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国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

民主圧勝ムードの危険

2009年08月17日 | その他
麻生が史上空前の40日選挙を宣言したあと、各週刊誌は軒並み「民主圧勝」の情勢分析を載せている。いわく「これは革命だ。自民は小選挙区でほぼ全滅!」(週刊現代)「300選挙区炎上ス」(週刊新潮)といった具合である。その勢いに釣られたものか、新聞各紙も「民主優勢」の論調にやや傾きつつある。また時事通信が8月7日から10日の間に行なった世論調査では自民への投票18・8%に対し、民主は35・9%と大差を示した。だが心配されるのはそのアナウンス効果だ。もともとアナウンス効果なるものの定義は二つある。

①優勢側にさらに票が集まる「勝ち犬効果(バンドワゴン効果)」
②劣勢側に同情票が集まる「負け犬効果(アンダードッグ効果)」
 
タブロイド夕刊紙(日刊ゲンダイなど)も含めた「自民惨敗」の打ち上げ花火は、時代の閉塞感に日々鬱々としているサラリーマンの溜飲を下げているのだが、同時に劣勢側の自民党にはアンダードッグ効果(同情票)をもたらす危険性がある。では前回の総選挙で何が起きていたのか。
 2005年の郵政選挙で、マスコミ各社による世論調査はほとんど「自民圧勝」という予測になっていた。すなわち
 ◆自民・公明で241の過半数を超える勢い
 ◆民主は都市部で苦戦
 ◆社民党、共産党、さらに悲惨

 特に読売の記事で 「民主党が強みを見せてきた都市部で伸び悩んでいる」との分析がズバリと当った。小泉のキャラクターや刺客作戦も手伝ってバンドワゴン効果が100%どころか200%も効いたということだ。
 今回もスンナリと民主党に「勝ち犬効果」をもたらすのだろうか。必ずしもそうはいかない懸念材料がいくつもある。

◆負け犬への同情票
 まず8月、お盆を挟んでの選挙というのは107年ぶりだという。まともな政権党なら絶対にやらない禁じ手だ。理由はとにかく暑いことと、ご先祖様を迎えるお盆に街頭演説なんてヤボなことやってられるかという、一種の美意識でもある。
 しかし今度ばかりは「私、麻生が判断します」とイキがったバカが大事なところで決断できず、逃げて逃げて逃げ回ったあげく、スッポリ嵌り込んだのが「任期切れ寸前」の袋小路だった。
 それにしても史上最長、40日の選挙期間はないだろう。こうなると麻生の狙いはズバリ民主党への兵糧攻めではないのか。現に民主党の若手からはすでに資金枯渇を訴える声が相次いでいる。ちなみに政治献金の集まり具合を較べてみれば一目瞭然。自民党の224億円に対し民主党はようやく40億円(総務省調べ)だ。
 8月はまた魔の月でもある。すでに震度5から6クラスの地震が3度も起き、ゲリラ豪雨で多数の痛ましい犠牲者を出した。東名高速道路の脆さで手抜き工事の声もあがっている始末である。
 田中康夫に乗り込まれた尼崎の冬柴鉄三は早速豪雨被害をネタに「川が溢れて昨日のようなこと(兵庫県佐用町の河川氾濫)が起こったらダム建設を止めた政治家は直ちに退場してもらう」と喚いていた。
 さらに追い討ちをかけるように新型インフルエンザが活発化し始め、舛添の出番が再びやってきた。
 こうなると8月30日の投票日までに何が起きても不思議はない。昔から二百十日を目前に大型台風が集中する季節であり、ひょっとして投票日当日に巨大台風が襲来する可能性だってある。そうなると浮動票が減って自公が浮かび上がる、という計算もどこかでしているのかも知れない。
 かつて渡辺喜美(みんなの党)の親父・渡辺美智雄は必勝の秘訣として「火事は最初の5分間、選挙は最後の5分間」といった。自民党の地元後援会を甘く見てはならない。
 さらに麻生は聞かれてもいないのに「北朝鮮の核脅威」をあのダミ声で連日吠えまくっている。自然災害や身近な国際紛争が起きれば、大衆は政権政党に頼らざるを得ないとタカを括っているのだ。
 しかも民主圧勝のアナウンス効果が裏目に出て、支持政党なしの浮動票が「家で寝てしまう」危険だってある。まだまだ政権交代を阻みたい勢力はゴマンといるのだ。その筆頭がマニフェスト詐欺師・北川正恭である。

◆21世紀臨調のいかがわしさ
2009年8月9日、経済同友会や連合、全国知事会など9団体が自民党と民主党のマニフェストを採点つきで評価し、その結果を公表した。
 この日の集会タイトルはエラそうに「政権公約検証大会」。主催団体は「新しい日本をつくる国民会議=21世紀臨調」という耳慣れない集団だが、その代表に納まっているのが北川正恭である。しかも21世紀臨調を構成する団体がいかがわしい。たとえば「チーム・ポリシーウオッチ」とはどんな団体かというと竹中平蔵など小泉ブレーンの集まりであり、「言論NPO」を検索してみるとこれも北川の息がかかっている集団であった。
北川は昨年(08年)初め、東国原知事らと政治集団「せんたく」を発足させている。「日本を洗濯いたしたく候」の坂本竜馬を気取ったのであろう。だが思ったほどの効果をあげられず、出番はなかった。そこで今回は財界や労働界まで巻き込む一大イベントを打ち上げたのである(北川正恭の過去の行状については本ブログの7月11日「東国原英夫の背後に~」を参照してほしい)。

◆跋扈する御用学者や文化人ども
 朝、毎、読など大新聞は一斉に1面を使い、9日の検証大会の模様をデカデカと書きまくった。いわく、「自民、民主の公約に厳しい目」「民主を辛口に批判」等など。
 政権交代を極度にいやがるマスコミにとって、 一見公平を装う民間の言論機関の動きは自らの中立性を立証する格好のアリバイづくりとなる。
さらに8月12日、北川は性懲りもなく麻生と鳩山の党首会談を設定した。これにもマスコミはスポーツ新聞まで加わり1面で「財源巡り激論」(毎日)「衆院選 掘り下げ不足の討論会」(中日新聞)「あら探しばかり…党首討論」(スポーツ報知)などと揶揄半分の報道ばかり。テレビでも「鳩ポッポ追い込まれまくる」とか「両方に問題あり」(報道ステーション)などのテロップが盛んに流れていた。国民は見出しコピーで予断を抱く。これでは自民もダメだが民主もダメという一種のシラケを誘う効果が生まれた。その分自公にとっては有利な展開となる。
 あるタブロイド紙がいうとおり、「大マスコミを筆頭にこの国には政権交代をジャマしたくて仕方がない連中」が本当に多い。戦後60年余、自民党が積み上げてきた既得権益路線はそのおこぼれに預かった連中にはまたとない快適な褥(しとね)なのである。
 時の政権(半永久的な自民党政権)に一定の注文を出しながら、政策の根幹には逆らわず、社会的にもそれなりの評価を受けることで地位を保っている輩、それを御用学者、もしくは体制型文化人という。
しかし政権が変ったらどうするのか。むろん立ち回りの上手さでは定評のある連中だからハンドルの切替えも早いだろう。

◆マニフェスト詐欺師
ここで確認すべきは今回の総選挙で最大の争点は何か、ということだ。 何党のマニフェストがよくできているかの品評会じゃない。我々が長いこと待ち望んだ政権交替が実現できるかどうかなのだ。その意味で残念なのは民主党が高速道路無料化だとか子育て支援などで自民党と張り合う数字を羅列していることである。
 それみたことかと麻生も細田もマスコミもバラマキだ、財源をどうする、できもしない公約を並べただけに過ぎない、とカサにかかって攻撃している。
 それではかつての自民党や自公政権が公約をまじめに守ったことがあるのか。小泉が「公約の一つや二つ守らなくても大したことじゃない」とうそぶいた時、自公勢力はゲラゲラ笑って拍手し、あとは数を頼んで国民の期待とは逆の政策を強行したのである。その後、麻生政権のやった衆院再議決は目に余るものがある。
 この4年間で増えたものは若い人や中高年の自殺者の数(年間10万人)であり、生活保護世帯ではないか。先進国でこんな国はない。
 それでもマニフェストが大事というなら自公がやってきたことの総括こそ真っ先にやるべきだ。それを抜きにして美辞麗句を並べ立てた自民党のマニフェストは戦後60年余にわたる悪政を覆い隠すカムフラージュであり、汚物隠しに過ぎない。
 8月18日の毎日朝刊は「責任か、変革か」との大見出しを打った。17日に行われたプレスセンターでの党首討論会の印象報道である。
 麻生も口をひん曲げて「責任力」を吠えまくっていた。ただ彼の唱える責任は「これから」であって自民党がとるべきは「いままで」の責任だろう。
 そんないい加減な自民党の公約を民主党のマニフェストと同列に並べ、得体の知れない集団が重箱の隅を突くような採点ゲームを展開したのが「政権公約検証大会」などのパフォーマンスである。それをエラそうにコーディネートした北川正恭の所業はせっかく高まってきた政権交代の流れを堰き止める犯罪行為といわねばならない。

 

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