値域でいちばん
東京の私が住まうマンションの近くに「天鈴」という天ぷら屋さんがあります。お昼時にはいつも行列ができています。高齢の店主夫妻と娘さん、いやお孫さんかな?三人で切り盛りしています。一番の人気は天丼です。
店の中はカウンターがあって、お客さんは端から詰めて座っていきます。目の前で天ぷらを揚げて、一番奥の席の一番最初に座った人から順番に出していきます。
来た順に出して行って、一番最後に座った人に出し終えたたころには、一番奥の最初に来た人が食べ終えて外に出ていきます。すると今度は外で待っていた人が一人入って来て、一番奥の席に座ります。
お客さんも常連さんが多いのでしょうか、その流れが実にスムーズになのです。食べる速さが皆同じなのでしょうか。来た順に席を立っていきます。
以前一度だけ食べに行ったことがあります。天丼がとてもおいしかったと夫に言うと、自分も行きたいと言い出しました。行ってもいいけど……。ちょっと考えてしました。
実は私もそうなのですが、夫は私よりもっと早食いなのです。早食い夫婦が二人並んでガツガツ食べてさっさと席を立ったら、揚げる順番が狂ってしまうのではなでしょうか。
そんな話をしたのも数年前です。お昼時に横を通ると、「天鈴」さんには相変わらずの行列ができています。
ところが昨日しばらくぶりに「天鈴」さんの横を通ったのですが、いつもの行列がありません。高齢の店主夫妻のことが思い浮かんで、店の前に行ってました。店の前には女の人がいてシャッターの上の張り紙を読んでいました。「天鈴」さんのことを心配したのは私だけではなかったのですね。
張り紙には「都合でしばらくお休みします」と書かれておりました。その横には別の紙も貼られており「ゆっくり休んで、また再開して下いね」とか「早く天丼が食べたいけど、ゆっくり休んでね」等との言葉がたくさん書かれておりました。地域でいちばん愛されているのでしょう。
「天鈴さん」ゆっくり休んで、また再開してくださいね。今度こそ早食い夫婦が食べに行きますからね。