草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

伝えたい母の味

2018-07-19 23:24:45 | 日記
母が突然の脳出血で他界してから、今年で十三年になる。母が亡くなった当初、私は自分の不注意で母を死なせた気がして自分を責める毎日だった。そんな私を慰めてくれたのは、母が生前慈しみ遺していった野菜であった。昔から家に伝わる野菜はいずれも深い味わいと美しい姿をしている。
 その中の一つにふだん草がある。黄色みの強い艶のある緑色は、見る者を優しく包み込み元気にしてくれる。冬の間は少しも大きくならないで葉も固いままなのに、冬野菜が終わり夏野菜の出来る間の端境期になると、グングンと柔らかな葉を次々と出してくる。
 やがて次の季節の野菜の収穫が始まると、自らの役割を察知したように、真ん中から芯を出し次の年に命をつなぐために花を咲かせる。母の残したふだん草はそんな野菜である。
 しかしこの野菜、口に入れるとちょっと泥臭さがあるのが玉に瑕だ。ところが同時期に出て来る筍との相性が抜群で、一緒に油で炒めて味噌煮にするとおいしい。味噌がふだん草の泥臭さや筍のえぐ味を消してくれる。母に教わった知恵である。
 他にもモクズガニと高菜で作る「蟹汁(ガンじる)」は絶品である。両者の相性もさることながら、食べる時期の目安にもなる。すなわち高菜の美味しい冬から春にかけてが、モクズガニの美味しい時期とかさなるのだ。だからその時期以外にはカニを絶対に捕ってはいけないと教わった。
 また盛夏のこの時期に食べる郷土料理の「おらんだ」はニガウリとナスを油で炒め味噌で味をつける。最後にドロドロに溶いた小麦粉を流し込んでとろみをつけるという、ちょっと変わった料理だ。ゴーヤに比べると細長くて苦みの強いニガウリは、長ナスと油との相性が抜群で、夏に食べたくなる一品である。子供の時には嫌いだったけど、おばさんになると好きになる。見た目も料理方法もとても変わった、なんとも変な料理である。
 しかしいずれの料理も懐かしく、季節の食材を生かした「伝えたい母の味」である。

おらんだの作り方
材料 ゴーヤ    大1本
   長ナス    大1本
   油      やや多め
   味噌     適当
   A水又はだし コップ1
   小麦粉    大さじ4適当
   だしの素   だし汁を使う場合不要
   B水又はだし汁 コップ1
作り方
①ナスは所々皮をむき、味噌汁の具の大きさくらいに切り、水にさらしておく。
②ゴーヤは縦半分に切り種を出し、5㎜くらいの厚さに切る。
③フライパンに油を熱し強火で①②を炒め合わせ、Aの水を入れ味噌を入れてナスに火が通るまで煮る。(水の場合はだしの素もいれる。味噌はこんな味噌汁辛くて飲めないくらいの濃さにする)
④ボールに小麦粉と水を入れて、泡だて器でかき混ぜる。小麦粉がダマになるくらいのおおらかさでまぜる。このダマがおいしい)
⑤③に④を流し込み手早くかき混ぜ、とろみがついたら出来上がり。あつあつ美味しい。冷えても美味しい。
若い頃はこのいい加減な料理方法が許せなかった。