お寿司と言えば、今は広く一般的になっていて誰もが気軽に食べる人気料理のひとつになっている。
しかし、ほんの一昔前までは、これほど回転すしも普及しておらず、今ほど一般的ではなかった。
私など、お恥ずかしい話だが、ちゃんとしたお寿司屋さんには30過ぎるまで怖くて入れなかった。
なにせ、店に入っていきなり値段の書いてない品書きだったらどうしようと考えると、どうしても入れなかったのだ。
今だって入った事のない見るからに高そうな高級店には近づけない。
思えば、自分が子供時代の寿司といったら、「小僧すし」のような寿司販売店での握りやちらし寿司などが普通で本格的な握りズシなんて、大人になるまで食べた事がなかった。
育った家の寿司に対する思いがそれぞれ違うせいなのは勿論だが、今とは時代背景が確実に違っていたのも確かだ。
時代は変わったものだ。
スーパーでも買い求めることが出来るし、格安回転寿司から高級寿司店までニーズに応じて色んな寿司を楽しむ事が出来る。
我が家でも全員が大好きで何かにかこつけて食べに行く定番になっている。
やれ、誰かの誕生日だとか〇〇記念日とか〇〇祝いなどと銘打って、つい足が向いちゃうのだ。
夫婦共働きなので疲れていたり、時間的に夕食作るのが大変な時は楽をしてしまいがちだ。
とはいえ、それは家族向けの回転寿司屋のことで育ち盛りの息子を連れて行くにはその程度がせいぜいである。
息子一人でペロっと平気で30皿以上食べちゃうから、迂闊に高い店なんかに連れて行ったら大変なことになってしまう。
連れて行く前にカップ麺1つ食わせていくなどしていたが、本人から大ブーイングが出て寿司をちゃんと食わせろとウルサイので、結局質より量を重視する結果となっている。
幸か不幸か、まだ味の良し悪しは今ひとつ分っておらず、とにかく腹いっぱい食べる事の方がより重要らしい。
私達夫婦としてはもう一つ、二つ上のランクの寿司屋に行きたいのだが、家族揃っていくには当分先になりそうだ。
そんな寿司だが、かねてから是非自分で作りたいと無謀な夢を持っていた。
別に寿司職人になりたかったわけでも、子供の頃に豊かな寿司体験が少なかったからでもなく、なんでも自分でやってみたいからという単純な理由からだ。
まあ、酢飯に魚の切り身を乗せれば出来上がりとまではいかなくても、とりあえずそれで食えるだろうし、作ってみることに価値があると思ったのだ。
とにかく自分が作りたいから作ってみる、簡単なことだ。
手間隙と食材費と味と全てをバランスにかけてみれば、作るより買ってきたり、食べに行ったりした方が遥かに良いに決まっているが、作ってみたいという欲望には勝てなかった。
ネットで調べれば、酢飯の作り方から握りの極意まで、レシピは色々豊富にあり、簡単にその気になってしまうほどだ。
さて、トライした結果はどうなったか?
5合のメシを炊き酢飯を作り、刺身として買ってきたネタを握ったシャリの上に乗せる、なかなかに面白いものだ。
握り加減が分らないし、大きさもバラバラになるし、ネタを乗せやすいカタチに整えるのも結構難しい。
イクラは軍艦巻きに、アジはショウガとネギを乗せてとお店と同じようにしてみた。
シャリが先になくなってしまったので、刺身の盛り合わせが半端になっているのは、寿司ネタで使った残りものだ。
たとえ友人でも他人には恥ずかしくて出せないシロモノだったが、家族向けにはそれで充分で家族の評判も上々だった。
4200円のネタ代で家族4人がお腹いっぱいになれたのだから、格安回転寿司より安くついたし、何より楽しく寿司作りを体験できたのは嬉しかった。
これでも家族の前では立派な職人気取りだ。
へい、らっしゃい。
何から握りやしょう?