乗鞍岳への自転車道

40歳で突如、自転車乗りになろうと発心して早15年。CAAD9少佐と畳平へ駆け上がる日はくるのでしょうか。。。(汗)

雨の中、また銀座の伊東屋さんへ行った日

2012年06月17日 | 日常

今日は、仕事が終わってから、また銀座の伊東屋さんへ行きました。
それと申しますのは、友人Kが先日購入したばかりの「ペリカンM805」のペン先を伊東屋さんで調整してもらうというので、わたくしは、またそれに付き添って参ったわけです。

ああ、、、前回、わたくしが伊東屋さんに参りましたのは「蒔絵の万年筆 美しい日本の伝統」開催中でございました。
そこで思い切り、並木の研出高蒔絵にヤラレてから、はや半月。
今日あたり、伊東屋さんに足を踏み入れるのは極めて危険でございます(汗)

さて、MFの万年筆売り場でKが店員さんとやりとりしている間、わたくしは当然のことながら、
並木のガラスケースにむけて突進していったのであります!

ところが、、、

銀座伊東屋さんのレイアウトをご存じの方にはわかっていただけると思うのですが、並木コーナーは、万年筆売り場の隅の、ちょうど90度の壁の角のところに配置されているのですけれども、、、
本日のその時間は、どういうわけか、ひと組の男女がその隅っこのところに立ちすくんで、なにやら深刻な雰囲気でひそひそと会話をしているのでありました。

わたくしといたしましても、並木の万年筆を観賞したい気持ちは非常に強かったのでございますが、、、
その男女をとりまく空気が、あまりにも重いムードでありましたので、容易には近づくことができません。
なにげに、男女の立つ並木コーナーまで、あと2メートルくらいのところまでは歩み寄ったのですが、それ以上はどうしても近寄りがたいのでございます(汗)
逡巡しつつ、あたりをウロウロしておりますうちに、とうとうKの用事が済んでしまいました(汗)

どうやらKは、2本の万年筆のペン先調整を依頼したようで、出来上がりまで1時間ほどかかるとのこと。
その間、伊東屋さんの中で時間をつぶすことになりましたが、並木コーナーには、相変わらず例の男女が、やんごとない様子で立ちすくんでおりますので、とりあえず別のフロアを見て歩くことにいたしました。

まずは、5階の手帳コーナーへ。
このフロアでは、ツバメノートのタテ罫・A6ノート(147円)を2冊購入いたしました。

続いて4階では、トラベラーズノートのリフィル(840円)を購入。

さらに3階では、B5サイズの下敷き(126円)を1枚購入。

総額1,260円のお買いものですが、あれこれ眺めたり手に取ったりして選んでおりますので、
ずいぶんたくさんの物を買った気分でございますよ!

2階はスルーいたしまして、ふたたび万年筆売り場のMF階に戻ってまいりましたときには、ちょうど万年筆が出来上がる時間でございました。

さてさて、調整済みの万年筆の仕上がり具合をKが試しておりますところ、わたくしは手持ち無沙汰で、何気なく、隣りでお買いものをしているお客様の様子に気が向いたのでございます。

その方は、20代後半くらいの若い女性で、一人でお買い物にいらしているようでした。
プラチナの、セルロイド製の「金魚」という万年筆の購入について、ずいぶん悩んでいらっしゃるご様子です。
このプラチナの「金魚」、実は、わたくしもたいへん好ましく思っている品物で、内心(うん、うん、そうですわね、この金魚は、魅力的ですわね、わかりますわ~)と、はげしく共感していたのでございました。
お値段は、3万1,500円。
万年筆に3万円というのは、人によって価値観が異なるとは思いますけれど、、、
少なくともこのお嬢様にとっては、相当、高価なお買いもののようでした。
(もちろん、わたくしにとりましても、非常に高額なお品物です。)
なぜなら、日本製の万年筆というのは製品として、非常に高品質かつ高性能な出来栄えなのでございますから、筆記具という意味合いにおきましては、1万円のもので十分すぎるほど素晴らしい書き味だとわたくしは思うのです。

もちろん、1万円のものよりは2万円、2万円のものよりは3万円のもののほうが、より品質が高いには違いありませんが、、、

さて、このお嬢様。

どうやら、どなたかへのプレゼントを買うために、伊東屋さんにいらしているようなのですが、
だいたい、1万円くらいのご予算を想定していたようでございました。
それが、ショーケースに並んだ万年筆を吟味しているうちに、このプラチナ「金魚」がお気に召されたようで、その大切な方へのプレゼントに、ぜひこのプラチナ「金魚」を買い求めたいと思うものの、大幅な予算オーバーをいかに乗り越えるか、そのことで、お苦しみなのでいらっしゃいました。

店員さんは、1万円クラスの万年筆をいくつか取り出して、見せてくださっていましたが、、、
お嬢様のお心は、プラチナの「金魚」にすっかり魅せられているようでございました。
いったい、このお嬢様がどのような決断をされるのか、もう、わたくしもドキドキでございます。

ああ、本日、偶然、伊東屋さんの万年筆売り場で、たまたまお隣に居合わせただけなのでございますが、、、
もう、わたくしは手に汗にぎるような緊迫感で、お嬢様の葛藤をお見守り申し上げるのでございました。

この間、わたくしの頭の中には、さまざまな妄想が広がっております。
明日は、父の日。
このお嬢様は、もしかしたら、父の日のプレゼントを買いにいらしたのではないかしら。。。
当初の予算は1万円だったけれども、伊東屋さんのショーケースの万年筆を見ているうちに、どうしても、この「金魚」をお父さんにプレゼントしたくなってしまったのかもしれません。

でも、お金が足りない、、、月半ばで、3万円も散財してしまったら、お給料日まで暮らしていけないわ。。。
ああ、でも、お父さんには、この「金魚」がぴったりよ。プレゼントしたら、きっと喜んでくれるに違いないわ。
お父さんに、この「金魚」をあげたいなぁ。。。でも、お金が、、、

ああ! もう! なんてお父さん思いの、いい子なんでしょう!
おばさんは感動した!(涙)
こうなったら、おばさんが5000円お小遣いあげるから、お嬢ちゃん、お父さんのプレゼントに、この「金魚」お買いなさいな!
(あり? 5000円じゃ、どのみち足りないかな?)

、、、と、まあ、こんな具合に、わたくしの妄想は広がるばかりです(汗)

でも、とうとうそのお嬢様は、深いため息をつくと、
「どうしても決断できませんので、また出直してまいります」
そうおっしゃって、その場を立ち去っていかれました。

わたくしは、どっと脱力しつつも、、、
このお嬢様の、真摯な物選びの姿勢に心うたれておりました。

バブル世代のわたくしが20代のころといえば、日本は、、、とりわけ、この銀座という街は、のぼせかえっておりました。
今の時期でしたら夏のボーナスを見込んで、ブランド物の洋服やバックを買いにくる若い女性であふれていたはずです。
あれから25年、銀座は今も華やかな街ですが、若い人たちの買い物に対する意識は、ずいぶんと堅実になったと感じます。
まして、自分の物ではなく、どなたかへのプレゼントを、こんなにも懸命に気合いを入れてじっくり選んでいらっしゃる。。。

銀座には、あちこちに小さなドラマが見え隠れしているのでございますが、このお嬢様のシーンには、じんわり胸が熱くなったわたくしでございました。

、、、はっ! そういえば、あの並木コーナーにいらしたカップルは、どのような展開になったのでございましょう!
振り返ると、並木コーナーにはもう、誰もいないのでございました。
やはり、銀座には、さまざまなドラマが繰り広げられているようでございます~(汗)