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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

ごみ処理広域化の落とし子

2009年08月21日 | ガス化溶融炉
8月3日付の本ブログ「出雲エネセン・抜本修理へ」でメーカーの日立製作所が思い切った炉体修理をすると報じた。昨年5月の定期点検で心臓部のキルンに55か所のひび割れが見つかり、今年の5月にも7か所見つかったのである。(図中の④)。
 出雲エネセンとは出雲市エネルギーセンターの略。ガス化溶融炉を設置した出雲市の清掃工場で、現在は出雲、大田、雲南の3市と斐川、飯南2町の可燃ごみを処理している(1日あたりの処理能力、218トン)。
計画では来月(9月)からガス化炉溶接部の外面を中心に詳細なPТ検査(液体浸透探傷検査)を行い、必要に応じてひび割れ予防のピーニング施工(装置交換)を実施するという大がかりなもの。
 交換するのは、二重構造になっているガス化炉内側のレトルトと呼ばれる筒状の装置で、長さ20メートル、直径2.2メートルのステンレス製。これが回転しながら、ごみを約500度の高温で蒸し焼きにし、ガスと炭水化物に分解するのである。
 今回の点検・施工に伴い、ごみ処理は外部へ委託する。期間は9月上旬から2カ月程度で、委託処理量は最大1,800t、経費は最大7,800万円程度かかる見通しだ。
出雲エネセンの瑕疵担保(保証期間)は昨年10月20日で切れているが、経費は全額日立が負担する(委託業者は鳥取県境港と山口県の業者を予定)。

◆日立製作所のお荷物
出雲エネセンはスタートからご難続きだった。メーカーはこの分野では始めての日立製作所と実績はあるが高砂市でミソをつけた日立バブコック のJV(共同事業体)。キルン型といいながら三井造船やタクマなどとはまったく違う設計思想のプラントである。主要設計は日立製作所というが、引渡し期限を3度も延長するという欠陥ぶりで、その都度JV側は莫大な修理費を負担してきた。
 先日、現地の住民団体から維持管理費決算書(2004年から98年まで)が送られてきたが、その総額は出雲エネセン側で27億500万円に対し、日立側の負担(修理費)は8億2,200万円となっている(年度ごとの数字はあるが、現物は外部秘であるとセンター事務局から念を押されたらしい)。
 しかも個別修理の際、ごみ処理は他の自治体や業者に搬出・委託するため、その代金も日立側が負担している。すなわち04年~08年で持ち出し処理量2万0,910トン、処理代金は計11億8,000万円となっていた。
 結局この5年間で日立JVは約20億円という巨費を投じたことになる。他社平均140億円より60億円もダンピングして落札した上に、毎年度平均4億円もの余分な出費を強いられてきたのである。とても利益を出すどころの話ではない。出雲市のお荷物というより、幹事企業である日立製作所にとってのお荷物になってしまったのだ。
 
◆長期包括運営委託が今後の主流に
 ごみ処理広域化計画で各地に大型焼却炉や溶融炉が設置されたが、現在多くの施設で維持管理コストの大きさが問題となっている。特にかし担保期間(保証期間)が切れた後、その負担の重さに驚く自治体が多い。
その解決策のひとつとして登場したのが長期包括運営委託(以下運営委託)である。今後15年なり20年の間、運転だけでなく「運営そのものを企業に委託してしまう」方式で、いわば事前割引の特典つきプリペイド契約である。
 身も蓋もないいい方をすれば、長期にわたり自治体(ないし広域組合)は基幹業務としての施設運営をメーカーに丸投げする方式であり、それでも自ら運営するよりコストが安上がりだというのが大多数の市議会の姿勢である。
 今月(8月)14日、入札条件の不自然な変更によって揉めていた成田市新清掃工場の一般競争入札で川崎技研(本社・福岡市)が落札した。ここでも運営委託の採用が前提となっている。
 この話を聞いてフランスのあるバイヤーが驚いた。「なんで向こう20年もの長期契約ができるのか。占い師でも雇うのか」
 なお長期包括運営委託の詳細については本ブログ09年5月6日付「プラントメーカーのいま(2)」を参照されたい。

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