雨過天晴

ジャズとホークスとファッションなどなど
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そして時々飽きます

PLUTO 8

2009-07-10 | 
2004年11月の第1巻から早4年半。
なかなか単行本が出ずにイライラした時期もありましたが、これが最終巻になります。

この本で全ての謎が判明し、これまでに起こった悲劇が一つの完結を迎えます。

この本は何度も言っていますが故手塚治虫氏の名作『地上最大のロボット』のリメイク版。
故手塚氏の思いを浦沢氏なりに解釈した結果がこの作品ですが、大きく伝えたいメッセージは「憎しみからは何も生まれない」ということ。
それを本来感情というものを持つはずがないロボットが強く理解していく様が、原作以上に強く表現されていると思います。

結果は原作を読んでいるのでもちろん知ってはいるのですが、その結果を導くプロセスの表現方法が「PLUTO」の方がより劇的です。
ただ手塚氏の表現は淡々とした中に見えてくるものなので、これは表現に対するアプローチが異なるためで、それが今回の浦沢氏が「PLUTO」に取り組んだ目的なのでしょう。

またスピルバーグが「A・I」で表現しましたが、人類は厳しい環境下では生き抜くことができず、最終的に人間は絶滅し、人間がDNAを通して子孫に知恵を引き継いでいったように、ロボットがディジタルのデータをコピーして次の世代に知恵を引き継いでいく、という可能性がこの「PLUTO」でも描かれています。
人間が創造主となり、新たな「生命」が生まれ、繁栄していくということです。
これも心に強く残るメッセージだと思います。

私のつたない文章では表現し切れませんが、これでなんとなく読みきったとホッとしている反面、もう『PLUTO』で登場したキャラクターたちを見ることができないのが残念です。

読んだことのない方、漫画と侮らず、心して読んでください。

PLUTO 8 (ビッグコミックス)
浦沢 直樹
小学館

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