父が愛用していたニッコールレンズが帰ってきました。
「帰ってきた」と申しますのは、このたび、ニコンが期間限定で行っているMF旧製品メンテナンスサービスに、父のニッコールレンズを預けていたからなのです。
3月中旬に申し込みをして、だいたい2ヶ月くらい。
父のレンズは、きれいになって帰ってきました。
左〈135ミリ/f2.8〉と、右〈50ミリ/f1.4〉の2本です。
昭和3年生まれの父は、質素で実直な人でした。
そんな父が、家族の写真を撮るために選んだカメラは、Nikon FE。
そして、この2本のニッコール・レンズでした。
昭和53(1978)年4月に発表されたFEは、絞り優先・1/1000秒電子シャッター搭載の銀塩一眼レフカメラです。
部品の40%を別のモデル(FM)と共通にしたことでコストダウンがはかられていたそうです。
この絞り優先のカメラ1台と50ミリ、135ミリの単焦点レンズ2本。
それが、父のカメラ・システムのすべてでした。
父は、このシステムで家族の写真をたくさん撮ったと思います。
もちろん、フィルムカメラですから、今のように気軽にいくらでもシャッターを押すことはできません。
デジカメに慣らされてしまった現代では考えられないほど、かつて、シャッターを押すという行為は緊張を伴うものでした。
それでも、実家にはたくさんの家族のアルバムが残っています。
お正月には三脚を立て、セルフタイマーで家族全員の写真を撮りました。
夏休みに海ではしゃぐ私たち兄弟妹のスナップもあります。
入学式や卒業式の写真、それから、田舎から遊びにきた親戚のおじさん、おばさん。
可愛がっていたネコや、近所のおうちで生まれた子犬の写真。
そのほとんどが、父がファインダーをのぞき、絞り値を決め、ピントを合わせ、そしてシャッターを押して撮った写真です。
父が好きだったニコンのカメラ。
大切にしようと思います。