草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

私のふるさと

2018-09-30 14:25:42 | 草むしりの幼年時代
 子どもの頃に「明治百年」を記念して、お歴々方による植樹祭が開催された。たぶん通学路の坂道の途中辺りに植えられたのだろう。「百年前は江戸時代だったのか」と坂道を上りながら、子供心に思ったことがある。

 通学路は今では道幅が広くなり真っ直ぐになったが、途中にある坂道は長くて急で変わらない。上りつめた所にある家で、学校帰りによく水を飲ませてもらった。優しいお姉さんとお婆さんが、井戸の水を汲んでくれた。  
 
 また坂道の近くには、百歳を過ぎたお爺さんの家があった。一度だけ小さくて皺だらけのお爺さんを見たことがある。人間は百年経つと梅干しみたいになるのかとその時感じた。

 今年は『明治百五十年」になる。あれから五十年も経ったなんて。お爺さんの深い皺に百年の時を感じた私も、すでに老人の域に達した。だが中身方はあの頃と大差無い気がする。

 さて古いお爺さんの家には今でも百歳近いお爺さんがいるが、先代のお爺さんより皺が少なくて大柄である。それから優しい家の今ご当主さんもやっぱり優しくて、私が行くと「オロナミンC」を飲ませてくれる。

 私の暮らすふるさとの土地も人も、多少の変化はあるにせよ根本は昔と変わらないのではないか。

柿の実の熟れる頃

2018-09-23 13:06:29 | 日記
 母の実家の門先には柿の木がある。私が子供の頃から同じような大きさで、毎年たくさん実を着ける。この木なのだろうか、母が父との見合いの日に登っていたというのは。父は昔、母との見合いの時の話をよくしていた。

 仲人に連れられて見合いに行くと、家の前の柿の木に女の人が登っていた。「こんにちは」と挨拶をすると、「こんにちは」と女の人も挨拶をした。それからしばらく座敷で待たされた。やがてドスンドスンと凄い音を立てて、見合い相手が二階から降りて来た。

 「とんでもない女が居るものだ」と思っていたら、今度はコチコチになってお茶を運んできた。挨拶をして顔をあげたら、さっき柿の木の登っていた女の人だったので驚いた。
 
 お茶は小さな湯飲みの底に気持ち程度に入っており、喉が乾いていたので思わずお茶をお代りした。それが運の尽きだった。相手のことが気に入ったと思った仲人が、勝手に縁談を進めてしまったと言うのだ。

 本当だろうか



向田作品に触れてみて

2018-09-16 15:48:26 | 日記
 紙切れのように小さく折りたたんで心の隅にしまったまま、忘れてしまいたいことが誰にでもある。それを取り出して、決して破らないように丁重に開いていく。向田邦子の「思い出トランプ」はそんな作品だ。
 
 トランプの数と同じ十三の、いい齢をした男と女の物語。紙切れが開かれると、男たちは一様に慌てふためき、女たちは何くわぬ顔をしていつもと変わらぬ生活を送る。

 前半の三編「かわうそ」「だらだら坂」「はめ殺し窓」は女の一番気にしているところを愛してしまった男たちの話だ。女たちはそれを許さないとばかりにしっぺ返しをする。

 ところが「男眉」の麻は二番目に気にしているところを、夫に揶揄される。しかし決してしっぺ返しはしない。「一番と二番で女の態度がこうも変わるのか」と驚くのが男で、頷くのが女だ。二番目ならば笑って許せるけど、一番目はタブーである。誉めても貶してもいけない。それにしても「かわうそ」の宅次の受難は、ちと度か過ぎるのでは……。
 
 そう思った私の耳もとに、厚子の芝居がかった声が聞こえて来た。「だって、かわうそは残酷なンですもの」と。なるほど「鏡餅」や「牛蒡」に似ているなど、「かわうそ」に似ているに比べたら可愛いものだ。相手が悪かった。
 
 向田邦子を凄いと思った作品である。

2012年10月文章講座
課題「心に残る一冊の本

楽しいオーラ全開の後

2018-09-06 21:49:52 | 日記
 「あなた、いつも楽しそうに仕事しているね」昨日畑からの帰り道でご近所の奥さんに言われて、とっても嬉しかったです。「大変だね」とか「よく働くね」とか言われることがあっても「楽しそうにしている」って言われたのは初めてです。
「嬉しい。畑仕事本当に楽しいンですよ」って答えたのですが、もしかしてこの奥さん、私がカリフラワー植えていたのを見ていたのかもしれません。
 苗を植えながら、カリフラワー料理を考えていました。手っ取り早くサラダかな。グラタンもいいな。梅肉和えにしようかな。なんてね。あの独特のコリコリとした食感がたまらないな。ドレッシングとか酢味噌とか、甘酸っぱい味がよく合うなあ。とか……。
 それぞれに家庭を持った子供たちにも送ろうか、でも食べ方が分るかしら……。まずは湯がき方から。熱湯に塩を入れると緑色になるので、まず酢を入れてゆがくことを教えなければ。小房に分けて熱湯に酢少々入れ……。はて何分湯がくのだろうか。子供たちに送る前に、まずは一度試食してみなければ。
 そんな事考えながら植えていたから、楽しいオラーが出てたいたのかな。自分のことをそういう風に見てくれるって人がいるって嬉しいものです。だから今日は朝から楽しそうオラー全開で張り切って畑仕事していました。でもちょっとやり過ぎました。さっきから腰が痛い。
 当地は明日からしばらく雨が続きそうです。数日前にまとまった雨が降ったものの、まだまだ地面はカラカラなので嬉しい雨です。夕方痛い腰をさすりながら「雨が止んだら畑だね」と育苗ポットの野菜苗に話し掛けておりました。