乗鞍岳への自転車道

40歳で突如、自転車乗りになろうと発心して早15年。CAAD9少佐と畳平へ駆け上がる日はくるのでしょうか。。。(汗)

クランクセット・バトル、第三の道

2006年08月28日 | 自転車

(前回、前々回のつづき)

CAAD9のクランクセットの選択について、

バンビちゃんとの対決を決意したわたくしは、こぶしを握り締めて、

ショップAを訪れました。

今日こそは、クランクセットをトリプルにしてもらうように宣言するつもりでした。

(わたくしの自転車なのよ、わたくしのすきなようにさせていただくわ!)

バンビちゃんの潤んだ瞳に負かされないよう、

わたくしはさまざまに理論武装していました。

『サイクルスポーツ』を読みました。

『FunRide』も読みました。

『自転車人』も読みました。

そして、今日はバンビちゃんの目を見ないで話せるようにと、

近視のメガネもはずして、裸眼でお店を訪問です。

少し体が震えていましたが、武者ぶるいだと自分に言い聞かせて

入口のドアを開けました。

すると、、、

見知らぬお顔の店員様が、「いらっしゃいませ」と声をかけてくださいます。

なにやら、威風堂々たる雰囲気です。これは、、、ただものではありません。

わたくしがあっけにとられていると、

カウンターの奥からバンビちゃんが顔をのぞかせ、

さわやかな笑顔で「こんにちは」と、ご挨拶です。

クラリ、、、ああ、、、 もう負けそうです!

わたくしは混乱する頭の中で必死に状況を整理しました。

(うむ。つまり。。。今日の店員様のペアは、

バンビちゃんと、この威風堂々たるお兄さんなのだ。

勝気なボクちゃんと、仔鹿のボクちゃんは今日はお休みなのだ。)

ちなみに、威風堂々たるお兄さんは、ある意味、勝気なボクちゃんの系列です。

つまり、勝気なボクちゃんの兄貴分が、威風堂々お兄さん、

仔鹿のボクちゃんの兄貴分が、バンビちゃん、、、という

タテ割の構造が、見て取れるのでした。

あくまで雰囲気の問題ですが、、、

Photo_12   

事態を把握したところで、気を取り直し、さっそくクランクセットのことを切り出します。

すると、わたくしの愚にもつかない話に耳をかたむけてくださっていた

威風堂々としたお兄さんが、ズバリひと言、

「オススメは、コンパクトですね」、、、と。

ひょへー! 今度は、コンパクトですか?

ダブルでもトリプルでもなく、お次はコンパクトですか?(汗)

ダブルとトリプルのセレクトについては、

これでもかというくらい理論武装してきたわたくしでしたが、

コンパクトのことは、ノーチェックでした。

動揺を隠し切れません。

早くも、負けそうです。

     *     *     *     *

来店直後から狼狽し、脂汗をかいているわたくしを尻目に、

バンビちゃんは、相変わらず

「ふつうのダブルで大丈夫ですよ」を、連発します。

わたくしは内心、(なぜだー! なぜなんだー! 根拠を述べよ!)と雄叫びつつ、

現実には一言も発せず、ただただ、バンビちゃんの愛くるしい笑顔に

見とれるばかり。

一方、威風堂々のお兄さんは、しきりにコンパクトを勧めます。

「無理することはないですよ。コンパクトにすれば、すべて解決します。」

(甘く、危険な言葉。。。もう、苦しまなくてもいんですか?)

その理由として、ご説明してくださったのは、

最初にコンパクトをつけておけば、万一、途中でふつうのダブルに

戻したくなった場合、最小限の部品交換で済むというのです。

しかし、もし初めにふつうのダブルをつけておいて、後からコンパクトに

しようと思うと、フロントディレイラーなど、交換しなくてはならないパーツが

多くなってしまう、、、と。

それは当然、お金もかかるということでありまして、

貧乏なわたくしには、負担が大きいわけでございます。

ということから、クランクセットに関しては、「小は大を兼ねる」というのが

セオリーだというご説明です。

なんという説得力のあるお言葉でしょう。

ちなみに、この威風堂々たるお兄さんに対して、バンビちゃんは常に敬語で

話かけていましたので、おそらくこのお兄さんはバンビちゃんの上司なのだと

推測できます。

その上司の人が、コンパクトを勧めているのですから、

バンビちゃんも、今日はちょっと寛容です。

コンパクトなら、いいかなぁ~みたいな、ゆるい方向に話が進み、

結局、わたくしはコンパクトにしていただくようお願いして、

この問題には決着がつきました。

わたくし自身、コンパクトというセレクトは、想定外だったのですが、

しかしまあ、34/50(コンパクト)ならば、39/52(ふつうのダブル)よりは、

多少、ギアが軽い印象になるでしょう。

トリプルは 30/39/50 だったので、最後まで30歯に未練は残りましたが、

バンビちゃんが頑強に、

「30は、しっくりこないですよ。それに、フロント3段は、扱いにくいですよ」と

しきりに豪語するものですから、主体性が欠落しているわたくしは、

すっかりバンビちゃんに感化されてしまったのでした。

しかも、このとき初めて気が付いたのですが、

バンビちゃんは、お客を説得するときには、小首をちょっとかしげて、

いかにも愛らしげな感じで話をします。

ただでさえ純粋無垢なバンビ光線の威力が、これで倍増されるわけです。

たとえ、ド近眼のわたくしが、裸眼で立ち向かったところで、

バンビ光線の威力から逃れることはできません。

最初から、勝負はついていたのでした。

しかし、負けてなお、わたくしは爽やかな気持ちです。

このように気持ちよく負けさせてくださるバンビちゃんは、

やはり日本一の自転車売りだと思うわけです。

                (クランクセット・バトル 完)