人の不幸でネタを書くのは気が引けるが、滅多に知る事のない裏側はやっぱり面白い。
勿論、不幸そのものについて書くのではなく、普段覗けない香典袋の中身についてだ。
昨年の暮れ、27日に組合幹部の父親がまた亡くなった。
ほんの2週間前に別な幹部の父親の訃報に接したばかりで連続で続く。
しかも、10月の初めに、さらに全く別な幹部の父親が亡くなっているので、この秋から3連続の訃報である。
12人の役員構成から見れば、極めて稀な確率で発生した不幸の連鎖と言えるだろう。
さて、人が亡くなるのに時期は選ばないが、一連の儀式はどうしても遺族の方の都合も考えなくてはならない。
今回は何とか年越しは避けたいと遺族が考え、暮れも押し迫った30日通夜、31日告別式という日程に落ち着いたみたいだった。
最近は葬儀会社の葬祭場を使う人が増えていて、自宅で執り行う人は滅多にいなくなってしまった。
その通夜会場が自宅から近いこともあって、通夜のお手伝いをすることになった。
基本的に葬儀会社が殆どの事を取り仕切るので、お手伝いが必要というと大抵は受付が主流となっている。
特に受付で扱う香典は直ぐに中身を確認し、あとで喪主の方に分りやすく取りまとめておく必要があるので身内や会社の親しい人間が携わる事が多いようだ。
香典の中身を検めるのは、必ずしも受付がいつも行うとは限らない。
喪主側の了解を得た場合のみである。
少しでも金額の確認、計算に煩わされるのを避け、遺族の方たちの負担を助ける為のものである。
また、お手伝いの人数が少なければ、手が回らない事もあり得るし、喪主の了解を得られない事もあるらしい。
葬儀社としてはお金を包み忘れる人がいるので、頂いたら直ぐに中身を検める事を奨励していた。
忘れるなんて考えにくいので、悪意があっての嫌がらせかなと思ったが、今回そういった事故は一切無かった。
私はというと自分の祖父母を亡くした時に一連の儀式に参加した事があるだけで、その段取りなど全く知らなかった。
外部の人間として香典を持っていくことはあっても、それを数える立場になることは一度もなかったからだ。
こんな事は初めてのことだし、とても貴重な体験だった。
香典の相場についてはネットで色々紹介されているが、細かく事例を挙げて紹介しているケースは少なくハンで押したように1万円という紹介例が多い。
いつも実勢価格とのズレを感じつつも、人の包んだ香典袋の中身までは知らないので、実態が不明だった。
今回、受付係りとして、香典袋の中身を検め、香典袋と弔問客との関係をつぶさに観察する機会が得られたのは本当に興味深かった。
会社の同僚として会社関係者の受付を専門に担当した私は弔問客の顔が全て見えるので、その香典の中身を知る立場にあるというのはチョッピリ秘密を知るような楽しみがあった。
さて、気になる香典の中身だが単純にトータル金額を来場者で割ると、その平均額は5,100円程度となり、ネットでの相場表示とかなり幅がある。
包まれていた金額は1万円、5千円、3千円の3種類のみである。
3千円は会場に来ないで人に頼んで出して貰うケースが殆どである。
義理はあるけど、行くほどでもないそんな関係がよく分る。
来た人でこの金額だった人は少なかったが、若くて収入も少なく社会に出たばっかりの会社員なら少しもおかしくない金額だったと思う。
5千円はもっとも一般的だ。
人間関係の深さに関係なく相場感として皆が持っている金額だったように思える。
1万円はたまに見る程度で、よっぽど親しいか利害関係があるか、上司でもないと、ちょっと多すぎるかなと感じた。
もっとも遺族の立場で考えたらお返しの品は全て同じなので、貰う金額が大きいほど嬉しいのは間違いないだろう。
ネットで紹介されてる1万円との開きは大きい。
あくまで気持ちの問題だから、いくら包むのが正解と言う事は決してないが、5千円というのが妥当と言う気がした。
それにいくら色をつけるかは自分自身の問題と言えそうだ。
地方や宗派によっても変わってくるのかもしれない。
最後にどうしても付け加えたい事がある。
香典袋に本物の水引がついているのは避けた方が無難である。
中を検める時、これが受付泣かせとなる。
その点、印刷してある水引模様なら開け閉めも簡単に出来る。
確かに本物の水引がある方が見てくれはいいが、開けて水引をもとへ戻す手間が面倒で堪らない。
香典袋に気を使うくらいなら、中身の方にしてと言いたいものだ。