できたら またいつの日か
舞台を見に行きたいなと思っています。
ちなみに
源次郎さんは 関西ご出身です。!(^^)!
うん。新刊を読まれているのですね。
わたしはまだまだ旧刊の途中でした。