草むしりしながら

読書・料理・野菜つくりなど日々の想いをしたためます

フランス文化を語れば

2018-10-07 12:11:54 | 日記
 夏休みに帰省した次女が、本を見ながらお菓子作り始めた。作っているのはフルーツのタルトレットで、見ているにはフランスの製菓学校の、東京校が出版した本だった。

 今作っているにはフルーツを乗せる土台になるタルトの練り込み生地だ。小麦粉とバター、卵、砂糖を混ぜ合わせてオーブンで焼く。「面倒くさい」口から出そうになった言葉を飲み込こんで、その場から逃げようとして娘に捕まってしまった。一人では不安なので居てくれと言う。悪い気はしないのだが……。
 
 それにしてもふるった粉が飛び散って周りが真っ白だし、洗い物は流しに溜まっている。その辺のところをやんわりと注意したら、素直に洗いものを始めた。少しは大人になったようだと思っていたら、「『カードを切るように』ってどうやるの」と聞いてきた。生地を混ぜ合わせる説明文に、「カードを切るように混ぜ合わせる」と書いているそうだ。

 「カードを切るように」オウム返しに言ってみたが意味が分からない。カードとは何だろう、切るとはどうするのだろか。思い浮かんだのはトランプのカードを切る仕草だった。

 「この場合は粉が粘っちゃいけないわけでしょう。クッキーやスポンジケーキを作る時も、粉と他の材料を切るよう混ぜ合わせるって言うのよ。だからこうやって混ぜ合わせることじゃないのかしら」とトランプを切る手つきをして見せた。
 
 しかしフランス人とは、実にややこし言い方をするものだ。そう言えば七一のことは六十と十一、九一のことは四つの二十と十一と言うらしい。前にどこかの誰かが言っていたことを思い出した。だから粉の混ぜ方に「カードを切るように」なんて面倒くさい言いかをするのも、当然のことなのかもしれない。

 「そういうややこしい言い方をするのがフランス語で、それがフランスの文化なのよ」などと調子に乗って言うと、隣で怪しげな手つきの娘が大きく頷いた。
 
 出来上がったお菓子はとても美味しかった。特に練り込み生地の部分の、サクサクとした歯ごたえは絶品だった。「この本なかなか良いじゃないの」ケーキを食べながら本を開いて、ゆっくりと作り方を読み返して見るのだった。
 
 ところがとんでもない間違いに気が付いてしまった。本には「カードを切るよう」にではなく「カードで切るように」と書かれていた。カードとはシリコン製のヘラのようなもので、ゴムベラの横を大きくして持ち手を取ったような形をしている。このカードなら確か家にもあったはずだ。

 恥ずかしい。他国の文化を批判する前に、自分たちの読み間違えに注意しなければ。

次回10月9日より藤沢周平著「蝉しぐれ」あらすじを投稿いたします。ご期待下さい。

手紙

2018-10-06 12:23:55 | 草むしりの幼年時代
 カオルちゃん元気でね。私はあなたのことを絶対に忘れません。新しい学校に行っても、でもいじめっ子をやっつけてね。大人になって定年退職したら、昔住んでいたところに遊びに来てね。私はずっと今の家に住んでいます。

 勉強と駆けっこはクラスで一番、正義感が強くて飛び切り可愛いい。クラスの人気者だったカオルちゃんは、なぜだか私には優しくしてくれました。でも小学校二年生の時に転校してしました。

 カオルちゃんの居ない教室は火が消えたようで、みんな元気がありませんでした。そんな時、誰かがカオルちゃんの机の中から手紙を見つけました。手紙には○○ちゃんへと、私と同じの名前が書かれていました。

 けれど私は別の「○○ちゃん」のことだろうと思い、手紙を読みませんでした。私と同じ名前の子は他もいて、先生が「○○ちゃん」と優しく呼ぶのは決まってその子でした。今でもそのことが悔やまれてなりません。

 カオルちゃんへの手紙は左巻マイマイに託けようと思います。時計と逆回りの左巻ならば、時をさかのぼってカオルちゃんが転校する前の日に届けてくれそうです。ゆっくりでいいのです。五十年以上も前のことですから。