WHO事務局長選敗北 厚労省、国際戦略練り直し 他国と親交、人材育成(産経新聞) - goo ニュース
2006年12月4日(月)03:09
厚生労働省は、国際業務を担う職員の効率的な人事運用や、ODA(政府開発援助)の効果を検証するワーキンググループ(WG)を設置し、4日に初会合を
開く。11月の世界保健機関(WHO)事務局長選挙の敗北を受けたもので、国際業務に精通し、海外にも人脈を築ける人材育成を目指す。政府は厚労省での検
討結果を踏まえ、他省庁にも同様の取り組みを広げていく構えだ。
日本はWHO事務局長選挙で、尾身茂WHO西太平洋地域事務局長を擁立。しかし、候補者5人による決選投票では、中国のマーガレット・チャンWHO事務局長補が当選し、尾身氏はメキシコのフリオ・フレンク保健相にも及ばなかった。
選挙戦では、アフリカ票や欧州票の大半が中国に流れたとみられる。日本はその後、国際電気通信連合(ITU)ナンバー2を争う選挙でも中国に大差で敗れ、政府は「日本の国際評価が低下した証拠」と危機感を募らせている。
中国は、国際機関でのポスト獲得のため、外交と各政策分野が一体となった取り組みを進めている。保健医療分野でも「職員を長期間張り付けて特定の業務に精通させるほか、途上国への支援も外交部と実務機関が協力して計画を策定している」(厚労省幹部)という。
これに対し、日本は「本省の国際課長が、数年後にはどこかの県の課長になってまったく別の仕事をする」(武見敬三厚労副大臣)と、国際業務に携わる職員を育てるシステムがないのが実情だ。選挙戦を下支えする事務職員が育っていなかったのが敗因との指摘もある。
WGは、WHO事務局長選挙で陣頭指揮を執った武見氏のほか、辻哲夫事務次官ら厚労省幹部数人で構成。国際的な人材を育成するため、国際分野に関心の高い職員を一定期間人事異動の対象から外すなど「他国の職員と知己になれるよう」(厚労省幹部)な制度づくりを検討する。
また、オブザーバーとして、国際協力機構(JICA)の保健医療分野の責任者も参加する予定。「政府が系統立てて政策決定を行ってこなかった」(武見氏)との反省から、ODAが各地域のニーズと合っていたかや、日本の支援に対する相手国の評価などを細かく検証する。
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■武見敬三厚労副大臣「途上国との関係、再構築」
WHO事務局長選挙で陣頭指揮を執った武見敬三厚労副大臣のインタビュー要旨は次の通り。
--選挙戦を振り返って
「尾身茂氏は、WHOの執行理事34人全員を訪ねて協力を依頼し、政府としても大がかりな選挙になった。しかし、選挙直前に北京でアフリカ首脳会議が開
かれ、相当ハイレベルの政府首脳が協力を要請するなど中国政府は特に熱心だった。今後は新事務局長と協力関係を深め、保健医療分野での日本の国際貢献を強
めたい」
--各国の投票行動をどう分析している
「アフリカの大半が中国支持に回ったとみられる。中東や欧州もそれぞれが支持した候補者が脱落後、中国支持に回ったようだ」
--苦戦は予想外か
「保健医療分野では日本が途上国の支持を幅広く得ていたため、当初は尾身氏が有利だと思っていた。だが今は国連での中国の影響力が拡大している過渡期だ。今回の選挙は、このような過渡期における各地域の対応が見えた点で一時代を区分する選挙だったと認識すべきだ」
--日本外交に与える影響は
「中国の影響力の増加と反比例に日本の発言力が低下している。日本は今後、中国を含め、発展途上国との協力関係を改めて確立し、国際社会における存在感を作り直さなければならない。このため、中長期的視点に立った総合戦略を政府一体となって確立すべきだ」