循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

鳥栖三養基広域ごみ処理施設から住金が撤退意向-シャフト炉型ガス化溶融炉

2007年10月05日 | ガス化溶融炉
 10月1日、信じられないことが起きました。溶融炉の運転業務を請負った企業が「採算ペースに乗りそうもない」を理由に撤退する、といい出したのです。詳しくは 佐賀新聞(10/2)を見ていただきたいのですが、運転を委託したのは佐賀県の鳥栖三養基(とす・みやき)西部環境施設組合(鳥栖市、みやき町、上峰町)で、住友金属工業が手がけた  「酸素吹き込み式直接溶融炉」が導入されています。
 この話が持ち上がったとき、まだ町村合併前で、現場は旧中原町の給水タンクを囲むように西側にリサイクルプラザ、東側に日量132トンの溶融炉(総事業費54億6,000万円)を配置する計画でした。稼動は2004年4月です。

 2001年、中原町の人々を中心に反対運動が起こり、その中心になったのが山崎義次さんという方です。この方は例の吉野ヶ里遺跡を世に広めた郷土史家でもあります。建設差止めの裁判も財政的に苦しいなか、粘り強く続けられました。
 90年代半ばはどこのメーカーも「本業」が振るわず(鉄鋼も造船もダメ)、環境プラントに活路を求めた時期です。ご承知のように当時はいわゆる「ダイオキシン特需」を当て込んで27ものメーカーがガス化溶融炉・灰溶融炉の分野に進出しています。

 住友金属工業はパイプ(鉄)の製造がメインで環境プラントの分野ははじめてでした。十分儲かると踏んだわけですが、2004年4月に稼動を始めたとたん、様々なトラブルに見舞われ、またランニングコストの思わぬ高騰でついに悲鳴をあげたのです。去る7月30日、周辺住民151人が原告となって2003年に起こした建設・操業差止めの裁判(佐賀地裁)ではAMESA(ダイオキシン連続モニター)をつけることで和解となりましたが、関連してメーカーの出費も嵩んだようです。

 当然のながらこの技術は住友金属工業だけのもので、石原慎太郎東京都知事じゃないけれど「余人をもって代え難し」ですから、同社が撤退するということはどこにも引き受け手がないということになります。いわゆる瑕疵担保(5年)は2009年に切れますからその時点で「ハイさょうなら」では組合のいうとおり「無責任」としかいいようがありません。

 4年も前、サーモセレクトを委託運転していたドイツカールスルーエの業者が「採算が取れない」を理由に撤退した事件がありました。その時は、まさか日本で、という思いがあったのですが、そのまさかが起きたのです。
 考えてみれば「儲かると思ったらアテが外れた」というのは住友金属工業だけの問題ではなく、どのメーカーもダイオキシン特需が生んだ過当競争の波に呑み込まれ、ダンピング競争のとがめもあって環境プラント部門はどこも「赤字企業」に転落しています。この調子では第二、第三の住友金属が出ないという保証はありません。

 そのため全国の自治体でいま普及を見ようとしているのが「運転」委託ではなく「長期包括運営委託」です。これは自治体・メーカー双方にメリットのあるシステムということで一気に広がる気配ですが、双方によい、ということは双方共倒れの可能性も秘めているのです。長くなりましたが、この問題は改めて検討したいと思います。

10/2付け佐賀新聞「 鳥栖三養基広域ごみ処理施設から住金が撤退意向-シャフト炉型ガス化溶融炉」


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