唐十郎「腰巻きおぼろ〈妖鯨編〉」
唐十郎の「腰巻きおぼろ〈妖鯨編〉」を読んだというよりは観たのは、もう五十年近く前のことになる。
場所は何処だったのだろうか。まだ新宿花園神社だったのだろうか。何処に行ったのかはまったく覚えていなが、翌年「おちょこの傘持つメリーポピンズ」を「夢の島」に観に行ったのは覚えている。
アングラだの紅テントだの状況劇場など全く知らなくて、だた詳しい人について行っただけの話だ。公園みたいな所だった。ああ、もしかしたら上野の野外音楽堂だったかもしれない。ちゃんと舞台があって紅テントも張ってあった気がする。今でも不忍池のあたりをウロウロすると不思議に心が浮き立つのは、そのときの記憶が残っているからだろうか。
演劇と名のつくものを観たのは、中学校の修学旅行で宝塚を観て以来だった。それがいきなりアングラだ。驚いたのなんの!何の話なのだか訳がわからないし、衣装も汚らしい。唐十郎なんて油揚のスーツを着込んで寅さんみたいな格好で登場すると、「私の上に降る雪は霙のようでありました」なんていきなり中也の詩を朗読し始めた。
「いったい何なんだ」と思いながらもグングン引き込まれていった。ちなみみ「油揚スーツ」とは油揚をパッチワークのように縫い合わせたて作った油揚げ色のスーツのことだ。もちろん本物ではないだろうが、遠目でも油揚げと油揚げのつなぎ目が分かった。なんだかギタギタと油ぎって、唐の演じる役にぴったりの衣装だと思った。
ただ残念ながら内容は油揚スーツのと中也の詩くらいしか覚えていない。それから出身地の油揚は三角なので、あんなスーツは出来ないだろうと思ったことは覚えている。ただよほど感激したのだろう。後日立ち寄った書店で「腰巻きおぼろ〈妖鯨編〉」の本を見かけて、迷うこと無く買った。まだ生家の二階の本棚にしまってあるかもしれない。今度帰ったら探してみよう。
このところ地区の図書館に通うことが多くなった。自前のパソコン持ち込み可のコーナーがあるので、利用している。二時間と時間が制限されているせいか、集中して書くことができる。図書館の玄関には、昨年逝去された作家の方々の作品が展示されている。
詩人の谷川俊太郎氏 絵本作家のいわむらかずお氏 ノンフィクション作家高橋秀実氏などの方々に混じって唐十郎氏の名前を見つけた時は驚いた。そうなんだ。知らなかった。2024年5月4日(84歳)で亡くなっていた。彼の名前ともに「海ほうずき」という本が展示されていた。
正直いうと演劇と名のつくものは数える程しか観たことがない。だが胸を張って「演劇が大好きだ」と言えるのは、唐十郎の「腰巻きおぼろ」を最初に観たからだろう。
合掌