循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

原発デジャブ――ボーイング787事故との相似性(上)

2013年05月21日 | ハイテク技術
 テレビに出たがるのかテレビが出したがるのか、それはよくわからないが、つくづく橋下という男は[弁護士=三百代言]というこの国の伝統を忠実に守っている希有な人物だ。
 この男の常とう手段はとりあえず三つある。①論理の巧みなスリ替え、②他人への責任転嫁、そして③異なる話題への巧みな誘導である。これは今回のテーマだけに限らず、大阪市長に就任した際の異常とも言える市労連攻撃や人権侵害スレスレの刺青者炙り出し事件などで遺憾なく発揮された。どこかの権力迎合メディアが、「将来、首相になられるかも知れない橋下さんともあろう方が~」などとヨイショしていたが、こんな男が未来の日本を背負って立つリーダーだなんて、月並みだが背筋が寒くなる。
 さすが心情的には橋下に同調している多数の政治家どもも、一蓮托生になってはわが身が危ないと必死に逃げ回っている。実に浅はかな現代日本の原風景がここにもある。

 *三百代言=「いいかげんな弁護士、弁舌さわやかに詭弁をもてあそぶ人」(三省堂:新明快国語辞典)。むろん知り合いの弁護士にはそんな人物はひとりもいない。そういえば昔、オウム真理教の幹部に上祐史浩という男がいて、「ああいえば上祐」などと揶揄されたものだ。
そしていま、相変わらず「人命より儲け」が産業界の至るところに横行している。そのひとつがボーイング787型機の早期就航騒ぎだ。

◆子ども騙しに近い改修報告
 先月(4月)19日、アメリカ連邦航空局(FAA)はバッテリーの相次ぐ発火事故で運航停止を命令していたボーイング787型機(以下B787型機)の運航再開を認める最終指示を出した。就航停止命令を解除するというのである。
 本年(2013年)1月以降、相次いで発覚したB787型機トラブルの原因究明には少なくとも1年以上かかるといわれていたのに、FAAは「対症療法」ともいうべきボーイング社(以下ボ社)の改善方針をあっさり認めてしまったのである。原因究明はまだ何も終っていないというのに――。
 最初のころ、リチウムイオンバッテリーが引き起こす事故は「1,000万回の飛行時間に1度あるかないかのレベル」とボ社は広言していた。それが5万フライトにも満たないうちに3回も発火事故を起こしたのである。そのボ社が提示した「改善」内容は以下のようなものであった。
 バッテリー内部に(相互干渉をしないよう)隔壁を設ける、バッテリーそのものを頑丈な格納容器に閉じ込める、発火した場合、機外に煙を吐き出させる。つまりこれまでと同じ事故が起きても「火を封じ込める」対策をとったというのである。まさにこれは「原発を守る5つの擁壁」発想ではないか。
 むろん対策内容はかなり細かくつくられている。たとえば「電池ひとつひとつに強度のテープを巻きつける」「電池と電池の間には高熱に強い不燃板をはめ込み、電池のひとつひとつがショートしたり高温になっても(隔壁によって)隣接する電池に影響が及ばないようにした」「配管(排気パイプ)を最大限延ばし、機体の外へ煙を逃がすための孔を設ける」等などである。
 そうした申し出でと改修後の出来栄えをみるため、3月以降、アメリカの監督官庁が相次いで試験飛行を行った。

◆正月早々事故のツキはじめ
 ここで本年1月以降どんな事故が起きていたのか、もう一度振り返ってみよう。まず本
年1月11日午前10時45分ごろ、羽田発松山行き全日空585便が兵庫県上空を飛行中、操縦席左側の窓ガラスにひびが入った。同便は安全上問題はないとして飛行を続け、松山空港に着陸。乗員乗客246人にけがはなかった。ただしB787型を使う折り返し便の松山発羽田行き590便は欠航となった。
 同じ11日、宮崎空港での潤滑油漏れ。アメリカボストン国際空港では日航のB787型機が1月7日から2日連続でバッテリーからの出火や燃料漏れのトラブルに見舞われ、アメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)が調査に入った。
 さらに1月17日、山口の宇部空港発羽田行きの全日空B787型機の機体から煙が出るという異常事態が起きて高松空港に緊急着陸を余儀なくされた(冒頭の写真)。
 後日、全日空は前日の1月16日、電気室内のメーンバッテリーを納める金属製容器が変色し、電解液が漏れていたと発表した。安手の電化製品じゃあるまいし、航空機からそう簡単に潤滑油などが漏れるものなのか。 みごと炭になったバッテリー
◆なぜリチウムイオン電池に固執?
 アメリカ監督官庁(連邦航空局=FAA)による試験飛行はかなりズサンなものだったらしい。十分な過酷条件下ではなかったこと、当局が試験の中身や実施を業者任せにしていたことなどが後日、明るみに出た。
ことは電池が発火したから電池が悪いという単純な話ではなく、その制御ユニットや組立工程などに問題が潜んでいた可能性もあるため、前述のとおり、原因調査は長期化が想定されていた。だが4月に入るや、鳥が慌ただしく飛び立つように試験飛行が行われたのである。航空会社の「営業開始」にFAAが全面協力したというべきなのか。
 再三問題となったリチウムイオンバッテリーは予備電源という位置づけだった。通常、旅客機の電源はジェットエンジンが回ることで発電が行われ、システムが停止した場合に予備としてリチウムイオン電池のバッテリーが使われる。ボ社は「バックアップのバックアップ」と解説し、それが常時使われることはないといい張った。また別のボ社幹部は「バッテリーにクギを刺し、クギを通して電極から電気を流したところ発火はなかった」と証言したが、そんな原始的なテストで大丈夫といわれても、誰が納得するのか。それよりもなぜリチウムイオン電池だったのか。

◆リチウムイオン電池の致命的欠陥 
二次電池とは充電できる電池のことである。かつて主流だった鉛蓄電池、ニッカド電池などに対し、1980年代に開発された画期的な製品がリチウムイオン電池だった。
 この電池はエネルギー密度が高く、高い電圧が得られるため、ノートパソコンや携帯電話などのバッテリーに多用されている。メモリー効果(放電しきらずに充電すると充電容量が減ってしまう現象)がほとんど無く、長く使わずにいると少しずつ放電してしまう自己放電も他の電池より少ない(放電率は通常、1ヶ月で5%程度)。500回以上の充放電に耐え、長期間使用することができ、高速充電が可能といった利点もある。
ただし、致命的欠陥もあった。まず満充電状態で保存すると急激に劣化し、充電容量が大幅に減ってしまう。また、極端な過充電や過放電により電極が不安定になり激しく発熱、破裂、発火する危険性がある。ロイター通信の報ずるところによれば「世界の航空安全当局は過去に民生用電子機器に搭載されたリチウム電池が貨物輸送機の中で発火する事故が何度も起き、死者も出す火災を起こしていた」とある。
 首都大学東京の金村聖志教授がいう。「(リチウムイオン)電池の中の電解質は有機物であり、有機物は燃える」。
 これら一連の事故を防ぐため、リチウムイオン電池は(単三電池のように)単体では販売されず、電圧などを厳密に管理する制御回路と過充放電を防ぐ保護機構を組み込んだバッテリー部品としてのみ販売されてきた。にもかかわらず、日本ではこの3月、企業としては致命的な事故が起きている。

◆全日空・日航の実損
 すなわち次世代型と目されていた三菱自動車の「アウトランダーPHEV」に搭載されていたリチウムイオン電池が発熱し、バッテリーの一部が溶けてしまったのである(2013年3月29日付毎日新聞朝刊)。
 アウトランダーはリコール隠しで経営が悪化した同社が2005年、再建の切り札として発売したエース車種であった。それまでのスポーツ車タイプに代わり、本年1月PHVタイプが実用車として市場に姿を現した。走行距離は897キロに及んだというが、毎日の記事は非情なまでに次のような大見出しをつけている。「三菱PHV電池過熱、生産・出荷を停止、『充電しないで』(2013年3月28日付)」。
繰り返しになるが、なぜボ社は電池を串刺しにしてまでB787型機の就航再開を急がなければならなかったのか。理由はいくつもある。まずボ社として最大の顧客である、全日空、日航の要請を無視できなかったことである。
 たとえば今年1月の発火事故で運航停止を食らった全日空は運賃収入にして約14億円の損失を被った。同社は2012年までに現有17機のB787型機を66機に増やす方針で「787は今後30年間、会社を支えるエース」と位置付けていた。だが1月の事故とそれに伴う就航停止によって3月期は国内、国際線で計681便が欠航を余儀なくされた。
 一方、日航の損失(運賃収入減)は5月までの累計額が34億円に達したという。昨年度の売り上げが1兆2,300億円だから、全日空ともども「実損」こそ軽微であったが、問題は今後の経営方針であった。そして事態が長引けばボ社に対し損害賠償請求も視野に入れていたのである。
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